コロナ禍の芸術家を救え!
オンライン上のアートの可能性を拡げる
「東京藝大アートフェス」の挑戦 東京藝術大学
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戦略ポイント

●国に動きがない中、東京藝術大学がこの窮状に積極的に関与する姿勢を示し、安心感を醸成することが重要と判断。まずは活躍の場を失った若手アーティストをフィーチャーすることで、そうした状況にある若手をサポートしたいという世の中の機運を高めることを目指した。それら意見や議論を集約するプラットフォームとして「東京藝大アートフェス」をオンライン上に立ち上げ、卒業生である著名芸術家などを巻き込み世間の耳目を集めた。

●アートになじみのない生活者も含めて、ソーシャルメディアを活用し才能ある若手への支援に対する賛同の輪を広げ、行政へのアピールへつなげる作戦とした。社会から「能力者だから放っておいても大丈夫」と見過ごされがちな若手アーティストやアート界、その窮状への共感を生み出すべく、彼らの経済的困窮状況、またソーシャルメディア上で必死に自身の作品のアピールに取り組む姿を具体的に見せていくことで社会における支援意識醸成を目指した。

●絵画、音楽、彫刻などさまざまなジャンルを擁するアート界だが、通常その展示はそれぞれ全く異なる施設や環境で行われる。これを同じプラットフォームで見せるため、インスタグラムの「1投稿につき、画像を10 枚、動画も30 分まで」という特性を活用、あらゆるジャンルの作品をフラットに展示した。

 

実施内容

①2021年3月〜5月にわたり、オンライン上で「東京藝大アートフェス」を開催。203人の若手アーティストから310点の作品が応募され、1次審査を通過した119点をオフィシャルサイトで展示。インスタグラムと連携したことで国内外からの反応も多く、アーティストと共感者/支援者との新たなネットワークづくりに寄与した。アーティストたちも自らのソーシャルメディアを駆使し積極的なプロモーションを行い、これまで受け身になりがちだったビジネス的なつながりも増えていった。

②2次審査はインスタグラムの「いいね!」数を参考に、隈研吾氏、コシノジュンコ氏、さだまさし氏など各界のオーソリティーがボランティアで審査員を務め賞の価値を向上させた。5月2日の公開オンライン授賞式では、グランプリほか38点の受賞作品の発表が行われ、各アーティストに活動資金として賞金が授与された。

③活動経過はForbes JAPANやWIRED、ELLE、GQ Japanなどのメディアに取材プロモートを行い、各メディア視点から主催者や受賞作品、アーティストが取り上げられ報道された。各メディアはその取り組みに共感し、その後もアートの意義や価値の拡張理解を促すため取材が続けられた。

 

成果

① メディア露出は国内外で約700。複数のモバイルニュースでも掲載されソーシャルリーチ5億獲得、インスタグラムとの相性も生きる結果になった。

②アートフェスに参加した若手アーティスト自身によるインスタグラムのアピールによりさまざまな接点づくりに成功。東京・渋谷の新興ギャラリー「biscuit gallery」のオファーで展示会を開催し、作品の8割が売約決定、その後ギャラリー専属契約も決定するなど、個々のアーティストに経済的リターンも生まれている。

③ アートフェス終了直前には文化庁の都倉俊一長官が「文化芸術活動の休止は最終的な手段」「文化芸術活動は、不要不急ではなく生きていく上で、必要不可欠」とのメッセージを公開、さらに菅首相(当時)に対し文化芸術への国からの支援を早急に実施するよう要請するなど支援姿勢を表明した

④東京藝術大学では、今年度の活動成果を実感、次年度以降も活動の継続を決定。その他の芸術系教育機関や企業とのコラボ拡大にもつながっている。