時代は「ショート動画」全盛期。今やエンタメにとどまらず、企業などのPR手法の一つとしても定着しつつあるショート動画。若年層を中心とした広いリーチ、エンゲージメントの高さなど、コミュニケーションにおいても存在感を増しています。
ただし、他の多くのコンテンツと「可処分時間」を奪い合う今、少しでも興味がないと思われた瞬間、冒頭数秒、早ければ1秒未満でスキップされてしまう。それがショート動画の難しさでもあります。
そこで大事なのが、そもそも動画に関心を持ってもらい、最後まで見たくなるための「ソーシャルエクスペリエンス」(ソーシャルメディアの情報で心が動く)設計です。
特にショート動画では、冒頭で視聴者の「結末を確かめたい」感情を引き出す「入り口スイッチ」がカギとなります。
今回は、企業の公式SNSアカウントやインフルエンサータイアップで活用されるショート動画において、視聴者が見たくなるスイッチをどうつくるか?を考察していきます。
流れてきたショート動画、見るつもりじゃなかったのに結末が気になってついつい最後まで見てしまった…みなさんも、そんな経験ありませんか?「ついつい最後まで」をつくるには、ショート動画の冒頭で、どんなスイッチを押すといいのでしょうか?今回は、3タイプの「入り口スイッチ」について、それぞれ具体例を用いながら解説します。
1つ目は、「ナゾスイッチ」です。視聴者が「え?どういうこと?」と思わず反応してしまう、ハテナを冒頭に持ってくるアプローチです。
ここでいうナゾとは、全く分からないものではなく、「分かりそうで分からない」絶妙なラインのもの。つい気になって続きを見たくなるような、言葉や構図、シーンを入れるのがポイントです。
「ナゾスイッチ」のショート動画としては、例えば商品紹介なら「何が新しいの?」、イベントなら「どこで体験できるの?」といった行動を引き出すきっかけにもなります。
冒頭で「分かりそうで分からない」言葉や映像を置き、思わず「どういうこと?」とツッコミたくなるような演出。絶妙なラインであるのがポイントです。

例:アパレルメーカーが通常は合わせて着ないであろう冬物と夏物のインナーウェアを組み合わせた、一見違和感のある着こなしをあるシーンで快適に過ごす「裏ワザ」として紹介
「○○すぎる」といった程度を強調する表現や、「史上初!?」「見たことない!」「超朗報!」といった極端な言葉を使うことで、「どのくらいなの?」という興味を引き出します。
例:「●●さんの回答がやさしすぎた」というテロップを表示させて、回答を紹介。
異色のコラボや異例の起用をフックに、「なぜこの人を起用?」「どういう理由なの?」と思わせる意外性をつくり、確かめたい気持ちを引き出します。コラボや起用には、その背景や理由に関心が集まりやすく、企業などが深く情報を伝えるのにも有効です。結果として、新たなファンの獲得やブランド理解の促進にもつなげることができます。
例:スポーツブランドの動画にゲーム業界の著名なインフルエンサーが登場し、「どうして?」というナゾをつくる。
2つ目は「期待スイッチ」です。これは、視聴者に「この動画の先には、何か気持ちのいい体験が待っていそう」と感じてもらうアプローチです。
冒頭で、どんな読後感が得られそうかを提示します。「感動する話」「意外な結末」など、具体的に示すことで、結末を確かめたい感情を生み出します。さらに動画の結末で共感や驚きがあれば、ポジティブなコメントにつながりやすくなります。
うれしい瞬間やスゴ技、名言、アドバイスが来ることを予告することで、「この動画を見ることで気持ちよさが味わえるかも?」という動画視聴をする意味や期待感を生み出します。

例:「うれしい瞬間」というテロップと開封前のテイクアウトしたフライドチキンの袋を登場させて「もしかしたら袋をきれいに開ける動画かもしれない」と瞬時に予想を促し、おのおのにある気持ちよさの記憶を刺激する。
制作の過程を見せる動画。最初は完成系が予想できない、本当に完成するのか不安などと思わせて、最終的にクオリティの高いものに仕上げる流れにする。
例:精緻な商品を組み立てていく様子を動画に。
テロップやナレーションで「本気を出す」宣言をすることで期待を醸成し、その道のプロがスキルや知識を最大限に活かして、圧倒的なワザを見せつけるアプローチです。普段は見えないプロの本気度を示すことで驚きにつながり、企業努力や働く人の技能への信頼にもつながるコンテンツになります。
例:砂浜で砂遊びをしていると思いきや、みるみるうちに商品を模したクオリティーの高いサンドアートが完成する。
3つ目は「発見スイッチ」です。視聴者が「これ、自分に関係ありそう」と感じたときに入るスイッチで、自分ゴト化されることで、結末を確かめたくなる気持ちを引き出します。
例えば、「自分だったらどうする?」「これ便利かも?」と思うような問いや実用的な情報があることで、「知りたい。知っておきたい。」と思っていただければ、最後まで見てもらえる確率が高まります。実用性のある情報なので、このスイッチは特に、誰に・何を伝えるかが明確なときに有効です。
投票やランキング、推し紹介など、「人によって答えが分かれる」系の動画に向くアプローチです。自分の考えと合っているかどうか、他の人はどう思っているかを確かめたくなる気持ちになります。

例:コーヒーチェーン店の人気商品をコメント欄で集計したものを、ランキング化して発表
突然質問されると、人は反射的に考えてしまうもの。冒頭のテロップやナレーションで急に問いかけられると、「自分ならどう答える?」「これって知ってるかも?」という感情が湧き、確かめたくなる気持ちが動きます。
これは、自分と他の人の答えや考えが同じでも違っていても、どちらでも楽しめるのがポイント。「自分は○○派」など、推しや好みを発言しやすい構成にできると、コメント欄が盛り上がりやすく、”コメント欄がコンテンツになる”ような広がりも期待できます。
また、企業やブランドが知っている裏ワザやマニアックな情報を伝える動画でも効果的です。「知ってる?」「そんな使い方あるんだ!」といった発見や学びにつながります。
例:飲食店の厨房で使われている器具を見せて「これ何か知ってる人いる?」と紹介。
例:パン屋さんで選べるパンの種類を「推しパンはありますか?」と問いかける。
「これは自分にとって役立つに違いない」と思ってもらうことも、確かめたい感情を引き出す方法です。冒頭で、どんな悩みを持つ人に向けて、どんなメリットがあるのかを明確に伝えることがカギになります。実用性の高い商品や、商品のまだ知られていない意外な使い方を発信したいときと相性がいいといえます。
例:収納器具の動画を熱心に推し活をしている人向けに絞り、大量の推しグッズを収納する方法を伝える。※推し活に本気な自社社員が実演していたことも有益情報の説得力を上げるポイント
今回は、ショート動画の冒頭で視聴者を引きつける3つのスイッチ「ナゾ」「期待」「発見」と、それぞれの具体的な演出方法をご紹介しました。
どのようなスイッチを選ぶかは、伝えたい情報の内容や目的を基準に考えてみましょう。同じ「ナゾ」でも、同じ「発見」でも、伝えたいメッセージによって最適な演出は変わってきます。また、最適な演出を考えた結果、複数のスイッチを兼ね備える場合もあるかもしれません。
そして、何より大切なのは、冒頭で押したスイッチに沿った展開を、最後まで丁寧に届けること。「気になる」「面白そう」「役に立ちそう」と感じてもらったなら、その期待を裏切らない内容であることが欠かせません。
さらに、終盤でもう一段階、感情を動かす「出口スイッチ」を設計できると、動画全体の印象がより強くなります。「熱くならずにはいられない」「驚かずにはいられない」といった“ポジバズ”な感情を引き出すためにも、「入り口スイッチ×出口スイッチ」の二段構成が理想です。
どのように「確かめたくなる」気持ちを引き出すのか? 伝えたい情報との相性を見極めながら、今回ご紹介した「入り口スイッチ」をヒントに情報を設計いただけたらうれしいです。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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