本年11月、当社は「PRIDE指標」においてゴールドを受賞しました。受賞を記念して、12月11日、当社の有志グループLGBTQ+アライコミュニティが社員向けのトークイベントを開催しました。今回は私も登壇したそのイベントから、一部を紹介したいと思います。

 

PRIDE指標とは?

「PRIDE指標」は、日本の職場におけるLGBTQ+などのセクシュアル・マイノリティへの取り組みの評価の指標として、任意団体「work with PRIDE」が2016年に策定したものです。五つの評価指標――行動宣言、当事者コミュニティ、啓発活動、人事制度・プログラム、社会貢献・渉外活動――があり、各項目で1点ずつ取ると、5点満点でゴールドを受賞することができます。4点だとシルバー、3点でブロンズです。年々エントリーも受賞者も増えており、2023年は、ゴールドが326社、シルバーは56社、ブロンズは15社が受賞しています。
当社は2年連続してシルバーでしたが、最後のハードルとなっていた人事制度・プログラムをクリアしました。具体的には、社内規則の改正により、配偶者およびその家族に関わる各種支援制度を同性パートナーにも適用したことと、「採用面談におけるカミングアウトについて」と「LGBTQ+に関するインクルージョンのためのガイドライン」を作成し、社員の意識啓発を推進したことにより得点を獲得、ゴールド受賞となりました。

 

2年半にわたる取り組みの結果

記念イベントには、当社の管理部門でPRIDE指標に関わった人事労政部の衣川真理子さん、野城慎太郎さんが登壇。主に規則改正を行った衣川さんからは「規則改正に取り組んでから、さまざまなハードルを乗り越え改正するまで2年半ぐらいかかった。一つ一つの規則についてそれぞれの担当者と効果や影響を検証し、できること、できないことを洗い出した。関わった全員が同じ方向を向くことが重要だと感じた」という話がありました。また、採用担当の野城さんは「電通ジャパンで初めて採用面談でのカミングアウトへの具体的な対応ガイドラインを作成した。作るだけではなく、中身についてしっかりと説明することで、面談をする社員の意識醸成にも結び付いた」と語ってくれました。
また今後の課題について、衣川さんからは「社員向けのLGBTQ+研修も行っているが、社員によって温度差があり、関心の低い層をどう巻き込むかが課題」、野城さんからは「今の学生はLGBTQ+への関心がとても高い。当社がフレンドリーな会社であることはなんとなく面接等を通じて伝わっていると思うが、アライがあることやゴールドを受賞したことなどの事実をもっと伝えていきたい」という話がありました。

 

前進のためには可視化と制度化が重要

イベントには当社LGBTQ+アライコミュニティのアドバイザーである電通東日本の岡部鈴さんも登壇。トランスジェンダー当事者の立場から、企業での取り組みを前進させるためには可視化と制度化が重要なポイント、という指摘がありました。可視化とは、岡部さんのようなLGBTQ+当事者が声を上げて実際に姿を見せることで、周りの理解や共感が進むということ。制度化は、今回の規則改正のようにLGBTQ+の方々が働きやすいようにする制度を企業がきちんと整備すること。この両方が進むことで、多様性を認め合う組織が実現するというお話でした。さらに多様性を育む企業風土の醸成には、トップダウンとボトムアップの両方が必要で、トップの意志や判断も重要ではあるが、社員からの多様な個性を認め合う雰囲気づくりがとても大切だという話があり、参加者も大きくうなずいていました。

 

トークセッション(前半)写真

 

誰もが働きやすい風土づくりを目指して

トークセッションの後半は、LGBTQ+アライコミュニティの若手メンバーから秋山紗葉さんと中島瑞葵さんが登壇し、まずは自身がアライに参加した動機について紹介しました。
「学生時代に米国でインターンをしたときに、インターン先でLGBTQ+を推進していたことや身近に性的マイノリティーの友人がいたことから興味を持ち、周りの人と意見交換したり、知識のアップデートをしたいと思って参加した」(秋山さん)。「学生時代からLGBTQ+を含めてあらゆる人が自分らしく生き生きする社会の実現に思いがあったが、個人で考えているだけでは周りにインパクトを与えることは難しいと感じていた。入社してアライの存在や活動内容を知り、志を同じくする人たちとまずは会社の風土から変えられると意義を感じた」(中島さん)。
その後、中島さんから岡部さんに当社のアライについて良い点や課題があるか質問しました。岡部さんからは「アライが継続して、息切れすることなく活発にいろいろなテーマに取り組んでいることが素晴らしい。このまま続けていってほしいが、アライ以外の人たちにもじわじわとアライのことが伝わっていき、LGBTQ+を支援することは特別じゃない、ということが広まるのが望ましい」という回答がありました。
次に秋山さんから岡部さんに対して、「DEI推進には難しい点もあるが、一社員としてできるアクションにはどんなことがあるか」という質問がありました。岡部さんは、「知識を得た上で、自分なりの考えを持つことが重要。これが正解というものはなく、法律を含めて時代や環境によって基準も変わっているが、さまざまな課題に対して自分の意見を持ち、それを表明していくことも立派なアクションになる」と回答しました。

最後に、司会でアライコミュニティのリーダーである細田知美さんから岡部さんに「企業がLGBTQ+の当事者に評価されるためには何をすべきか?」という質問がありました。これに対して、「リスク回避的な、減点法的な考えでは駄目。LGBTQ+に限らず、女性でも障害者でも同じだと思うが、キーワードとしては『全員活躍』。マイノリティーの人々が直面するハードルを少しでも取り除いて、社員全員が活躍することで企業も強くなる。そういうプラスの発想を出発点に、一人一人が自信を持って働くための土台づくりをしていくことが重要」と岡部さんが回答し、トークセッションは締めくくられました。

ゴールド受賞はうれしいことではありますが、まだ通過点。今後も会社として、またアライとして、全員活躍の企業風土づくりを目指していこうと思いを新たにしました。

 

トークセッション(後半)写真(左より細田、岡部鈴さん、国田、秋山、中島)