CSR

コミュニケーションデザイン局 シニアコンサルタント 大川陽子

社会的責任に関するガイドラインISO26000が発行され、注目されたのは「人権」「労働」。以前のレポートでも触れているが、グローバル化が進むなかで海外における生産現場の雇用、労働環境に関わる問題が明らかになり、NGO等第三者の視点から厳しい指摘が続いている。一方、日本国内においても人権や労働に関わる動きは社会課題として大きく取り上げられている。企業はどう対応しているのか。さまざまな視点で注目されるテーマである。

 

昨年から引き続き、正規雇用・非正規雇用等の「雇用形態」、労働時間や職場環境等に関わる 「労働環境」、「女性活躍」、それらを推進する企業の対応に関する報道が目立っている。いまや〝働きかた〟に対する企業の姿勢や方針、制度等の施策が企業評価を左右する軸になるといっても過言ではない。評価軸につながるキーとなる要素はどういったもので、どのように報じられているのか。 以下に主なポイントを整理する。

 

<評価につながる要素=雇用形態の見直しと企業のスタンス>

さまざまな業種・業態の有名企業の、パートや契約社員等の正社員化を図る動きが報じられている。年功序列や終身雇用が当たり前ではなくなってきているなかで、正規雇用と非正規雇用の差を埋める動きはメディアに取り上げられやすい。いわゆる〝日本型雇用の崩壊〟という社会的文脈と相まって、現状はポジティブな論調で語られている。

主な言及要素としては〝人に投資する〟という考え方、中長期的にみた生産性の向上、育児や介護等の〝人生設計〟を踏まえた働き方支援、賃金・福利厚生等待遇の見直しなど。なかでも、数値情報等を含めたより具体的な言及が目を引く。

 

<評価につながる要素=実態ある制度かどうか>

年明け1月5日。東洋経済オンラインであがっていたのは「有給休暇をしっかり取れるトップ200社」という記事。有給休暇消化率といった具体的な数値情報が、企業をランク付けする主要素となり、yahooニュースをかざるようになったのはここ数年の変化であろう。ランキングだけで全てを評価できるものではないが、少なくとも数値情報は実態を示す。就職活動中の学生をはじめ、働きかたを模索している層が多い現状のなかで、企業を印象づける要素の一つとなるだろう。

 

<評価につながる要素=女性活躍を具現化しているか>

実態を示すという意味では、「女性活躍」に関わる動きにおいても強く求められる点であろう。昨年10月、女性管理職比率の数値目標設定、公表の義務化が報じられた。内閣府男女共同参画局の『女性の活躍「見える化」サイト』のように、管理職比率をはじめ、産休取得数や育児休暇復職率等を掲示。投資家、消費者、学生等さまざまなステークホルダーから見られ、容易に比較可能な形での情報発信基盤もある。一方で、実態が伴うものなのかどうか、といった議論も常にある。今後、「活躍度合い」を実態として評価する動きも盛んになってくると思われる。金融機関では、こういった状況を新たなビジネスチャンスとしてとらえ、融資先企業に対して女性の活躍を後押しする方策等を助言する新たなサービスを始めている。同業他社や先進企業と比較し、企業内の女性活躍度を診断するもので、サービスを受ける側の企業も、評価結果を公表することによって優れた人材獲得ツールとして活用が可能とされている。

 

企業が発信する情報は評価の基盤となる。より具体的に、実態がわかる情報が求められている。〝耳触りのよい響き〟のみで発信する情報は、ステークホルダーには響かないといえる。