新卒採用は「量から質」へ。その「質」、定義できていますか?人事×広報による採用ブランディングの再設計

clock 2026.07.13
新卒採用は「量から質」へ。その「質」、定義できていますか?人事×広報による採用ブランディングの再設計

新卒採用を取り巻く環境が大きく変化する中、企業にはこれまでのように「一定数を採用する」ことを前提とした採用活動からの転換が求められています。

採用難の常態化やAI活用の進展により、重要になるのは人数の確保ではなく、自社で価値を発揮できる人材と出会い、選ばれ、活躍につなげることです。

そのためには、「質の高い人材」とは何かを定義し、採用プロセスや学生との接点、企業としての発信を一貫して設計する必要があります。

今回は、電通PRコンサルティングでコーポレート・ブランディング・ユニットを統括する石井裕太が、人的資本経営における重要課題のひとつでもある「新卒採用」を取り巻く構造変化と、企業が「量から質」の採用へ転換するための「採用ブランディング」の考え方をご紹介します。

目次

  1. 1.はじめに
  2. 2.「量から質へ」――新卒採用の構造転換
  3. 3.採用の質を高める3つの方向性
    1. 3.1.①「見極める場」から「意思決定を支援する場」へ
    2. 3.2.②「どんな人を採るか」を明確にする
    3. 3.3.③「関係をつくる」採用へ
  4. 4.なぜ今、「人事×広報」の連携が必要なのか
  5. 5.採用は「経営テーマ」である

 

はじめに

新卒社員の配属が一段落し、多くの企業が次年度以降の採用戦略を見直す時期を迎えています。採用難が常態化する中で、従来のように「人数を確保すること」を目的とした採用活動は限界を迎えつつあります。日本企業で長らく前提とされてきた「一括採用・一括入社・一括育成」という雇用モデルは今、大きな転換点に差しかかっています。

背景にあるのは、人口減少による若年層の縮小とAI活用の進展です。従来通りの採用人数を確保すること自体が難しくなっているだけでなく、仮に人数を維持できたとしても、人材のスキルや志向のばらつきが、現場や組織運営のリスクになりつつあります。さらに、AI活用が進むことで、「人を増やして業務を回す」という従来型のオペレーションも成立しにくくなっています。限られた人材で成果を最大化する時代において、「どのような人材を採用するか」は、人事だけでなく経営そのものに関わるテーマになっています。

2026年4月に発表された「企業の新卒採用実態調査2026」(リクルートマネジメントソリューションズほか)によると、現在の正社員採用では「新卒採用が多い」企業が38.3%で最多ですが、5年後の見通しでは25.8%まで減少すると予測されています。一方で、約4分の3が「新卒採用を続けることは会社の発展にとって重要」と回答しており、新卒採用の意義そのものは引き続き重視されています。

 

勤務先の正社員採用に関して、直近1年間と約5年後の比較

 

新卒採用に関する個人の考え

「企業の新卒採用実態調査2026」
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ・株式会社日経ビジネス(株式会社日経BP)
対象:779人/期間:2026年2月/調査手法:インターネット調査
URL:https://www.recruit-ms.co.jp/news/pressrelease/1900731297/

では、この環境の中で、企業は新卒採用をどのように再設計すべきなのでしょうか。

 

「量から質へ」――新卒採用の構造転換

これまでの新卒採用は、「一定数を採用し、入社後に育成する」ことを前提に設計されてきました。しかし今後は、「量」ではなく「質」を重視する方向へシフトしていくと考えられます。

ここで考えたいのは、「質が高い人材」とは何か、という点です。学歴やスキルといった分かりやすい指標だけで「質」を捉えてしまうと、採用と活躍はつながりません。問うべきは、「優秀かどうか」ではなく、「自社で価値を発揮できるかどうか」です。

例えば、

・価値観や判断基準が、自社の行動指針と合っているか
・どのような状況で成果を出してきたか
・変化や課題に対して、どう行動してきたか
・他者とどう関係を築き、成果につなげてきたか

こうした観点で人材を捉える必要があります。また、この「質」は選考の場だけで見極め切れるものではありません。採用前後の関係性や体験を通じて育まれる側面もあります。つまり、採用は単に「選ぶプロセス」ではなく、「関係をつくるプロセス」へと変わりつつあるのです。

 

採用の質を高める3つの方向性

こうした変化の中で、企業の採用活動には大きく3つの方向性が見られます。

①「見極める場」から「意思決定を支援する場」へ

従来は、入社後にエンゲージメントを高める設計が主流でした。しかし今は、採用活動の前段階から、いかに自社との関係性を築けるかが重要になっています。

・就職活動前から認知や理解を促進する
・インターンシップやイベントで接点を持つ
・対話を通じて相互理解を深める
・選考を通じて納得感のある意思決定を支援する

企業が管理しているのは「選考の進捗」ですが、学生が進めているのは「意思決定の進捗」です。このズレを埋められなければ、採用はうまくいきません。

 

②「どんな人を採るか」を明確にする

質の時代には、「誰でも一定数を採用する」のではなく、事前に「どのような人材が自社で価値を発揮するのか」を定義しておく必要があります。

・求める人材像を明確にする
・評価基準をそろえる
・選考プロセスに落とし込む
・配属や育成まで一貫して設計する

実際には、面接官ごとに見るポイントが違う、選考段階で評価基準がずれる、配属後に求める行動とつながっていない、といった課題も少なくありません。問題は人物像がないことではなく、運用できるレベルまで整理されていないことです。

 

③「関係をつくる」採用へ

これからは、継続的に選ばれ続ける状態をつくることが重要です。そのためには、採用ブランディングの視点が欠かせません。

・自社の価値やカルチャーを定義する
・求める人材に合わせて情報設計を行う
・接点ごとに体験を設計する
・成果を基に改善を続ける

採用ブランディングは、単によく見せることではありません。誰に選ばれる会社になるのかを定めることです。全ての学生に選ばれる必要はなく、自社に合う相手に選ばれる状態をつくることが、採用の質を高めます。

 

なぜ今、「人事×広報」の連携が必要なのか

ここまで見てきたように、これからの採用では、

・どんな人を採るのか
・どう見極めるのか
・どう関係をつくるのか
・どう意思決定を支援するのか

を一体で設計する必要があります。

しかし実際には、「社内の実態」と「社外への発信」が分断されている企業も少なくありません。人事は現場や組織の実態をよく知っている一方で、うまく伝え切れない。広報は伝える力がある一方で、実態に根差した発信になりにくい。こうしたズレが、採用の質を下げる要因になります。

だからこそ、人事と広報が連携し、

・求める人材像を共につくる
・誰に何を届けるかを設計する
・発信、接点、体験を一貫させる
・検証と改善を続ける

ことが重要になります。

採用ブランディングとは、この分断をなくし、「実態」と「発信」を一致させる取り組みです。採用を単発の施策ではなく、企業の魅力や考え方を中長期で伝えていく活動として捉えることが、結果として質の高い出会いにつながります。

 

採用は「経営テーマ」である

これからの時代において、採用は単なる人員確保ではなく、企業の競争優位を左右する経営テーマです。限られた人材の中から、自社にとって価値のある人材と出会い、その人材が活躍し続ける状態をつくれるかどうかが、企業の成長力に直結します。

そのために、まず問い直したいのは、

・その「質」は定義されているか
・社内で共通認識になっているか
・選考プロセスに落とし込めているか
・学生の意思決定を支援する設計になっているか

という点です。

採用は、やり方の問題ではありません。前提の問題です。その前提を問い直すことから、採用は変わり始めます。

 

<監修>
谷出 正直氏(採用コンサルタント)
https://business.nikkei.com/atcl/author/19/061800333/


電通PRコンサルティングでは、採用広報やインターナルコミュニケーションの視点から、企業と人材のより良い出会いと定着を支援します。まずはお気軽にご相談ください。

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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統合コミュニケーション局コーポレートコミュニケーション部シニア・チーフ・コンサルタント

石井 裕太

2001年新卒入社。以来、企業・行政・大学・非営利組織など、1,000以上のクライアントと多様なステークホルダーとの関係づくりに従事。現在は「コーポレート・ブランディング・ユニット」を統括し、社会的&経済的インパクトの両立を目指すブランディング戦略領域全般に携わる。企業や自治体向けの研修講師のほか、ワークショップの開発やファシリテーションなども。公共政策修士。

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