平成から令和へと時代が変わり、2019年も残りわずか。

世界的ビッグイベントが開催される2020年を目前に控えた2019年は、数々の新たな潮流が生まれています。

電通PRのアンテナ力とリサーチ力を駆使し、独自の視点から

「電通PRが選ぶ 2019 TREND REPORT」を作成、今回は第4弾、「ヘルスケア」編です。

このトレンドレポートが、新しい時代を読み解く手掛かりとなれば幸いです。

 


 

はじめに

業際の消滅とイノベーションの活発化

人生100年時代、日常における健康への取り組みにもさまざまなトレンドが発生している。

例えば日々の歯磨き習慣に電動歯ブラシや高機能歯磨き粉という「道具の進化」ではなく、食品領域から「口腔内環境改善の機能性表示ヨーグルト」が参入、あるいは真夏の寝不足問題に高機能寝具ではなく、快適睡眠をサポートする「冷えすぎ防止アプリ付き扇風機」といったテクノロジー家電が登場するなど、これまで想像しなかった領域からの商品やテクノロジーサポートが頻出し、ヘルスケア領域が過熱している。

既存の定番プレーヤー以外の異業種からの参入が相次ぎ、ヘルスケア領域での業際がますます曖昧になってくることだろう。また外食チェーンやコンビニの商品をトレーニングジムが開発するなど、自社の強みを新たな領域で発揮できないかを模索する企業による異色の企業コラボにも目が離せない状況だ。

ヘルスケアにとどまらず、今ある技術が新たな領域でそのベネフィットを発揮し定着するといったイノベーションがさまざまな領域で活発化してくる様相だ。

企業はいま一度、自社商品の新たな時代における価値をリポジショニングし再定義してみるタイミングといえるかもしれない。

井口 理 TADASHI INOKUCHI
執行役員

 


TREND REPORT

 

日本は口腔ケアの後進国?!  “お口ケア”革命グッズ

ビジネスシーンなどで口臭を気にする人は少なくない。
2019年は、老若男女問わずあらゆる口臭・口腔(こうくう)ケアの商品が登場し、食品でも日本で初めて口内フローラを良好にする機能性表示食品のヨーグルトが現れた。

大人だけでなく、子どもの歯磨きを楽しくするアイテムも登場。ITを活用した虫歯予防運動も始まる中、1億人で口害予防に取り組む時代が訪れている。

お口ケアの革命グッズは今後もさらに広がりそうだ。

厚生労働省の「平成28年歯科疾患実態調査」によると、口臭の原因となる歯周病(4mm以上の歯周ポケット)を有する人の割合は、25歳以上で3割以上、45歳以上で約半数となる。しかし、自覚している症状として「口臭がある」と回答している割合は、その割合を大きく下回っていることからも、口臭が自覚しにくいことがわかる。

 


 

眠りも日々の積み重ね “睡眠負債”の“返済”方法

睡眠不足が積み重なる「睡眠負債」の怖さが話題になったことにより、睡眠の大切さが クローズアップ。「睡眠負債の返済」へ動き出す取り組みが起きている。

アプリと寝具の連携や冷え過ぎを緩和する扇風機など、テクノロジーで睡眠の質を高める「スリープテック」が話題を集めた。睡眠をサポートする食品やドリンクなども注目されている。

一方で、企業の中には働き方改革の一環として、時間当たりの睡眠の効用を最大化する睡眠法「パワーナップ」を取り入れる企業もでてきた。

IoTや人間科学など、最新のテクノロジーが詰まったモノやサービスが、日本人の睡眠 負債を解消していく可能性がある。

厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査」によると、日本人の20.2%の人が「睡眠で休養が十分に取れていない」と回答している。40代はその比率が最も高く、30.9%に達している。経済協力開発機構(OECD)が33カ国を対象に行った調査では、日本の平均睡眠時間は最低となっている。


 

できるひとの、できるカラダづくり 低糖質・高たんぱく食材

代謝を上げ、やせ体質に導く、低糖質・高たんぱくがフードトレンドに。

健康志向の高まりから、外食チェーンでもトレーニングジムとコラボした牛丼や、自社開発による低糖質・高たんぱくのメニューが続々登場。脂質やコレステロールが少ない大豆ミートも注目されるなど、新たなヘルシーフードを生み出している。

また、日々筋トレに励む筋肉女子も増加!アスリートや筋肉増強のために摂取するイメージだったプロテインが、健康・美容にいいという認識が女性にも広まり、プロテイン市場は大きく拡大している。

低糖質・高たんぱくのカラダづくりが、できる人を左右するかも?

緩やかな糖質制限“ロカボ”を取り入れた「ロカボバーガー」

プロテイン商品は、2019年に500億円を超える売上見込みとなっている


EXPERT INSIGHTS

世界的な流れは、高植物性たんぱく&食物繊維へ

 

西沢邦浩|KUNIHIRO NISHIZAWA

健康医療ジャーナリスト

 

 

筋力や筋肉量が、活力ばかりか寿命にまで関わるバイタルサインであることが多くの研究で明らかになりつつあるなか、今後も「筋活」は定着していくだろう。

市場拡大の鍵は、若い女性と将来に不安がある中年層にその重要性が浸透するか否かで、その原動力となる商品が現れるか否かにかかっている。例えば、2018年秋のTV番組で、“筋肉をつくる最強食材”として紹介され火が着いたカニカマ市場は、市場が拡大し安定していることからも試金石の一つかもしれない。こうした最近目につき始めた若年層向け「筋活型商品」の行方が興味深い。

一方、「低糖質・高たんぱく」は、血糖値を抑え効率的にダイエットするメソッドとしてすでに定着している。しかし、総摂取エネルギーの50~55%を炭水化物(糖質)で摂取する食事で最も死亡率が低いことが大規模解析で明らかになり、高たんぱく食による心疾患などのリスク増や腸内細菌そうの乱れも問題視されつつあるのが現状だ。減らすべきは砂糖に代表される「糖類」であり、「糖質」は取り方が重要であること(精製穀物から食物繊維が多い全粒型穀物にチェンジしようというのが世界標準)を踏まえ、軌道修正を図る必要があるのではないか。

その点でも、「植物性たんぱく質食」への流れは重要だといえる。同じ高たんぱく食でも植物性を主にした場合、前述のリスクが急減するという研究報告もある。また、そもそも大豆たんぱく食が市民権を得ている日本においては、至極自然なトレンドといえるだろう。今後のキーワードは、「高植物性たんぱく&食物繊維」に移っていくのではないか。


 電通PRが選ぶ 2019 TREND REPORT 編集チーム
細田 知美 TOMOMI HOSODA
ビジネス開発局

柏木 政彦 MASAHIKO KASHIWAGI
情報流通デザイン局

渡邊 悠紀 YUKI WATANABE
情報流通デザイン局

小倉 真由子 MAYUKO OGURA
情報流通デザイン局

中沢 麻衣 MAI NAKAZAWA
情報流通デザイン局

 


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