今月9日(水)に開催された「2015年度 PRアワードグランプリ」(主催:日本パブリックリレーションズ協会)において、企業広報戦略研究所がエントリーした「産学連携:危機管理イノベーション・プロジェクト」が、イノベーション/スキル部門の最優秀賞を受賞しました。
この記事では、最終審査会のプレゼンターを務めた長濱憲主任研究員に、受賞の喜びと今後の展望についてインタビュー。10分間のプレゼンでは語りきれなかった、危機管理に対する思いをたっぷりと語っていただきます。
改めて感じた「オープンイノベーション」の意義
――まずは率直なご感想をお聞かせください。
とてもうれしいですね。内容はもちろん、プレゼンの構成や演出にも十分気を使って臨んだのが良かったのかなと思います。
――昨年の「広報力調査」に続いて、2年連続のアワード受賞となりましたが、決め手は何だったと思いますか。
「オープンイノベーション」という言葉が、ひとつ大きなキーワードだったような気がします。プレゼンのなかでこの単語を出したとき、ある審査員の方がおもむろにメモを取り出したのを見て「これは響いているな」と。データを一企業で保有するだけではなく、さまざまな企業と共有することで社会を変えていくということの意義を、今回プレゼンを作り込み、発表するなかで、改めて実感することができました。
――「イノベーション/スキル部門は、他に比べて敷居の高い部門だ」と、審査員のなかのお一人がおっしゃっていましたが、その実感はありますか?
実感というのは正直あまりないのですが、ひとつ言えるのは「チームで動く」ことが求められるということです。調査にはかなりのマンパワーが必要とされます。その点で、うちの会社には調査専門の部署もあり、十分な人数で動くことができたというのは非常に大きかったですね。
社会の変化に対応するための「予見力」
――調査結果を振り返ってみて、意外だったデータはありますか。
「メディアと企業の認識ギャップ」ですね。多少のズレはあると想像していましたが、ここまで重要視するリスクの種類に違いがあるのかと驚かされました。メディアが社会を反映するものだとしたら、そこに各企業が追い付いていないというのは危険なことだと思います。
――プレゼンのなかで、多くの企業における「予見力」の不足を指摘しておられましたが、そこにも関係してくるのでしょうか。
メディアが取り上げようとするリスクを把握できていないというのも、ひとつの予見力不足だといえます。予見力不足の大きな原因として、情報の不足が挙げられます。本来、社会やメディアの興味関心がどう変化するのかを予測したうえで、それに適応していかなければなりません。しかし、データが不足することで、予測が困難になるというわけです。
――予見力の強化は、変化への対応力につながるということですね。
そうですね。社会が変われば、当然発生するリスクも変化します。その変化を予測したうえで、企業の「モラル」も変えていかなければならないですね。
「対症療法」ではなく「予防」を。
――このプロジェクトに関わって変わったことや、何か気づきはありましたか。
「広聴」の重要性を実感できた活動でした。普段の業務においては、どうしても「広報」に偏りがちでしたが、広聴もあってのパブリックリレーションズだということを、この調査活動を通じて改めて感じました。
――「危機管理イノベーション・プロジェクト」の今後について、どのような考えをお持ちでしょうか。
起こってしまった出来事を小さく見せる、という「対症療法」的なコンサルティングではなく、問題行動そのものをどう減らしていくかというところにまで踏み込んで、企業の危機管理を支援できればいいですね。
――危機発生後ではなく、未然の「予防」に貢献していくと。
データを示すだけでなく、危機の発生を減らすところまでいかないと、本当の意味でのソーシャルグッドではないですから。会社が大きくなればなるほど、遭遇するリスクの数も増えていきますが、その数を少しでも減らせるよう、危機発生の前段階から踏み込んでいければと思います。
取材・文/中川 司