企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、生活者が企業のどのような活動や事実(ファクト)に魅力を感じ、その魅力がどのように伝わっているのかを解析することを目的に、本年7月、全国1万人を対象とした「第8回 魅力度ブランディング調査」を実施しました。

 「魅力度ブランディング調査」では、コーポレートブランドを構成する魅力を、「人的魅力」「財務的魅力」「商品的魅力」の3つに分類し、それぞれで重視すべき12項目(計36項目)を定めた「魅力度ブランディングモデル」を活用して企業の“魅力”を分析しています。企業広報戦略研究所では2016年から毎年調査を行っています。
 本リリースでは、20業界200社を対象とした調査結果から、魅力項目ランキング、魅力度の業界別ランキング、魅力を感じた情報源、魅力度と社会課題(ソーシャルイシュー※)対応の関係性などについて分析しています。

※本リリース上では、社会課題について、ソーシャルイシューと表現しています。

 

調査結果のポイント

1. 最も解決優先度の高いソーシャルイシューは「賃上げ」「値上げ」
    企業に対しては「労働問題」の解決を期待する傾向

2. ソーシャルイシュー対応は企業魅力度と相関する結果に
    労働問題に取り組む企業は魅力度が高いことが明らかに

3. 企業に魅力を感じた情報源:最多は「リアル」、「ソーシャルメディア」のみ前年より増加
    ソーシャルメディア1位「YouTube」、20代は過半数が「X(旧Twitter)」を情報源に

4. 企業に魅力を感じる項目「ビジョンを掲げ、業界をけん引している」
    8年連続不動の1位に

5. 企業魅力度 業界ランキング1位「損保・生保・商社」、2位「食品」、3位「電機」

■過去の魅力度ブランディング調査については、以下よりご参照ください
https://www.dentsuprc.co.jp/csi/csi-outline/?category=attractiveness_branding

 

魅力度ブランディングモデル

 

 生活者や個人投資家が、企業のどのような活動や事実(ファクト)に“魅力”を感じるのかを、「人的魅力」「財務的魅力」「商品的魅力」の3要素(各12項目、合計36項目)で検証するブランドモデルです。

【3魅力の定義】
●人的魅力
リーダーシップや職場風土、ソーシャルイシュー対応力など、企業を構成する「個人」や事業活動を通じて周囲に感じさせる「法人」としての魅力
●財務的魅力
成長戦略、安定性・(中・長期的な)収益性、リスク&ガバナンス対応など、優れた財務パフォーマンスと、それらを支える仕組みや取り組みに関する魅力
●商品的魅力
コストパフォーマンス、安全性・アフターサービス力・クレーム対応、独創性・革新性など、商品・サービスを通じて伝わる魅力

 2016年に、企業広報戦略研究所が開発し、このモデルを基にした論文が日本マーケティング学会2017ベストペーパー賞を受賞しています。

 

第8回 魅力度ブランディング調査結果  
~ソーシャルイシューに注目~

1. 最も解決優先度の高いソーシャルイシューは「賃上げ」「値上げ」
企業に対しては「労働問題」の解決を期待する傾向

 まず、ソーシャルイシューについて、「優先して解決・進展すべき/してほしい項目」について聞いたところ、1位「賃上げ」(34.4%)、2位「物価高騰による食料品の値上げ」(28.1%)、3位「物価高騰による、食料品以外の値上げ」(27.1%)、4位「所得の格差」(25.4%)と、上位を生活に負担を与える、経済的な課題が占める結果となりました。昨今の値上げラッシュ等がいかに生活者にとって喫緊の課題であるかがうかがえます。
 一方、各企業に解決を期待するソーシャルイシューについて聞いたところ、1位「賃上げ」(16.8%)、2位「日本の科学技術力低下」(14.6%)、3位「労働環境の改善」(14.5%)、4位「長時間労働・過労死」(14.4%)となりました。コロナ禍に表面化した半導体不足など国産技術の問題やエネルギー問題、生活者の働き方や生活に直結する人的資本にまつわる課題の解決を企業に求めているようです。
 生活者の解決優先度の高いソーシャルイシューと、企業に解決を期待するソーシャルイシューは異なる結果となりました。【図表1】

 

 

 【図表2】は、生活者が「優先して解決・進展すべきと考えているソーシャルイシュー」をY軸、「企業・業界・団体に解決を期待しているソーシャルイシュー」をX軸としたプロット図です。
 生活者の解決優先度の高いソーシャルイシューと、企業・業界・団体に解決を期待するソーシャルイシューは異なりますが、右上にプロットされるソーシャルイシューほど、生活者の解決優先度が高く、企業に解決を期待する度合いも高くなります。環境関連のソーシャルイシューへの注目度も高くなっていますが、「賃上げ」や「長時間労働・過労死」といった生活や働く環境にまつわるイシューは、解決優先度と企業に解決を期待する度合いが、より高いことが分かります。

 

 

第8回 魅力度ブランディング調査結果  
~ソーシャルイシューと企業魅力の相関~

2. ソーシャルイシュー対応は企業魅力度と相関する結果に
労働問題に取り組む企業は魅力度が高いことが明らかに

 生活者が思う、各企業が取り組んでいるソーシャルイシューと、その企業の魅力度(魅力総量)の相関を分析したところ、正の相関性があることが明らかになりました。魅力総量とは、調査内で提示した企業について、回答者が36の魅力項目の中から該当すると思うものを選択した、1万人の総反応個数です。
 魅力度と最も強い相関性が見られたソーシャルイシューは、「賃上げ」(相関係数:0.86)でした。次いで、「産休・育休制度」(相関係数:0.83)、「労働環境の改善」(相関係数:0.80)となっています。これら3項目は相関係数が0.8を超えており、非常に強い相関があることがうかがえます。 【図表3】

 

 

※相関分析とは、2つのデータの関係性の強さを表す指標(相関係数)を計算し、数値化する分析手法です。 相関係数は1に近づくほど正の相関(正比例)の関係が強くなり、-1に近づくと負の相関(反比例)の関係が強くなります。 また、0に近づくほど無関係になります。

 

第8回 魅力度ブランディング調査結果
~魅力を感じた情報源~

3. 企業に魅力を感じた情報源:最多は「リアル」、「ソーシャルメディア」のみ前年より増加

 「企業の魅力をどのようなところで見聞きしたか」について聞いたところ、カテゴリ別では商品・サービスの購入や社員・店員を通した「リアル」が最も多く(49.5%)、次いで「メディアの番組・記事」(29.1%)、「メディアの広告」(23.1%)、「オウンドメディア」(22.1%)、「ソーシャルメディア」(18.9%)の順となりました。前年度と比較すると、各カテゴリの順位は変わりませんが、「ソーシャルメディア」のみ割合がやや増加しています。このことから、生活者の企業に関する情報源として、「ソーシャルメディア」の重要性は今後も高まっていくことが考えられます。【図表4】

 

 

 企業の魅力を感じる情報源として、ソーシャルメディアを選択した人に、どのソーシャルメディアで魅力を感じるかを聞くと、1位「YouTube」(46.9%)、2位「X(旧Twitter)」(39.2%)、3位は「Instagram」(31.3%)、4位「LINE」(18.6%)、5位「Facebook」(15.1%)という結果となりました。
 また、「普段よく利用しているメディア」を聞くと、1位「YouTube」(55.4%)、2位「X(旧Twitter)」(43.7%)、3位「LINE」(38.7%)、 4位「Instagram」(38.6%)、5位「Facebook」(15.8%)という結果でした。
 ソーシャルメディアで企業の魅力を感じた人のうち、 「YouTube」は過半数もの人が普段よく利用していると回答しています。企業の魅力を感じる情報源としても半数近くの人が選択しており、企業のブランディングにおいて、動画コンテンツの重要性が高まっていることが考えられます。【図表5】

 
企業の魅力を感じたソーシャルメディア:
1位「YouTube」、20代は過半数が「X(旧Twitter)」を情報源に

 企業の魅力を最も感じるソーシャルメディアと、普段よく利用しているソーシャルメディアの特徴を確認すると、年代別に違いが見られました。
  30代~50代では、企業の魅力を感じる情報源の上位3位はいずれも、「YouTube」「X(旧Twitter)」「Instagram」の順ですが、20代は1位が「X(旧Twitter)」となっており、ソーシャルメディアで魅力を感じた人のうち、半数以上の人(57.7%)が「X(旧Twitter)」から企業の魅力を感じていることが分かります。普段からよく利用されているものでは、40代、50代は「Instagram」よりも「LINE」の方が高くなっていますが、企業の魅力を感じる情報源としては「LINE」より「Instagram」の方が上位という結果になりました。 60代は唯一「LINE」が企業の魅力を感じる情報源として3位以内にランクインし、「Instagram」や「X(旧Twitter)」よりも影響力が大きいようです。
 このように、一口に「ソーシャルメディア」といっても、ターゲットとする年代ごとに、アプローチすべきメディアの種類は検討していくことが必要です。【図表6】

 

 

第8回 魅力度ブランディング調査結果
~注目の魅力項目とは~

4. 企業に魅力を感じる項目「ビジョンを掲げ、業界をけん引している」
8年連続不動の1位に

 全国の生活者1万人が対象企業200社に対して感じた魅力の総量を集計したところ、最も多かった魅力が「人的魅力」で全体の 37.7%となりました。次いで、「商品的魅力」が33.8%、「財務的魅力」が28.4%でした。【図表7】
 この順位は、割合に微増・微減はあるものの、調査開始以来8年連続で変わりません。企業の3魅力を巡る考え方は、世の中の移り変わりにあまり左右されない不動のものであることがうかがえます。【図表8】

 

 

 

 

 

 3魅力の項目の内訳を見ると、TOP5には5年連続で同じ項目が入りました。さらに、本調査開始以来8年連続で、「ビジョンを掲げ、業界をけん引している」(48.8%)が第1位となりました。【図表9】

 ビジョンやリーダーシップなどの非財務情報が“魅力ある企業”のカギになることは普遍的であると言えそうです。特に社会・経済環境が急速に変化している昨今、ビジョンやリーダーシップによって結束力を発揮し、持続的な事業成長の実現に挑戦する企業に魅力を感じていることが考えられます。

 

 

第8回 魅力度ブランディング調査結果
~魅力度業界別ランキング~

5. 企業魅力度 業界ランキング1位「損保・生保・商社」、2位「食品」、3位「電機」

 生活者が企業に対して感じた魅力項目の合計ポイント数を業界別で見ると、上位3位は、「損保・生保・商社」(17,488ポイント)、「食品」(16,407ポイント)、「電機」 (16,037ポイント)となりました。
 「損保・生保・商社」は他の業界と比較して、「財務的魅力」の割合が最も大きくなっています。昨今の値上がりラッシュなどにより社会・経済環境が不安定な中、収益基盤やビジネスモデルの安定性への関心が改めて高まっていることが要因の一つと推察されます。
  例えば商社では、人的資本にまつわる取り組みの報道も多く目にすることがありますが、そのような取り組みがこのランキングに表れていると考えられます。【図表10】

※2023年より、聴取業界を一部変更しております。

 

第8回 魅力度ブランディング調査 概要

■ 調査対象
全国の20~69歳の男女 計10,000人※20業界(200社)のいずれかに魅力を感じている人(各業界500人)。

 

 

■ 調査方法
インターネット調査

■ 期間
2023年7月14日~7月24日

■ 設問内容
魅力を感じる業界、魅力を感じる企業、魅力を感じた要素、魅力を感じた情報源、企業イメージなど

■ 調査対象企業一覧

 

本リリース上のスコア構成比(%)は小数第2位以下で四捨五入しているため、表において加減の結果が小数第1位で異なる場合や、合計が必ずしも100%にならない場合があります。

<お願い>
本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。

 

企業広報戦略研究所とは
(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称C.S.I.)

企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて
調査・分析・研究を行う、(株)電通PRコンサルティング内の研究組織です。
設立:2013年12月 所長:阪井完二
企業広報戦略研究所サイト http://www.dentsuprc.co.jp/csi/


魅力度ブランディング調査メンバープロフィル

■大澤 英介 企業広報戦略研究所 上席研究員
■木村 圭助 企業広報戦略研究所 上席研究員
■中尾 結花 企業広報戦略研究所 主任研究員
■田中 基貴 企業広報戦略研究所 主任研究員

【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社 電通PRコンサルティング 経営推進局 広報総務部
Email:info@dentsuprc.co.jp  https://www.dentsuprc.co.jp/