各国の政治・経済動向が相互に影響を与えるグローバル社会において、諸外国の政策を早期に把握する必要性が高まっています。こうした背景を受け、当社は『欧州動向分析レポート』vol.4 を作成いたしました。

今回のレポートでは前回に引き続き「EUの政策形成過程とロビイング」と題し、EUの政策形成過程を概観するとともに、大きな役割を果たしているロビイングにまつわる規制の状況と、近年大きな関心事となっているデジタル関連政策におけるテック企業のロビイング活動についてまとめております。

 

■レポート構成

(1)EUにおけるロビイングの現在地
(2)最新トピック
(3)日本への影響

 

■エグゼクティブサマリー

・EUにおけるロビイングの可視化および透明性拡充を目指して欧州委員会と欧州議会が共同で開始した「ロビー透明性登録(lobby transparency register) 」は2021年に導入10周年を迎え、同時に欧州理事会が同制度の導入に合意し、より実効性が高まることとなった。

・実効性強化の主軸となっているのは2021年7月1日に導入されたTransparency Register (IIA)であり、ポイントは2つある。第1に、欧州委員会、欧州議会および欧州理事会の3機関が参加し、共通システムに改編したこと。さらにシステム改編だけでなく、3機関の事務局長で構成される透明性登録管理委員会(Transparency Register Management Board)を2021年9月に設立し、ガバナンス体制を構築した。第2に「条件付き」原則(“conditionality” Principle)を導入し、透明性登録簿への登録を特定の利益代表活動を行うための「条件」とすることで、それまでは任意であった登録を事実上義務化した。

・透明性登録簿の実効性が強化されたことにより、監視団体によるツール等を活用することで、外部から確認できる情報の量および質が向上している。

・EUの影響力からロビイングが活発に行われ、特にタクソノミー規制、気候変動対策、デジタル政策の3分野で精力的に行われている。

・政策審議の長期化とともにロビイングも長期化し、また利害関係が複雑化する中で、適切な情報収集およびステークホルダーの理解がますます重要になっている。