各国の政治・経済動向が相互に影響を与えるグローバル社会において、諸外国の政策を早期に把握する必要性が高まっています。こうした背景を受け、当社は米国最大のアジア研究を専門としたシンクタンク「全米アジア研究所」(The National Bureau of Asian Research、以下NBR)と米国の対日経済政策の分析、対応・体制強化に関する協力関係を構築し、『ワシントン政策分析レポート』 を作成しております。
本レポートは、米国のアジア外交専門家と、当社のパブリックアフェアーズ専門家において5月に協議した内容に基づいて作成しております。 『米国の外交、サイバー/エネルギー・セキュリティに関する見通し』と題した今回のレポートでは、米国の対中外交政策やサイバー政策、米国のエネルギー・セキュリティ政策の最新動向についてまとめております。

 

■エグゼクティブサマリー

本レポートは、2023 年 5 月に米国のアジア外交専門家と、電通 PR コンサルティングのパブリックアフェアーズ専門家の間で協議された内容に基づくレポートである。日本企業が特に注目すべき点として次の 3 点が挙げられる。

・企業のESGポリシーを快く思わない政治家は特にレッドステーツ(共和党が強い州)に多く見られる。企業叩きの材料として、ESGが使われることがあるため、注意が必要である。日本の自動車メーカーはレッドステーツに工場が多いが、低姿勢で事業活動を行っており、今のところ、地元選出の政治家から嫌がらせを受けてはいない。

・中国における地政学リスクとして、外国人ビジネスパーソンの拘束・逮捕も重大な問題である。多くの場合、拘束理由が明示されることはなく、長期にわたる拘束が続くため、中国企業との紛争やデューディリジェンスには細心の注意を払う必要がある。

・米国の世論は中国に対してますますネガティブになってきており、またバイデン政権や議会が対中姿勢を緩和する動きは一切ない。来年1月の台湾総統選に向けて、中国から台湾への威嚇や工作活動というグレーゾーン戦略が活発化すると考えられるが、軍事的な台湾侵攻にまで踏み込むことは今のところ考えにくい。