当社では「電通PRコンサルティングの全社員にとって働きがいがあり成長できる職場をつくること」を目指し、2021年より社内横断で「DEIプロジェクト」を立ち上げました。制度改革チーム、研修チーム、定点観測チーム、コミュニケーションチーム、アクティベーションチームの5つのチームを中心に、さまざまな活動に取り組み、推進しています。

DEIプロジェクトのアクティベーションチームでは、チームリーダーで日経xwoman(クロスウーマン)アンバサダー/ NewsPicksのプロピッカーも務める細田知美を中心に、お昼時間にカフェでトークしているかのようにDEIのあれこれについて話す「DEIカフェ」を2024年よりスタート。

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【DEIイベント開催レポート】「NewsPicks for WE」編集長 川口あいさんに聞く、自分らしく生きる、働くとは?

プライド月間に当たる6月は、元なでしこリーグの女子サッカー選手で、ポップなジェンダリストとしてご活躍中の3人組グループ「ミュータントウェーブ。」のみなさんをスペシャルゲストにお招きしました。「ジェンダートランジションの際、うれしかった言葉」「活動を通じて実現したい社会」「日本のプライド月間について思うこと」などをテーマにトークを展開。明るくフランクなお人柄で、終始笑顔あふれる楽しい雰囲気に包まれました。

 

ライバルがチームに。「ミュータントウェーブ。」結成ストーリー

――「ミュータントウェーブ。」のご紹介と、それぞれ活動を始めた経緯をお聞かせください。

大嶋悠生さん(以下、おおちゃん):「ミュータントウェーブ。」(以下、ミュータントウェーブ)は、世界中の全ての人たちが、自分を愛せる世界を実現していくことを目指し、メディアや、企業・自治体の研修、イベント登壇などを通じて主にジェンダーや多様性について発信しています。
アスリート、トランスジェンダー男性と、さまざまな世界を見てきました。そこで感じた気付きや視点を世の中に発信することで、新しい気付きのきっかけを創出していきたいと感じ、2021年からグループとしての活動を始めました。

 

おおちゃんはグループのリーダー的存在

サッカー選手引退後、性的マイノリティを理由 に就職の内定が取り消しになるなど、LGBTQ+への風当たりを実体験し、日本と世界の違いを知るためオーストラリアに留学。帰国後LGBTQ+を支援する企業への就職を経て、自分なりのアプローチで日本中に笑顔の人を増やしたいと考えるようになったのがミュータントウェーブ発足のきっかけです。

 

 

まささんはクリエイティブ担当。「書」を生かしたアーティストとしても活動中

大川政美さん(以下、まさ):サッカー引退後は塗装関係など現場関連の仕事を転々としていました。カミングアウトせずに生きていましたが、おおちゃんと再会し、自分が表に出ることで誰か役に立てるのなら面白そうと感じ一緒に活動することを決めました。

 

 

メンタルトレーナーの顔を持つあさひさん

山本朝陽さん(以下、あさひ):引退後は大学でサッカーのコーチをしていました。練習ではできるのに、本番で実力発揮できない選手を客観的に見て不思議に感じ、興味を抱いたのがメンタル。コーチをしながらメンタルトレーニングの勉強を始めました。3人で会うのが2度目の時に、ミュータントウェーブが結成されました。

 

――引退してからの道のりは異なるのに、こうして3人一緒に活動されることになったのは奇跡ですね!

おおちゃん:まさとあさひは幼なじみ。まさとはなでしこリーグでチームメイト。あさひとは中学・高校とライバルチームで試合をする関係。それがまた集まったという…。ライバルがチームになりました!

 

ジェンダートランジション時に感じた、家族や友人からの温かい反応

――ジェンダートランジションされる際、家族からの反応で嬉しかったことは?

おおちゃん:カミングアウトした際、両親は否定も肯定もしなかったのですが、手術した時に送り迎えをしてくれたのがお父さん。お互い言葉に表さなくても、サポートという形で受け止めてくれたので安心できました。

まさ:手術の日、心配した親が病院まで付き添ってくれました。こちらは恥ずかしいのですが、親の愛情が伝わってきました。

あさひ:姉に手術の話をした際に、反対意見をもらいました。生き方を否定するというよりは元気な体を痛めつけてしまうことについて心配だったようで。気にかけて声をかけてくれたことがうれしかったです。

 

――ご家族以外の反応、カミングアウトしていない人たちからの反応はどうでしたか?

おおちゃん:手術後翌日に同窓会に行ったのですが(笑) 久しぶりに友人に会った時、ビックリというより手術してよかったね!という感じですんなり受け入れられました。

まさ:友人たちに恵まれていて、マイナスな反応は一切なかったですね。

あさひ:女子サッカーの友達が多かったというのも大きいかな。「メンズ」という言葉が存在するくらい、自分のありたい性でいることができた環境。女性を好きになっても、恋愛の話も普通にできて、その上で手術をする・しないの選択ができました。

おおちゃん:あえてカミングアウトの必要はなかったよね。この3人もお互いカミングアウトしていなくて。久しぶりに再会した時はそれぞれ声が低く変わっていて、「(ホルモンの)注射はどこで受けてる?」と自然に話したくらい(笑)。

 

 

活動で意識していること、そこで感じた大人と子どもとの違い

――ミュータントウェーブさんは、どんな世界を目指して、どのような活動をされていますか?

おおちゃん:学校の特別授業(保育園から大学まで)や自治体研修など、北から南まで全国を巡っています。アートを用いながら、グラフィックデザインで多様性を表現することや、最近は空間づくりの提案なども企業と組んで行っています。

これらの活動を通じて自分たちが大切にしていることは、誰かの何かというよりは、「自分を愛せると思える世界に変えていく」こと、LGBTQ+だけを訴求するだけではなく「楽しみながら人との違いに気付いてもらう」こと。これらを意識して活動しています。

あさひ:研修を通じて、子どもと大人の違いははっきり出るよね。

おおちゃん:だいぶ違いますね。大人からは過去のことや一番つらかったことを質問されがちですが、子どもからは今幸せですか、これからどうしていきますかなど、未来志向の質問が多いです。世界と日本の違いを知りたがるのも子どもの方が多いかな。

まさ:子どもの方が、今を見ていると感じますね。

おおちゃん:自分が満たされていないと人に何か働きかけるのは難しい。だからこそ、ミュータントウェーブの研修では、まずは自分に目を向けて、自分の気持ちが満たされたり余白ができたりするような内省的な部分を意識した研修を実施しています。

 

世の中に存在する大切なことへ気付きを与え、変革の波を引き起こす!

――最後に、日本のプライド月間について感じたこと、今後の活動についてお聞かせください。

おおちゃん:企業の方々が一生懸命なのは伝わるのですが、イベントに出展することが目標になっているのでは?と感じることがあります。その空間に愛情があふれているかと言われると、そうではないのかなと…。スペインの友人が、先日「東京レインボープライド2024」へ遊びに行った時「ハッピーな感じが無い。お祭りのような雰囲気ではないんだね」と自分の国との違いに驚いていました。

あさひ:形だけだと継続が難しいと体感しました。誰のため?という部分が共感を生み出すのではないかと感じます。

まさ:自分が得意としているのは書。筆を持って文字を書くと気持ちの部分が表れるので面白いです。皆さんにもそういうことを体験してほしいので、今後の活動としては研修やイベントでも、書を通じた表現のプログラムを増やしていきたいです。

おおちゃん:ミュータントウェーブは、「突然変異する波」という意味。これからもさまざまな活動を通じ、知られずに終わってしまいかねない大切なことを、みんなが楽しみながら気付けるよう変換して発信し、世の中に波を起こしていきます!

 

――皆が個性を受け入れながら、自然に話せる良い時間を持てました。本日はありがとうございました。

 

専務執行役員の国田、ミュータントウェーブの3人とDEIプロジェクト アクティベーションチームの3人。

 

ミュータントウエーブ。

 

元なでしこリーグの女子サッカー選手で、現在は「男性」として生き「ポップなジェンダリスト」として活動するトランスジェンダー3人組。
世界中のすべての人が自分を愛せる世界の実現をVisionに掲げ、メディアやSNS 、企業、学校、自治体、多様なイベントなどを通じて、トランスジェンダーの当事者としてジェンダーや多様性について考えるきっかや、多様な世界を生きてきた新たな視点を活かしたコンテンツをPOPなスタイルで発信しています!