企業広報戦略研究所(所長:三浦健太郎、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、企業と社員のエンゲージメントを深めるにはどのような要素が重要で、どうすればインターナルブランディング®につながるのかを、コミュニケーションの観点から解析することを目的に、本年8月、全国20~69歳のビジネスパーソン1000人を対象とした『インターナルブランディング®調査』を実施しました。さらに、その調査結果をもとに、「インターナルブランディング®モデル」を開発しました。

 

インターナルブランディング®モデル

インターナルブランディング®は、2003年に電通PRコンサルティングが商標登録をしています。「組織内部で課題を共有化し、一つのビジョン(目標)に向かって、同じ意識で一体となって行動していくことにより、人々をひきつけるパワーを生み出し、組織の価値を高めること」でブランディングする、という考え方です。

この考え方とこれまでの実績、さらに「インターナルブランディング®調査」の結果をベースにして、新たに「インターナルブランディング®モデル」を開発しました。このモデルは、エンゲージメント※を強化するキードライバーが「理念」であり、それを下支えする要素として、「Working Condition」「Motivation」「Relation」の3つがある、という考え方に基づいています。
※本リリースでの「エンゲージメント」とは、企業と社員の絆を表し、本調査では、「信頼」「愛着」「誇り」「貢献」で定義しています。(【図表1】参照)


調査結果

本調査では、自身の勤める会社に対して、「信頼している」、「愛着を感じている」、「誇りを感じている」、「貢献したい」の全ての項目におい
て、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した人を、会社との「高エンゲージメント層」と設定し、全て「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と回答した人を、会社との「低エンゲージメント層」と設定し、分析を行いました。

1. 6割が自社に「貢献したい」一方、自社への「信頼」「愛着」「誇り」は過半数が欠如

ビジネスパーソン1000人が自身の勤める会社に対して「信頼しているか」を尋ねたところ「とてもそう思う」(5.8%)と「まあそう思う」(42.2%)が計で48.0%と過半数を切る結果となり、「あまりそう思わない」(34.7%)、「まったくそう思わない」(17.3%)の過半数(52.0%)が“信頼していない”という結果でした。
さらに、「愛着を感じているか」(49.2%)と「誇りを感じているか」(49.2%)も「そう思う・計」が半数以下となり、信頼、愛着、誇りを感じている人とそうでない人は半々であることが分かりました。
唯一半数を超えた項目が「自社に貢献したい」で、「とてもそう思う」は6.5%にとどまるものの、「まあそう思う」が53.1%と合計約6割の人が貢献したいと考えていることが分かりました。 【図表1】

2.エンゲージメント(企業と社員の絆)を左右するのは“思いやり”と“パーパス”

勤務先の「制度や職場に関する要素」、「業務に対するモチベーションに関する要素」、「社内コミュニケーションに関する要素」についてそれぞれ聞いたところ、全項目においてエンゲージメントが高い層で良好な結果となりました。
高い層と低い層で最も差が大きく出た項目は、社内コミュニケーションに関する要素の「同僚や部下を思いやる風土がある」で、エンゲージメントが高い層で「そう思う・計」が66.7%だったのに対し、低い層では23.1%にとどまりました。エンゲージメントの高い層は、職場で「思いやり」を感じている人が特に多いことが分かりました。
次いで差が大きくなったのは、自身の業務に対するモチベーションに関する要素で、「仕事を通して達成感や自己成長が感じられる」(43.6pt差)、「求められる社員像が自分の目指す姿に合っている」(43.5pt差)、「社会に価値あるもの/ことを提供できていると実感できる」(42.0pt差)が続きました。自身の成長目的と企業の成長目的が実感できたり、両者がマッチしていることなど、「パーパス(目的・意義)」がエンゲージメントに関係していることがうかがえます。
また、5位、6位は社内コミュニケーションに関する要素の「経営関連の情報がきちんと伝達される環境が整っている」(41.9pt差)、「トップは社員に対してメッセージを発信している」(41.4pt差)となりました。 【図表2】
エンゲージメントの強化においては、よりモチベーションやコミュニケーション環境が重要になってくると考えられます。

3.高エンゲージメント層の7割以上が「自社の理念を意識して行動している」

自社の企業理念について、「知っている」「理解している」「良いものだと思う」「意識して行動している」の4項目で聞いたところ、全体では、「知っている」(59.5%)と「理解している」(57.1%)が6割弱にとどまりました。「良いものだと思う」(53.5%)は半数を超えましたが、「意識して行動している」は48.2%と半数以下でした。
エンゲージメントの高い層で見ると、「意識して行動している」を含む全ての項目において7割を超え、大半の人が自社の理念を良いものだと思った上で、意識して行動に移していることが分かりました。
一方、エンゲージメントの低い層を見てみると、「知っている」(37.0%)と「理解している」(33.2%)は3割を超えましたが、「良いものだと思う」(27.2%)「意識して行動している」(23.2%)は3割未満でした。【図表3】

 

4.企業理念は、「社会に提供する価値が明確になっている」ことがポイント

自社の企業理念の内容について聞いたところ、最も多くなったのは「社会に提供する価値が明確になっている」(39.8%)でした。これはエンゲージメントが高い層および低い層、ともに最も高い項目となりました。
次いで高かったのは「社員が持つべき信念が明確になっている」(33.9%)、「自社の業容が明確になっている」(32.4%)でそれぞれ3割を超えました。
エンゲージメントが高い層と低い層のギャップを見ると、全ての項目でエンゲージメントが高い層で高い数値となりました。また、ギャップが特に大きかったのは「社員が持つべき信念が明確になっている」(22.0pt差)、「自社の強みが明確になっている」(20.8pt差)でした。【図表4】
エンゲージメントが高い層の方が企業理念の内容への理解が深く、「信念や強み」まで実感できていると考えられます。一方低い層では「提供価値」や「業容」まではある程度感じ取っているものの、それ以上の意味をくみ取れていない可能性が考えられます。

5.企業理念は「社内報」で目にする人が約半数だが、印象に残っている人は2割未満

自社の企業理念を目にするツール・機会を聞いたところ、最も多かったのは「ポスター、掲示物」(49.0%)でした。 次いで「社内報」(48.3%)、「カード、小冊子」(44.8%)と紙媒体が続き、紙以外のツールでは「企業ウェブページ」(41.5%)が最も高くなりました。
一方、印象に残ったツール・機会は1位の「ポスター、掲示物」(22.5%)が2割を超えたものの、以下続く「カード、小冊子」(17.5%)、「社内報」(16.9%)などいずれも2割に満たない結果となりました。
「目にする」と「印象に残った」で差分が大きかった項目を見てみると、「社内報」(31.4pt差)が最も差が大きく、次いで「企業ウェブページ」(29.1pt差)となりました。社員が目にしているツールではあるので、より印象に残るよう、キーワードを立たせる、社員の共感を得やすいストーリーにする、ビジュアライズして伝える、などの工夫をし、情報を届けるツールとして有効活用していけると良いでしょう。【図表5】

6.低エンゲージメント層は、自社の対外発信が「十分」と感じている人は1割未満

自社の企業理念の対外発信の状況について聞いたところ、十分に発信されていると感じていると回答した人が最も多かったのは「自社メディア」(21.6%)、次いで「広告」(20.2%)でした。「記事・番組」(14.2%)、「企業発のSNS」(9.5%)は2割を切り、十分に発信されていると感じている人は少ないことが分かりました。
エンゲージメントの低い層を見ると、「自社発メディア」を含むすべての項目において、「十分に発信されている」と感じている人が1割未満にとどまりました。また、エンゲージメントが高い層と低い層でギャップを見ると、全ての項目においてエンゲージメントが高い層が低い層を10pt以上上回る結果となりました。 【図表6】対外発信は、社外のステークホルダーに情報を届けるだけでなく、それを見た社員への効果も期待できることから、エンゲージメントの強化を後押しするのに重要な取り組みであるといえそうです。

まとめ

インターナルブランディング®モデルで企業のブランディングを推進

企業のグローバル化や働き方の多様化が進み、終身雇用が崩壊し、優秀な人材の確保が困難になりつつある今、インターナルコミュニケーションの重要性がますます高まっています。
企業広報戦略研究所では、これまでの実績をベースに、「理念」をキードライバーとしてインターナルコミュニケーションを展開し、社員の意識を結束させることの重要性とその効果は実感としてありました。今回この調査を通して、その実感を証明することができた、と考えています。
ここでいう「理念」とは、「企業理念」だけを指すものではありません。組織が目指すべき方向性を示す言葉のことを指します。企業によっては、「理念」ではなく「ミッション」「ビジョン」などと表現されることもあります。その場合も「理念」と定義しています。
エンゲージメントを強化するには、ただトップダウンで「理念」を伝達するのではなく、社員が「良いものだ」と感じ、さらには「意識して行動しよう」とするアクションにまでつなげることが重要です。
また、エンゲージメントを下支えするのが「Working Condition」「Motivation」「Relation」の3要素です。「Working Condition」はある一定の規模の企業になってくると整備されており、当然といえる項目になってきます。エンゲージメントをさらに強化するには、「Motivation」の中でも社員が「パーパス」を実感できていたり、「Relation」の中でも、社員間に「思いやり」の関係性が築けていることが重要になってきます。
調査結果で証明されたメソッドから開発した「インターナルブランディング®モデル」に基づいて、企業のブランディングを推進することが、これからの時代の企業成長のカギを握っていると考えます。

調査概要

調査対象:全国の20~69歳のビジネスパーソン 男女それぞれ500人ずつ 計1000人

調査方法/期間:インターネット調査/2019年8月8日~12日

調査内容:自分の勤める会社に対する意識と理念に対する状態を調査
•勤める会社への意識と企業理念の浸透度との関係
•それらに有効な取り組み要素
•理念浸透に効果的な広報ツール など

※リリース内のデータは小数点以下第2位を四捨五入しています。数値の差分を計算した場合などは、記載している数値とズレが生じる場合があります。

 

企業広報戦略研究所とは

(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称C.S.I.)

企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究を行う、(株)電通PRコンサルティング内の研究組織です。2013年12月設立。所長:三浦健太郎。
企業広報戦略研究所サイト https://www.dentsuprc.co.jp/csi/

 

<お願い>
本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。

 


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