企業広報戦略研究所では、広報会議にて「データで読み解く企業ブランディングの未来」と題し、データドリブンな企業ブランディングのこれからをひもとく指南役として2020年7月より連載を開始しました。第8回は、「Withコロナ時代のトップコミュニケーション」をテーマに解説しています。

本トピックスでは、今後広報でも重要になるYouTuberをはじめとして数多くのインフルエンサーマーケティングを手掛ける「BitStar」代表取締役社長CEOである渡邉拓氏のインタビューを中心にご紹介します。

 

渡邉 拓(わたなべ・たく)

2011年 慶應義塾大学大学院 理工学研究科卒。新卒でスタートアップに入社し、新規事業の立ち上げに従事。独立後、友人のYouTuberを支援したことを転機としてBitStarを創業。累計約30億円の資金調達を実施し、コンテンツ産業を担うメガベンチャーをつくるべくクリエイタープロダクション・コンテンツスタジオ・VTuber・インフルエンサーマーケティング事業を展開。デロイトトーマツ主催「日本テクノロジー Fast 50」に2年連続で選出。プロピッカーとしても活躍。

 

 

 

-日本パブリックリレーションズ協会が昨年実施した調査(下図)によれば、「COVID-19・新型コロナ発生前」と「発生後」で広報・PRで重要視されるステークホルダーの変化として、回答者割合で差が大きかったのは、「ソーシャルメディアのインフルエンサー」「生活者」「WEBニュースプロバイダー」の順であったことが象徴的でした

 

 

-このようにコロナ禍で存在感を増すソーシャルメディアですが、その魅力をどのように考えていますか。

ソーシャルメディアの魅力は大きく三つの軸で捉えると分かりやすいです。
 一つめは、感性訴求。リアル感が圧倒的に高いため、親近感を抱きやすく信頼や共感を得やすい。二つめは、デバイス最適化。スマホに最適化された画角や尺の設定。スマホファーストなのでいつでも気軽に見ることができます。三つめは、プラットフォームアルゴリズム。それぞれのソーシャルメディアのアルゴリズムによって、個々人の嗜好(しこう)に合ったリコメンドが次々に現れることでユーザーを飽きさせない工夫がなされています。

 

-渡邉社長はニューズピックスのプロピッカーとしてもご活躍されていますが、ご自身の実体験などから得られたものはありますか?

2020年から私自身が各ソーシャルメディアで積極的に投稿しています。その反応は想像以上のもので、例えば、採用ではツイッターで採用募集をすると十数名の応募が来たりします。当然、私をフォローしてくれている方なので、もともと当社へのロイヤルティーも高い人が集まります。実際に採用に至って活躍している社員もいるほどです。

ニューズピックスは、またユーザー層が違ってビジネスのネタを探している方が多いと思います。実際にニューズピックスを接点としてさまざまなお問い合わせを頂くことも多いです。その場合、提案する前から当社や私の考えを認識・理解していただいていますので非常に助かります。

 

-今後の広報活動へのアドバイスがあれば教えてください。 

私自身の体験を広報視点から考えると、ソーシャルメディアでの投稿からマスメディアの取材が入ることもあります。そしてマスメディアでの紹介によって、ソーシャルメディアのフォロワーが非線形で増加することも実感しています。また、ニューズピックスでも、昨年末に書籍を出版するに至ったことも広報活動の成果といえると思います。

『動画マーケティングの新常識 〜最強のYouTube活用術〜』
発売日:2020年12月25日
著者:渡邉拓
発行元: ニューズピックス

 

また、自社で運営しているチャンネル「スターテニスアカデミー」にちらっと私が出演したことがありますが、大きな反響がありました。このチャンネルは、30代~50代のユーザー層が多いのですが、エグゼクティブクラスからの感想や出資提案があったほどです。


 
これまでの流れに鑑みると、今後ますますトップ自身や法人自身が直接ソーシャルメディアで発信することが重要になってきます。それは、企業活動への共感を生むために必要不可欠になるからです。ステークホルダーやユーザーもソーシャルメディアの方が深くリアルな情報が得られる場合があることが分かってきており、それを望んでいます。

さらに、プッシュ型の広告のみでマーケティングを突破することが難しくなってきていることも事実です。コンテンツの質によるプル型に移行していくことが必要であり、選択してもらえるコンテンツを発信できるかどうかが肝になります。

その先に、露出の獲得のみならず、理想的な採用計画の実現や事業成長機会創出が可能となり、最終的な企業価値向上にまでつながっていくのではないでしょうか。

 

編集後記

広報会議3月号では「トップコミュニケーション」をテーマに寄稿し、インタビューでは、渡邉社長自身のご経験と知見をお伺いする機会を得ました。

コミュニケーションがオンラインシフトをする中で、組織のトップもしくはリーダーが、ソーシャルメディアで直接発信することは共感を得なければならない様々なシーンで有効であり、益々重要性も高まってくると再認識しました。

 

 

(聞き手:企業広報戦略研究所 上席研究員 橋本 良輔)