平成から令和へと時代が変わり、2019年も残りわずか。

世界的ビッグイベントが開催される2020年を目前に控えた2019年は、数々の新たな潮流が生まれています。

電通PRのアンテナ力とリサーチ力を駆使し、独自の視点から「電通PRが選ぶ これから予測 2019年版」を作成しました。
今回は「宇宙ビジネス」「フードテック」です。

これから世の中で起こるさまざまなビジネスやテクノロジーを、エキスパートとともに先読みしていきます。


 

はじめに

令和に花開くテクノロジーの実践

民間ロケット打ち上げやAR/VR、AI、IoTなど、これまで未来型テクノロジーとして期待されながらも映画のようにはその進化を達成しきれなかった世界がこの令和にようやく花開きそうだ。

しかもそれは過去の映画で示されたような一義的な世界ではなく、より 発展した新たな世界観を見せてくれそうである。この足踏みの時間に、それらが成し得る領域が拡張され、想像以上のベネフィットを生み出すことになりそうだ。

宇宙は未知の世界からむしろ地球のインフラ整備のためのフィールドとして活用されたり、AR/VR、IoTがエンターテインメントや利便性向上のみならず、健康、教育のフィールドでその機能を発揮したり。

既存の思考では追いつけないほどの進化にあらがわず、その息吹を感じ流れに乗るという柔軟な姿勢が企業にも求められるだろう。

井口 理 TADASHI INOKUCHI
執行役員

 


これから予測

宇宙ビジネス

データで宇宙の可能性を開く 宇宙ビジネス時代の幕開け

海外では、起業家の宇宙事業への参入により、民間主体の事業が発展的成長を遂げているが、日本もそれに追いつく動きを見せている。

日本では、これまで参入障壁の高さから宇宙産業の約9割が政府やJAXAなどにより行われてきたが、技術の飛躍的進歩により宇宙関連のデータ活用が可能になったことから、民間による新たな宇宙産業の拡大につながると期待されている。

日本政府は「宇宙産業ビジョン2030」を掲げ、宇宙産業に民需の循環を生み出し、我が国の宇宙産業全体の市場約1兆2000億円を、2030年代早期に倍増するという目標を掲げている。

低軌道への打ち上げコストを抑えることで、宇宙輸送需要は飛躍的に拡大するだろう。宇宙旅行、エンターテインメントなどの需要が見込まれる。今後宇宙を舞台に新しい食や、エンタメなど新しい文化やライフサイエンスの進展が広がるのかもしれない。

宇宙への移住が持続可能な事業なのかはまだ分からない。しかし、スペースXを設立したイーロン・マスク氏は、自身のTwitterで、「5年後に取り掛かって、軌道同期を10回も利用すれば、2050年までには自給自足できる都市を火星に建設できる」とコメントしている。

 


EXPERT INSIGHTS

宇宙ビッグデータ活用がついに本格化、2020年は宇宙ビジネスの成果が見える年に

 

 

笹川 真|MAKOTO SASAGAWA

未来創造第3グループ クリエーティブ・ディレクター

 

 

衛星の小型化、低コスト化により、大量の打ち上げが可能となり、2つの領域の新ビジネスが動き出した。

これまで衛星といえば、36,000km上空の静止軌道衛星の運用が多かったが、上空500~2000kmの低軌道上での運用が可能になってきている。この低軌道衛星を用いた宇宙ビッグデータ活用がついに本格化している。この領域には、世界的にみても、宇宙ビジネスの中で最も多くの企業からの投資マネーが流れ込み、活気のある分野。複数の低軌道衛星で地球の状態を観測し、地上の変化から何が起きているのかの情報を企業に提供するビジネスが発展していく。

また、宇宙空間を経由したネットを構築する、宇宙インターネットの整備も進むだろう。アフリカ大陸のようなまだネットインフラの供給が十分でないエリアでは、インターネット網を宇宙から構築する方がコスト面で有利だと考えられている。

ソフトバンクも出資したことで日本でも話題になったワンウェブ、ジェフ・ベソスのブルーオリジン、イーロン・マスクのスペースXらがしのぎを削っている。

こういった例のように、宇宙データ活用や宇宙からのネット網整備が進み、普段宇宙のことを考えていない人にとっても宇宙ビジネスは身近な存在になっていく。

2019年は人類史上初めて月面着陸に成功したアポロ11号の成功からちょうど50年で、大きく宇宙ビジネスが動き出した年といえる。米国は今後5年以内の月面有人探査、また2033年までの火星有人探査を明言。2020年は日本のプレーヤーを含め、宇宙ビジネスの成果が見える年になると予想している。


フードテック

“食べる”に、今こそ革命を。 フードテックで社会課題の解決

人類が直面する食料不足、そして食の流通に関する問題。これらを解決する可能性を秘めた「フードテック」は、世界を大きく変える技術として注目されている。

動植物の遺伝子を高精度で改変できるゲノム編集の革新性に着目し、すでに大手企業が実用化に乗り出している。サンマやスルメイカなど、毎年不漁の話題が多くなる水産ビジネスは、海から陸へ。水産大手だけでなく、商社やIT企業など異業種などが陸上養殖ビジネスに参入している。

一方、世界に目を向けると米国をはじめとする各国では、ロボティクス技術やAIを活用した「インドア・ファーミング(室内農業)」が注目され、10年ほどで露地栽培と同じ生産量になるともいわれている。

課題解決に挑み、ビジネス化をしようとする異業種やスタートアップに注目したい。

 

 


EXPERT INSIGHTS

「食」の進化は、人類の進化。今後のフードテックに期待される3つの方向性

 

岩佐 文夫|FUMIO IWASA

編集者 (前 Harvard Business Review 編集長)

 

 

世界で最初のフードテックは、おそらく火を使った料理であろう。かつて人類は1日の大半の時間を食材の咀嚼と消化に費やしていた。火の使用によりこれらの仕事から解放され、人のエネルギーは脳の活動に使われるようになったことから知性と社会性が発達したといわれる。

今日のフードテックもその延長にある。人間の生命と活動の根本を支える「食」の進化は、人類の進化に直結する。期待される方向は3つある。

1つ目は一人ひとりにより最適化された食材提供システムである。IoTやAIなどのデジタル技術により、一人ひとりの健康状態をモニタリングし、それに最適な栄養を含んだ食事が提供される方向である。長寿化社会では、健康の維持の重要性は増す。

2つ目は、人口90億人時代に深刻化する食糧不足という社会課題の解決だ。求められるのは量を増やすだけのソリューションではない。食糧問題は環境問題や水問題とも直結しており、持続的な循環システムの伴ったソリューションが求められ、そのインパクトは計り知れない。

そして3つ目は、豊かな食体験の提供である。人類における食の役割は、エネルギーと栄養の補給というだけでなく、社会活動に欠かせない人との交流手段である。食が人と人をつなぐのだ。とりわけネット化が進む今後の社会においては、「食べること」こそが、人と人がリアルに会う目的の中心になる。カギはウェルビーイング(幸せ)である。

現在、味覚の研究では、食事の幸福感において味覚の役割の小ささが注目されている。脳科学や認知科学からウェルビーイングの研究も、これからのフードテックでの主要なプレーヤーになる。


 

 電通PRが選ぶ これから予測 2019年版 編集チーム
細田 知美 TOMOMI HOSODA
ビジネス開発局

柏木 政彦 MASAHIKO KASHIWAGI
情報流通デザイン局

渡邊 悠紀 YUKI WATANABE
情報流通デザイン局

小倉 真由子 MAYUKO OGURA
情報流通デザイン局

中沢 麻衣 MAI NAKAZAWA
情報流通デザイン局

 


 

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