なぜ企業の謝罪会見は複数回に及ぶのか ――6つの事例から読み解く、危機管理広報の失敗と再建の分岐点

clock 2026.06.15
なぜ企業の謝罪会見は複数回に及ぶのか ――6つの事例から読み解く、危機管理広報の失敗と再建の分岐点

企業不祥事が発生した際、社会との最初の接点となるのが記者会見です。本来、会見は一度で十分な説明責任を果たし、信頼回復への第一歩とするべきものです。

しかし近年、「やり直し会見」とも言える複数回の会見に発展するケースが目立っています。

なぜ企業は、同じテーマで繰り返し説明の場を設けることになるのでしょうか。そして、その分岐点はどこにあるのでしょうか。

本稿では、複数回会見に至った企業事例を基に、危機管理広報の観点からその構造を整理し、実務における重要な示唆を導きます。

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目次[非表示]

  1. 1.「複数回会見」は失敗なのか
  2. 2.ケーススタディ
    1. 2.1.Case1:A社(外部圧力型)
    2. 2.2.Case2:B社(外部圧力型)
    3. 2.3.Case3:C社(事態推移型)
    4. 2.4.Case4:D社(事態推移型)
    5. 2.5.Case5:E社(監督官庁要請型)
    6. 2.6.Case6:F社(監督官庁要請型)
  3. 3.複数回会見を招く「3つの失敗」
    1. 3.1.1.「企業目線」での事態認識
    2. 3.2.2.会見の目的設計が曖昧
    3. 3.3.3.将来展開の見通し不足
  4. 4.危機管理広報における「見落とされがちな論点」
  5. 5.では、どうすればよいのか
  6. 6.最後に―備えとしての危機管理広報

「複数回会見」は失敗なのか

まず押さえておきたいのは、会見が複数回にわたること自体は必ずしも悪ではないという点です。むしろ、事態の進展に応じて情報をアップデートすることは、透明性の観点からは望ましい行為でもあります。

問題となるのは、「最初の会見が信頼を損なう内容になってしまった結果、再度の説明を余儀なくされるケース」です。

様々な事例を分析した結果、複数回会見に至る背景は大きく3つに分類できます。

• 外部からの批判や圧力によるもの
• 事態の進展に伴う追加説明の必要性
• 監督官庁・規制当局の関与によるもの

以下では、それぞれの典型パターンを具体的な事例として見ていきます。

 

ケーススタディ

Case1:A社(外部圧力型)

長年にわたり多数の従業員が関与した不正が発覚。初回会見では、組織的関与を否定し、第三者委員会による調査も行わない方針を示したが、説明の不十分さや記者に対する取材制限が批判を招いた。結果として、信頼回復に至らず、追加の会見で第三者委員会の設置や補償方針を表明することとなった。初動における説明姿勢と運営の不備が、事実上の「やり直し会見」を招いた典型例である。

Case2:B社(外部圧力型)

人権問題に関する疑惑を巡り、初回会見では取材を受け入れる媒体や撮影を制限する閉鎖的な形式を採用。説明内容も限定的であったため、スポンサー離れや社会的批判が急速に拡大した。その後、経営トップの辞任や第三者委員会による調査の実施を含む大規模な再会見を実施。会見形式そのものが信頼毀損(きそん)の要因となり、企業姿勢への疑念を増幅させた。

Case3:C社(事態推移型)

グループ全体での不正会計が発覚し、初回会見では損失や現状説明にとどまり、責任の所在は調査中とした。その後、市場や規制当局からの圧力を受け、改善計画の公表、さらに第三者委員会による調査の結果を踏まえた経営責任の明確化へと段階的に対応。事態の進展に応じて会見が重ねられたが、初期段階での説明不足が後続対応の負荷を高めた。

Case4:D社(事態推移型)

製品による健康被害が発生し、初回会見では自主回収を発表したが、原因や被害実態の把握が不十分なままの説明にとどまった。その後、被害拡大や情報開示の遅れに対する批判が強まり、複数回の会見を実施。最終的には経営陣の辞任や事業撤退に至った。初動の情報開示の遅れと不確実な説明が、長期的な信頼毀損を招いた。

Case5:E社(監督官庁要請型)

大規模システム障害により社会インフラに影響が発生。初回会見では原因が特定できず、「調査中」とする説明にとどまった。その後、監督官庁の要請により詳細な調査報告が求められ、関係企業を含めた共同会見を実施。複数のステークホルダーが関与する中で、説明責任の範囲が拡大したケースである。

Case6:F社(監督官庁要請型)

取引先の不正問題に対する関与が問われ、初回会見では一部経営陣の辞任が発表されたが、持株会社の責任には踏み込まなかった。その後、規制当局からの行政処分を受け、グループ全体の経営責任を問う再会見を実施。監督官庁の判断が、説明の再構築とトップ交代を促した事例である。

 

複数回会見を招く「3つの失敗」

これらの事例から浮かび上がるのは、共通する3つの失敗です。

1.「企業目線」での事態認識

企業内部の論理で「ここまで説明すれば十分」と判断してしまうと、社会との認識ギャップが生まれます。特に人権や消費者被害に関わる事案では、このズレが深刻な結果を招く要因となります。

2.会見の目的設計が曖昧

誰に、何を、どのレベルまで説明するのか。この設計が曖昧なまま会見を実施すると、後から「説明不足」が露呈します。

3.将来展開の見通し不足

「この後どのような批判が起こり得るか」「どの情報が追加で求められるか」を想定できていないと、対応が後手に回り、それが連鎖します。

 

危機管理広報における「見落とされがちな論点」

ここで強調しておきたいのは、危機管理広報において企業が見落としがちな論点は「情報そのもの」ではなく、「情報の受け取られ方」であるという点です。多くの企業は、「事実関係は正しく説明している」と考えます。しかし実際には、

・説明の順番
・誰が語るか
・どのタイミングで出すか

といった要素によって、同じ内容でも評価は大きく変わります。

例えば、調査が完了していない段階で責任について曖昧な説明を行えば、「逃げている」と受け取られます。逆に、十分な情報がそろっていなくても、現時点での認識と今後の対応方針を明確に示すことで、「誠実な対応」と評価されることもあります。

つまり、危機管理広報は単なる情報発信ではなく、「信頼をマネジメントする行為」です。

そのためには、広報部門だけでなく、経営層・法務・リスク管理などが一体となり、社会からどう見られるかという視点で意思決定を行う必要があります。この体制が整っているかどうかが、会見の成否、ひいては企業価値に直結します。

 

では、どうすればよいのか

危機管理広報において重要なのは、「一度で完璧に説明すること」ではありません。重要なのは、説明の設計と更新の設計を同時に行うことです。

具体的には以下の3点が鍵となります。

• 社会的インパクトを基準にした論点整理
• 会見のゴール設定(何を理解してもらえれば成功か)
• 今後のシナリオを踏まえた情報開示計画

これらを事前に設計することで、不要な「やり直し会見」を防ぎ、結果として企業のレピュテーションを守ることにつながります。同じ不祥事でも、初動の広報対応によって企業の評価は大きく分かれます。信頼を回復できる企業と、長期的なダメージを負う企業。その差が生じるのは、決して偶然ではありません。
そしてその分岐点は、多くの場合「最初の会見の前」に存在しています。

 

最後に―備えとしての危機管理広報

危機は予測できなくても、対応は準備できます。むしろ、準備している企業だけが、危機をコントロールできます。

電通PRコンサルティングでは、実際の会見事例分析やシミュレーションを基に、企業ごとのリスクに応じた危機管理広報支援を行っています。

• 会見設計のアドバイザリー
• 想定問答の構築
• メディア対応トレーニング
• 危機シナリオの策定

など、幅広い業務でサポートが可能です。

「もし自社で同様の事案が起きたらどうなるか」、そう感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。
また、より具体的な対応手法については、当社の危機管理広報サービス資料でも詳しくご紹介しています。資料をダウンロードしてご覧ください。

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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