CSR

コミュニケーションデザイン局 シニアコンサルタント 大川陽子

 年度末を迎える企業が多い3月のこの時期は、人やモノの動きも活発になる。そして季節の変わり目、暖かい空気が流れて、新たなスタートを切る節目の時期でもある。

 節目といえば、企業が迎える「周年」がある。

 最近、〝○周年を迎える企業のCSR活動〟〝社長交代においてCSR経営を強化〟〝発売○周年を記念してCSRプロジェクトをスタート〟…。こんな見出しを目にすることが珍しくなくなった。

 

社員の思いをカタチに

 2015年に開業100周年を迎えるA社。「CSRレポート2014」では、トップメッセージにおいて、事業を通じて社会が直面している問題を解決し、社会の発展に貢献するという考えがDNAとして根づいていること、次の100年も実践し、地域社会をはじめとするさまざまなステークホルダーの発展に貢献しながら、グローバルな企業としてさらなる成長の実現を目指すことを伝えている。トップの声に呼応するように、レポートでは社員の座談会の様子を伝えている。テーマは〝めざすべき姿〟。100年後の社会を見据えながら、解決すべき社会課題、社としてどのように貢献するか、さまざまな社員のバックグラウンドを通して〝A社ができること〟を模索している。従業員の思いとともに、事業活動を通して社会課題を解決する方向性を見いだすことができる一つのメッセージととれる。

 2014年に開業20周年を記念して「チャリティ・ラン」を開催したB社。パート社員を含む社員、その家族向けにジョギングの機会を創出した。参加費(寄付だけのものも含む)の全収益の50%を、所在地の社会福祉協議会への寄付、残りの50%は従業員救済基金への寄付としている。社員の一体感、働く地域をより深く知るといった目的で実施された。こういったランニングやウォーキングなどのスポーツをテーマとしたCSR活動も増えている。ともすると生産性にも影響を及ぼしかねない社員の健康管理も重要な企業の社会的責任であるという認識は定着しつつある。

企業と社会のつながりを伝えるメッセージとして

 顧客への商品・サービスを通して社会との接点をつくりだす取り組みも多くみられる。国際フェアトレード認証商品としてC社が発売しているチョコレート。2008年の創業110周年を記念したCSR活動の一環としてスタートしたキャンペーン展開を続けている。NGOを支援パートナーに、1個につき1円をチョコレートの原産地への支援としてつなげている。

周年といった一つの節目は、生活者・顧客に対して、企業と社会のつながりをメッセージとして強く印象づける一つのきっかけとなる。

節目だからこそ、ストーリーを持って伝えたい

 〝○○の機会にCSR活動を〟と公表している企業は多く見られるが、実態はどうかが問われる。ステークホルダーに対して、企業としての明確なメッセージと、社員の思いを伝えること。そして、事業活動を続けるなかで社内外に、社会に、どういった変化をもたらしたかを伝えること。その点が重要となる。それが、社員間のエンゲージメント強化につながる。 また地域との接点、社会課題との接点を明確にすることで、生活者との接点を強くすることができる。

 周年など企業にとっての一つの節目を、より良いステークホルダーとの関係づくり強化につなげる絶好の機会ととらえたい。そのためには、ストーリーを持って伝えるコミュニケーションが効果をもたらす。