各国の政治・経済動向が相互に影響を与えるグローバル社会において、諸外国の政策を早期に把握する必要性が高まっています。こうした背景を受け、当社は米国最大のアジア研究を専門としたシンクタンク「全米アジア研究所」(The National Bureau of Asian Research、以下NBR)と米国の対日経済政策の分析、対応・体制強化に関する協力関係を構築し、『ワシントン政策分析レポート』 を作成しております。
本レポートは、米国のアジア外交専門家と、当社のパブリックアフェアーズ専門家において8月に協議した内容に基づいて作成しております。『ウクライナ危機とロシア・中国および米国政治の展望』と題した今回のレポートでは、ロシアのウクライナ侵攻とそれに続く戦争が中国企業のグローバル戦略に与える影響および中露間の関係性、米国の内外に関する政治の展望についてまとめております。

 

■エグゼクティブサマリー

本レポートは、2022年8月に米国のアジア外交専門家と、電通PRコンサルティングのパブリックアフェアーズ専門家の間で協議された内容に基づくレポートである。
日本企業が特に注目すべき点として次の3点が挙げられる。

・米国の国際政治経済にとって、最も重大な課題は中国である。現在、中国が究極の脅威と言ってもよい。西側企業としては、ウクライナ戦争が間接的に中国に与えるプラス面/マイナス面を考察し、地政学リスクへの対応を行うことが必要とされる。

・米国は日本から促されてもTPPへの参加をすることはない。しかし、インド太平洋において、米国主導の経済連携や枠組みなどの新設と仲間づくりは積極的に行っている。民間においては情報通信のO-RANなどが進んでおり、企業としても中国を外した形での国際連携に踏み込まざるを得なくなっている。

・ロシアビジネスから撤退せずに、曖昧な態度をとっている日本企業が多数あると考えられるが、撤退を判断した企業の方が業績や株価、レピュテーションが高くなると考えられる。そして、重要な経営判断を行う際には、従業員の意向も参考にすべき時代になってきた。