平成から令和へと時代が変わり、2019年も残りわずか。

世界的ビッグイベントが開催される2020年を目前に控えた2019年は、数々の新たな潮流が生まれています。

電通PRのアンテナ力とリサーチ力を駆使し、独自の視点から

「電通PRが選ぶ 2019 TREND REPORT」を作成、今回は第3弾、「新しい暮らしのカタチ」編です。

このトレンドレポートが、新しい時代を読み解く手掛かりとなれば幸いです。


 

はじめに

一生活者の中に内包される異なる価値観とライフスタイル

0円ビジネスと呼ばれるフリーミアムから定額制、シェアリングエコノミーなど、消費形態の変化が激しい。書籍や音楽、ビデオなどのエンターテインメントコンテンツにとどまらず、その領域は「衣食住」にまで及ぶ。

個人所有を望まないというミニマライズな生活嗜好(しこう)があると思いきや、高級トースターが売れるなど、一生モノ、一品モノといった昔 ながらの価値観が併存していたりもする。モノに対しては差別化を求めないが、情報に対してはパーソナライズ化の欲求が高いなども異なる価値観の併存といえるかもしれない。

このような一人格の中に相反する嗜好を併せ持つ生活者は増えており、個々人でさえ既成イメージでターゲット設定ができない時代となっている。マス(=大衆)の動きを感じてから動くのではすでに遅く、ソーシャルメディアなどに出現する個々の生活者の行動や感情を注視しながら、次の一手を打ち出すことが求められている。個々の生活者を丹念に観察し併走していくことでこそ、未来のターゲットの輪郭が明確になってくるのだろう。

井口 理 TADASHI INOKUCHI
執行役員

 


TREND REPORT

 

コーヒーから、メイクに家電、住宅まで。 サブスクバブル、到来

数年前から新しいビジネスモデルとして注目されてきた「サブスクリプション」。

サブスクリプションビジネスは、音楽や映像配信の定額制から浸透し始め、コーヒーやラーメンといった飲食に広がり、そしてクルマの乗り放題まで登場した。

今後注目を浴びそうなのが、データを活用して個に合わせるパーソナライズ型のサブスクモデル。IoTを活用し、日々の肌に合わせてスキンケアを提供するサービスも現れた。

今後サブスクビジネスでは、“既存商品の提案”から、蓄積された顧客データを分析し、“あなたのためだけにつくられた、パーソナライズの提案”を行うビジネスモデルが注目を集めるだろう。

サブスクビジネスのモデルは、今後ビッグデータを活用し、個人の健康状態や学習能力に合わせた提案力があるものが注目される。また、ユーザー自身が知らなかったような出会いを生む付加価値性のあるビジネスモデルも登場するだろう。

 


 

高くても欲しくなる! ハイコスト・ハイクオリティーな暮らし

ソーシャルメディアなどによって個人のニーズや多様な価値観の吸い上げが可能になり、スモールマスに向けた市場が拡大している。
活況を帯びているのは、限られた時間、貴重な時間の中でプレミアムな体験を感じられる富裕層狙いの中高価格帯の商品やサービス。自分だけの究極トーストが作れるトースターや、1台60万円する通勤にも使え、オフロードもOKな高性能電動自転車が注目を集めた。

より多くの人に情報を届ける時代から、パイは限られていても、確実にニーズがあり、動く層へリーチする、そんなマーケティングアプローチが広がっている。

時間体験消費の象徴ともいえるホテルや旅館。東京2020大会を迎える2020年、インバウンド需要を狙い、数多くの高級ホテル・旅館がオープンする。リッチな時間を過ごすことができる場は、2020年、その先も増えていくと予測される。

 


 

“しないこと”が美徳の時代へ  〇〇しない家事

共働き家庭は年々増加傾向にあり、家事の時短を求める人が増えている。

2019年は、家事に革新的時短をもたらす商品が登場した。その特徴のひとつが「しないこと」。
スポンジを使わずに洗える食器用洗剤や浴室・浴槽用洗剤などが話題を集め、売れ行きも好調。衣類の洗濯も、高価格帯のドラム式洗濯機だけでなく、縦型洗濯機にも洗剤の自動投入機能が備わるようになった。

働き方の多様化によって、今後も働く女性が増えるとされるなか、ベビーシッターやハウスクリーニングの市場も活況を呈している。

女性も男性も家事を頑張らなくていい、ますます「しない家事」が求められる。

スポンジなどで手を汚さずにきれいにできる食器用洗剤や浴室用洗剤が登場

経済産業省によると、家事代行市場は今後約6,000億円まで成長するともいわれている


EXPERT INSIGHTS

家事は、タスクから娯楽へ

 

たむらようこ|YOKO TAMURA

放送作家/ベイビー・プラネット 代表取締役

 

テレビ番組では頻繁に家事を扱う。視聴者のボリューム層と家事を中心的に担う層がキレイに合致しているから当然で、家電を扱う企画でも家事を助ける商品の人気が高い傾向にある。例えば最新式のお掃除ロボット「ルンバ」は自動で掃除をしてくれるばかりか掃除機内にたまったゴミまで自分でまとめてくれる。人間がやることといえば3カ月に1度、ゴミのたまったパックを捨てるだけだ。音声で指示できるのでスイッチすら入れる必要がない。まさに○○しない家事だ。

テレビ番組での家事の描き方は、いつも「主婦は家事が嫌い」「ラクしたい」という前提に立っているが、果たして本当にそうなのだろうか? 以前、私はサザエさんで「タラちゃんお手伝い」という話を書いたことがある。自分の息子がタラちゃんと同じ3歳だった頃、やたらお手伝いをしたがってありがたいけど迷惑だった体験がベースになっている。小さな子どもは家事が好きで、ままごと遊びでも家事をまねている。忙しくなってしまった大人は家事を嫌うが、人間にとって本来、家事は楽しみなのではないか。

人は「いい暮らし」をするためにお金を稼いできた。しかしAIとロボットが仕事をしてくれる近い将来、お金で「いい暮らし」は買えなくなるかもしれない。家事の担い手がロボットに移った時、何もしなくてよくなった私たちにとって家事は、自分の思う「いい暮らし」を実現する、究極の娯楽になるのではないか。


 

 電通PRが選ぶ 2019 TREND REPORT 編集チーム
細田 知美 TOMOMI HOSODA
ビジネス開発局

柏木 政彦 MASAHIKO KASHIWAGI
情報流通デザイン局

渡邊 悠紀 YUKI WATANABE
情報流通デザイン局

小倉 真由子 MAYUKO OGURA
情報流通デザイン局

中沢 麻衣 MAI NAKAZAWA
情報流通デザイン局

 


レポートをPDFでご覧になりたい方はこちら