世界で伝わるPRをどうつくる?
―「7C」で読み解くグローバルPR―

clock 2026.08.31
世界で伝わるPRをどうつくる?―「7C」で読み解くグローバルPR―

前回の記事では、グローバルPRの基本となる3C(Cost、Culture、Calendar)をご紹介しました(前回の記事はこちら)。

しかし、実際にグローバルPRを進めていく上では、3Cに加えてさらに押さえておきたい視点があります。実践の現場ではどのような壁に直面し、何を基準に海外向けの広報活動を推し進めればよいのでしょうか。

今回は前回に引き続きZ世代社員が、グローバルPRに長年携わってきた電通PRコンサルティングのベテランPRパーソンにインタビュー。実践の中から生まれた応用フレームワークを紹介します。

 

Interviewer Profile

 

 

 

 

 

 


神田七海 電通PRコンサルティング グローバルビジネス部所属

米国での留学・就業経験を持つ。ニューヨークの日本政府系機関での勤務を経て、2025年に電通PRコンサルティングへ入社。インアウト/アウトイン双方のグローバルPR案件を担当し、Z世代の視点と海外での経験を生かしながら国内外のコミュニケーション支援に取り組んでいる。
Outside of Work
最近ハマっていること:編み物 。“Grandma Hobbies”(おばあちゃんみたいな趣味)のトレンドにあやかり始めましたが、見事にハマり時間が溶けていきます。
好きなポッドキャスト:On Purposeはウェルネスを学ぶため、dodo on airはセンスを吸収できるように聞いています。

 

Interviewee Profile

 

 

 

 

 

 


阿部達典 電通PRコンサルティング グローバルビジネス部 プランニング・ディレクター

戦略コンサルティングでの経験を生かし、グローバル広報領域を中心に従事。デジタルコミュニケーションやクライシスマネジメント領域もカバーし、日本企業の海外進出支援をテーマに活動している。
Outside of Work
最近ハマっていること:濃いめのドリップコーヒーをいろいろな飲み物で割り、おいしい組み合わせを見つけ出すこと。地味に「モンスター バッドアップル」を組み合わせるとめちゃくちゃ暑い日にキンキンに冷えたコーヒー飲料が生み出せることに気付く。
好きなポッドキャスト:ポッドキャストは積極的に使ってないんだけど、YouTubeの怪談朗読チャンネルをポッドキャスト代わりに聞き続けることは多い。オドロオドロシイ音楽や効果音と相まって、意外と集中力を上げられるってのは、誰も信じてくれない。

目次

  1. 1.はじめに
  2. 2.④ Context(文脈)
  3. 3.⑤ Content(発信内容)
  4. 4.⑥ Consistency(一貫性)
  5. 5.⑦ Confidence(自信)
  6. 6.さいごに

はじめに

神田:前回教えていただいた「グローバルPRにおける3C」は、グローバルPRの基本を理解する上で、とても分かりやすいフレームワークでした。

より実践的な視点として重要になる応用フレームワーク「グローバルPRの7C」が存在するとお伺いしたのですが、今回はそちらを教えてください!

阿部:グローバルPRのフレームワークには、実は全部で7つのCがあります。前回紹介した3C(Cost、Culture、Calendar)がグローバルPRの土台だとすると、これからお話しする残りの4Cは、その上で広報の成果を生み出すための実践的・応用的な視点です(前回の記事はこちら

これらは、それぞれが独立した要素でありながら、互いに密接に関係しています。実際にグローバルPRに携わる機会がまだなくても、こうした考え方を知識として頭の片隅に置いておくだけで、グローバルPRに対する見方は大きく変わってくるはずです。一つずつ解説していきますね。

 

④ Context(文脈)

まずはContextです。グローバルPRにおけるContextとは、商品やサービスの情報を、社会や業界、生活者を取り巻く課題や変化と結びつけ、「なぜ今、この情報を伝える意味があるのか」を示すことです。

例えば、「新商品を発売した」「おいしさを追求した」「手頃な価格を実現した」といった商品情報だけでは、海外のメディアやステークホルダーに、そのニュースの重要性が十分に伝わらないことがあります。そこで、その商品や取り組みが生まれた背景や社会の変化、その中で自社が果たそうとしている役割まで含めて発信することが重要です。

Contextを生かした手法の一つに、「ソートリーダーシップ」があります。企業や経営者が専門的な知見や独自の視点を発信し、業界や社会に新たな議論や方向性を提示する取り組みです。自社の商品を直接アピールするだけでなく、社会や業界が向き合うべきテーマについて見解を示すことで、その領域における信頼や存在感を高めていきます。

商品の機能や価格、原材料といった具体的な情報ももちろん重要ですが、グローバルPRでは、「なぜこの商品を提供するのか」「なぜ今、この取り組みが必要なのか」といった背景まで伝えることが求められます。商品やサービスを、その背景にある課題や企業の意思とともに伝える。それが、Contextを重視する理由です。

 

⑤ Content(発信内容)

次はContentです。これに関しては、とにかく「分かりやすさ」が重要だと考えています。

現在、企業の情報発信は、文章と写真を中心としたニュースリリースだけにとどまりません。短尺動画やリール、カルーセル投稿などを活用し、要点を簡潔かつ視覚的に伝えるケースも増えています。情報があふれる中、受け手が短時間で理解できるよう、メッセージや表現方法を工夫することが求められています。

グローバルPRで特に分かりやすさが重要になる理由の一つが、情報の受け手が持つ言語的・文化的背景の多様性です。日本は比較的均質な文化や言語環境を持ち、識字率も世界トップクラスです。そのため、ある程度複雑な説明であっても理解してもらいやすい土壌があります。一方、海外に目を向けると状況は大きく異なります。例えばアメリカは多民族・多文化社会であり、英語とスペイン語を使い分ける人も少なくありません。同じ国の中でも、生まれ育った環境や文化的背景、教育水準、価値観はさまざまです。そのような多様な人々を一つのターゲットとして捉え、全員に刺さるメッセージを作ることは決して簡単ではありません。

だからこそ、まず重要になるのが、異なる背景を持つ人にも理解しやすい、シンプルで明確なコンテンツです。地域や第一言語、前提知識にかかわらず、要点を直感的に捉えられるようにすることで、情報はより広く社会に浸透していきます。

グローバルPRでは、「どれだけ多くを伝えるか」ではなく、「どれだけ分かりやすく伝えるか」が成否を左右します。複雑な情報を誰もが理解できる形に変換すること。それこそが、良いコンテンツの条件です。

 

⑥ Consistency(一貫性)

6つ目のCはConsistency、一貫性です。

これまで数多くの日本企業の海外広報を支援してきましたが、発信の軸を長期にわたって維持できている企業は、決して多くありません。新しい取り組みを始めても、短期間で期待した成果が得られないと、テーマや方針を変えたり、発信そのものをやめたりするケースも見られます。

しかし、企業やブランドへの認知や信頼は、一度の発信で生まれるものではありません。「この企業は何を大切にし、どのような課題に取り組んでいるのか」を継続的かつ一貫して伝えることで、市場やステークホルダーの理解が少しずつ深まっていきます。だからこそ、私がよくお伝えしているのが、「始めたら簡単にはやめないこと」です。

もちろん、同じ内容や手法を繰り返せばよいわけではありません。テーマや価値観の軸は保ちながら、相手の反応や環境の変化に応じて、表現や切り口、発信方法を改善していく。変えるべきものと、変えてはいけないものを見極めることも、一貫性の一部です。これは企業だけでなく、経営者や専門家など個人の発信にも当てはまります。海外の経営者や専門家には、これまでのキャリアや行動、発信内容が一つの軸でつながり、「なぜこの人がこのテーマを語るのか」が明確なケースが多くあります。その積み重ねが、その分野について語る説得力や信頼につながります。

グローバルPRにおけるConsistencyとは、単に発信を続けることではありません。変化に対応しながらも、自らの軸をぶらさず、言葉と行動を積み重ねていくこと。その一貫性が、企業や人への信頼を支える重要な資産になります。

 

⑦ Confidence(自信)

最後のCはConfidence、自信です。海外市場で競合企業と渡り合い、自社の存在感を高めていく上では、実は最も重要な要素かもしれません。

日本のビジネス文化では、謙虚さや協調性が重視される傾向があります。そのため、企業が自らの実績や強みを過度にアピールすることを控え、「できること」よりも「まだ改善すべきこと」に目を向けるケースも少なくありません。

一方、欧米やアジアなど海外のビジネス環境では、自社の専門性や意見を自信を持って力強く発信することが期待される場面が多くあります。会議や商談、メディア取材などでは、「自分たちはどのような視点で、どのような価値を提供できるのか」を明確に示すことが、信頼獲得の第一歩となります。

現在の日本では、「失われた30年」といった言葉に象徴されるように、経済停滞を背景としたネガティブな自己評価が広がっているように感じます。しかし、海外でビジネスをすると、その認識とのギャップに驚かされることがあります。

海外の方々は、日本に対して私たち自身が思っている以上に高い関心とリスペクトを持っています。「日本という素晴らしい国を体験したい」と考える人は多く、私たちが当たり前だと思っている文化や安全性、社会の安定性は、世界から見れば非常に価値が高く、かつ稀有(けう)なものなのです。

もちろん、グローバル市場で勝ち抜くためには、学ぶべきことや変えるべきことも数多くあります。しかし、日本にはもともと世界で評価されるだけの魅力と競争力があることも事実です。その価値を正しく伝えることができれば、日本企業には大きな可能性があると感じています。

長年にわたり日本企業をグローバル市場へ紹介してきた中で、私が強く感じているのは、「知られることによって化ける企業が、まだまだ日本には眠っている」ということです。

日本には優れた製品やサービス、技術を持つ企業が数多く存在します。しかし、どれほど良いものを持っていても、その価値が知られなければ選ばれる機会は生まれません。

良いものをつくることに加え、その魅力を適切に伝え、「知ってもらう」ことができれば、日本企業のグローバル市場における成長余地はまだまだ大きいと信じています。

私たちもその可能性を信じ、日々グローバルPRを通じて企業の挑戦を支援しています。日本企業が持つ本来の力が世界で正しく評価され、そのポテンシャルが最大限に発揮される瞬間を、皆さまと共に創り出せることを楽しみにしています。

 

さいごに

神田:ありがとうございます。これが7Cの全貌ですね……。

一つ一つはすごくシンプルな考え方なのに、実際の施策に落とし込もうとすると、これが意外と難しいですよね。

ただ、今回のお話にあった「自信を持つこと」の大切さは、私自身、アメリカで働いていたときの経験からもすごく共感しました。日本企業には、私たち自身がまだ気付いていない強みもたくさんあるのかもしれません。

そうした強みを引き出し、実際の施策に落とし込んでいくことが私たちの役割であり、一流のPRパーソンに求められることだと思うので、私もいち早くそうなれるように頑張ります!

 

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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