文化シヤッター株式会社 「浅草絵巻」
clock 1991.07.14
文化シヤッター株式会社 「浅草絵巻」
受賞歴
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実施内容

店舗には開店前と閉店後の防犯のため重いシャッターが必要であるが、これらのシャッターは非常に単調で視覚的魅力に欠ける。
文化シヤッターは電通PRと共同で、店舗シャッターを視覚的に面白味のあるものにし、地域の魅力を増大させるような企画を生み出した。
浅草の仲見世通りのシャッターに浅草の観光資源を題材とする絵巻を描き、シャッターの魅力を伝えた。

戦略ポイント

●浅草という国内外を通じて観光名所として知られた場所を選定

●地元の東京芸大とのコラボとし、世界的に有名な平山郁夫教授に監修を依頼した

 

浅草絵巻 安立屋  浅草絵巻 浅草の仲見世通り

背景

東京に本社のある文化シヤッター株式会社は、シャッター、ドア、パーティションなど多岐にわたる建材および住宅用資材の製造を行っている。創立は1951年で、日本の建設業界から高い評価を受けている。

 

店舗には開店前と閉店後の防犯のため重いシャッターが必要であるが、これらのシャッターは非常に単調で視覚的魅力に欠ける場合が多い。
文化シヤッター(株)は(株)電通パブリックリレーションズと共同で、店舗シャッターを視覚的に面白味のあるものにし、
地域の魅力を増大させるような企画を生み出した。

 

◆この企画の目的は次の3点にある。

・シャッターの見栄えを向上させる。

・地域の芸術と文化を表現するフレームワークを提供する。

・地域の記念行事を広報し、地域活動を発表する機会を得る。

 

この野心的な企画の理論的根拠となったものは、銀座、渋谷、新宿など東京西部の後発地域に譲った浅草地域のかつての名声を取り戻したいという熱意であった。

立案

プロジェクトの実施地域として浅草が選定された。
この地区は国内外を通じて観光名所として知られており、威圧的な雷門や仲見世通り沿いの店舗などが観光客の目を引いている。

 

地域社会の芸術と文化を振興するという目的の1つをかなえるため、浅草地域と仲見世商店街にふさわしい主題が選定された。
絵巻に描写された光景は、江戸時代から続く祭、市、風習および慣習などといった、
この地域に共通する伝統に反映された地域特性を表現したものである。

 

本プロジェクトには東京芸術大学も加わり、シャッター絵画の芸術性と文化的価値を高めた。
大学は浅草近郊の上野に位置しており、本大学の参加は、地域の再活性化と文化振興に役立った。

 

該当地域の2つの記念行事も、本企画の理念の遂行にまたとない機会を与えることとなった。
仲見世商店街は100周年を迎え、1988年は浅草寺本堂落慶30周年を祝う年であった。

企画は、現地の商店街組合、シャッター会社および大学の3者の関係を通じて順調に進行した。
本プロジェクトのスピーディーな成功は、この3者の共同努力に負うものである。

実施

実際の浅草絵巻プロジェクトは次の項目から構成されている。

場所と規模。シャッターの高さは約2.3メートル。仲見世商店街に沿って360メートルの長さで続いている。
4枚の絵巻によって東京浅草地区の伝統文化を表現する。

各絵巻の主題は浅草の季節行事と、長い伝統に裏付けられた特徴的な光景である。

 

◆絵巻の4つの主題は、
-「三社祭」。これは東京の主要な祭の1つである。三社とは夏の前触れの事。
-「ほおずき市」。夏の行事で、浅草寺境内に市が並ぶ。
-「浮世絵」。江戸時代の庶民の生活を表現した風俗画。
-「金龍と白鷺の舞」。浅草寺に伝わる優雅な舞。

 

絵巻の実際の製作と監修は、東京芸術大学の16人の大学院生が手掛けた。福井爽人教授率いるグループを、「シルクロード」の連作により世界的に有名な平山郁夫教授が監修した。平山教授は現在東京芸術大学の学長を務めている。4枚の絵巻のそれぞれの長さは約10メートルで、伝統的な江戸時代の文化を表すにふさわしい微妙な色調を用いて、日本画の様式で描かれた。

文化シヤッター(株)は、絵巻の最終デザインをシャッターに転写する責を担った。これは、新技術の「マーキング・フィルム」方式を用いて絵をシャッターに転写することによって達成された。日本画の微妙な色調を64色に分析したのち、絵は10倍に引き伸ばされ、80ミクロンの薄さの塩化ビニール・シートに転写され、シャッターに装着された。

 

プロジェクトの完成には1年余りを要したが、作業の各段階で、メディアに対し進捗状況の広報が充分に行われた。新聞雑誌および放送メディアの反応は継続的で熱心なものであり、浅草絵巻の完成が発表された際は、努力を讃える祝賀ムードに溢れたものであった。

シャッター上に描かれているため、店舗が閉店する午後8時を待たないと絵巻を見ることができない。さらに、360mと長いため、1地点からすべての絵巻を見るのは無理である。これらの不都合を埋め合わせるため、記念土産品が多数製作された。これらには、浅草絵巻カレンダー、絵巻をセットにした絵葉書や額入りの絵巻などが含まれていた。

評価

最大の目標は、地域を再活性化し人気を高めることにあった。この目標は、この想像性に富む企画によって疑問の余地なく達成された。夜の時間帯にもかかわらず、日本人のみならず海外からの観光客も絵巻を見に仲見世商店街に押し寄せた。このシャッターは、浅草地全体に及ぶ広範囲な再活性化につながる新たな観光ブームに火を付けることになったのである。

 

シャッターが与えた文化的な影響も見逃すことができない。平山教授は、「街路そのものがアート・ギャラリーに転じた。このようなスペースの活用法は画期的である。このプロジェクトに参加できたことを本当に喜んでいる」と述べている。

 

メディアは本プロジェクトを次のように締めくくった。「素晴らしい環境が創造された。これは新しい時代の文化都市東京の指針となるだろう」
浅草絵巻プロジェクトは1989年商業環境デザイン・グランプリにおいて日本商業スペース・デザイナーズ協会から特別賞を授与された。

 

このプロジェクトは1991年に国際PR協会のゴールデン・ワールド・アワーズの「アート&カルチャー」部門で部門最優秀賞も受賞した。また、1993年に出版された『International Public Relations ― Case Studies』(出版: Kogan Page Limited/編集: Sam Black)にも収録されている。以下は同書の編集者故ブラック氏による評価である。

事例解説(サム・ブラック)

これは、熱心な勧誘に心を動かされて企画を支持することになった異分野・諸グループの支援によって実現が成功した、非常に想像性に富むアイデアの見事なプロジェクトである。この事例は、「アート&カルチャー」の事例として紹介したが、本書(『International Public Relations ― Case Studies』)の「コミュニティー・リレーションズ」のセクションで紹介してもよかっただろう。というのは、プロジェクトの成功裡の完遂が間違いなく地域共同体の利益に大きく寄与した例になっているからである。

 

味気ないシャッターをおろした閉店後の店舗が並ぶ街路から、色彩と芸術美に輝く街路への変化は目を見張るほどで、これは日本が世界に誇るべきコンセプトである。同類の例としては、建設業者が大規模な建築現場の周囲に壁板をめぐらせて不便を謝罪し、いくらかの広告を組み込むようになった最近の英国の慣習がある。壁板に特殊な窓を設置して、通行人が作業の進展状況を見物できるようにすることも、かなりのメリットがあるPR手段である。

 

現場を通る人々の好意を得るこのような単純ではあるが効果的な手段も、しかし、街路をアート・ギャラリーに変えるという本例題の見事なイニシアチブと比較すると、霞んでしまう。薄いビニール・シートに絵の微妙な色調を再現するという素晴らしい技術的効果がなければ、このプロジェクトは陽の目を見なかっただろう。

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