今回は、「カンヌライオンズ2022」PR部門のゴールド受賞から残りの四つのキャンペーンを紹介します。

VIENNA STRIPS ON ONLYFANS

クライアント:ウィーン観光局
エントリー会社/アイデアクリエーション、PR会社:JUNG von MATT DONAU(ウイーン)

動画提供:ViennaTouristBoard

 

画像提供: ViennaTouristBoard/Albertina Wien

ウィーン観光局が、ソーシャルメディアを通して市内の美術館が所蔵する芸術作品を紹介しようとしてきましたが、インスタグラムやフェイスブックのAI(人工知能)によるアルゴリズムがそれらの作品をポルノと判断して、削除したりアカウントをBANしてしまう、という話からスタート。AIが決めるルールに抗議するため、ポルノコンテンツの開放で知られる有料プラットフォーム「OnlyFans」にアカウントを開設して作品をアップし、そのことをリリースで配信しました。
芸術作品とポルノ(的)サイトの組み合わせと、アルゴリズムの在り方への問題提起が、国内だけではなく世界のメディアで話題になりました。私たちは価値判断をAIに委ねてよいのか、という普遍的な課題を投げかけたのです。優れたアイデア一つでお金をほとんどかけずに話題化に成功した事例です。

 

THE BVG HEMPTICKET –COME HOME, CALM DOWN.

ブランド(クライアント):ドイツ ベルリン市交通局(BVG)
エントリー会社/アイデアクリエーション、PR会社:JUNG Von MATT AG(ハンブルク)

動画提供:Berliner Verkehrsbetriebe (BVG)

 

画像提供:Berliner Verkehrsbetriebe (BVG)

ベルリンの公共交通機関であるBVGは、多忙なクリスマス期間のストレスを軽減し、買い物を終えて家に帰る顧客にリラックスしてもらうため、バイラル動画を使ったキャンペーンを行いました。とあるバスの運転手が、ストレスのたまったクリスマスの買い物客に向けて、リラックス効果があるとされるヘンプオイル(大麻成分を含んだ合法的なオイル)を含んだ食べられるチケットを開発して渡す、という内容です。BVGは実際にヘンプオイル入りの食べられる1日乗車券も期間限定で販売し、話題化に成功しました。

当時、ドイツでは大麻合法化の議論が活発化しており、その状況を踏まえたタイムリーな企画だったという点もポイントです。逆に背景を知らないとキャンペーンの文脈が分かりにくい面もあります。

#FLUTWEIN - OUR WORST VINTAGE

ブランド(クライアント):AHR – A WINEREGION NEEDS HELP FOR REBUILDING E.V.
エントリー会社/アイデアクリエーション、PR会社:SEVENONE ADFACTORY(ドイツ・ウンターフェーリング)

ドイツで最も有名な赤ワインの産地、アール川流域は2021年の夏に壊滅的な洪水被害を受けました。46以上あるワイナリーの被害も深刻で、経済的にもダメージを受けました。そこで生産者たちは奇跡的に出荷が可能な状態で発見された20万本のワインを、新しいワインコレクションとして発売。泥まみれのボトルの外装をそのままデザインに生かして、クラウドファンディング(CF)による販売を行ったところ、5万人近くが購入、440万ユーロの支援を獲得し、ドイツで最も成功したCFとなったといいます。
地元のワイナリーを助けるという参加者意識の構築と、被災した生産者が立ち直るための新しい手法として評価されました。本件では、ボトルをきれいにせず泥だらけのまま出荷することで価値をもたらすというアートワークが重要で、カンヌPR部門の審査委員長からは私のお気に入り、という発言がありました。

GENDER SWAP

ブランド(クライアント):WOMEN IN GAMES(WIG)
エントリー会社/アイデアクリエーション、PR会社:BETC(パリ)

ゲーム業界で働く女性たちの団体によるキャンペーンです。ゲームで描かれている女性キャラクターと男性キャラクターの動きを入れ替えることで、女性が不自然にセクシーな動きをしていることがひとめで分かるというものです。世界のゲーマーの半分は女性であるにもかかわらず、ゲーム業界で働く女性はわずか22%(2020年)とのことで、いかに男性目線で作られているかが理解できます。入れ替えるだけのインパクトが非常に強力で、見ると思わず笑ってしまいますが、その背景にある女性のステレオタイプ化による影響は深刻なはずです。この性別入れ替えゲームは女性プログラマーたちが作成、プレーヤーが実際にダウンロードし、遊ぶことができるようになっています。実況動画がトップストリーマーによってライブ配信され、一気に拡散したといいます。

「性別入れ替え」自体は独創的なアイデアではなく、今年の応募キャンペーンでも旧来の男女の役割を入れ替えたリメークCMなども見られましたが、本キャンペーンは表現のインパクトで頭一つ抜けていました。実際にWIGの「求人」ページへのアクセスは35倍以上になるなど高い効果を挙げたとのことです。

https://youtu.be/LSZ4sVZMdlM

※記事で使われている画像、動画は、キャンペーン受賞者から使用許諾をとっております。