消費者庁設置関連3法が5月29日に国会で成立し、内閣府は6月4日に「設立準備室」を設置、早ければ本年9月にもいよいよ消費者庁が立ち上がります。
この「消費者庁」は、経済産業省や農林水産省への改善要請などに加え、企業などに対する業務改善や販売中止、さらには立入調査までできるなど、強力な権限を持っています。消費者行政を統一的に推進する初めての官庁の動向に、メディア各社も強い関心を持って見つめています。
さらに、消費者庁設置に伴い景品表示法、JAS法、個人情報保護法、消費生活用製品安全法、公益通報者保護法など、広報・PR業務においても関連性の深い法律(全29法)が、従来の所管庁から消費者庁に移管・共管されるとともに、改正作業も行われました(図1参照)。

特に景品表示法においては、法律の目的に「一般消費者の選択の自由」を確保することが明確化されました。さらに従来の「排除命令」が、「措置命令」と名称変更され、その実施主体が公取委から内閣総理大臣(実質的には事務方である消費者庁)に変更もされています。また、この措置命令の対象者に、景表法違反を行った企業のみならず、その企業が合併や分割がなされた後の承継会社等や、事業譲渡がなされた際の譲受会社も含まれることも明らかにされています。

  • (1)「消費者行政の司令塔」として、法令の権限を持つ各省庁に対し行政指導などの対応策を講じるように勧告する。
  • (2)消費生活にかかわる全ての問題について、法律の制定や改正について企画立案する。
  • (3)直接的に規制する法律がない「すき間事案」の場合、新設の消費者安全法に基づいて直接、企業などに立入調査を行う。
  • (4)全国の消費生活センターなどに寄せられた情報を分析し公開する。

図1:消費者庁が所轄する関係法令と主な改正内容

法律 主な改正内容
表示規制関係
景表法/JAS法/家庭用品品質表示法/食品衛生法/健康増進法/住宅の品質確保の促進等に関する法律
・消費者庁が、表示基準を策定。これを順守させるための命令は、消費者庁のみが権限を持ち、一元的に実施。
・立入検査、行政指導は、公取委、農水省、経産省、厚労省に行わせ、その結果を消費者庁に通知義務づけ。(必要な場合には、消費者庁が自ら立入検査を実施)
取引関係
特定商取引法/迷惑メール防止法/預託法
・消費者庁が法改正の企画立案を担うとともに、自ら、立入検査、命令を行う。
・特に、消費者トラブルの多い特定商取引法については、執行体制を経産省から消費者庁に移管し、地方の経済産業局を、消費者庁が指揮監督することにより、執行体制を一元化。
業法関係
貸金業法/割賦販売法/宅建業法/旅行業法
・消費者庁が、行為規制について、企画立案を担う。
・消費者庁は、業所管大臣の行う処分に関し、事前に協議を受け、必要な意見を述べる。そのために必要な立入検査は消費者庁が行う。二重行政を回避しつつ、消費者の目線を反映。
安全関係
消費生活用製品安全法/有害物質含有家庭用品規制法/食品衛生法/食品安全基本法
・安全基準の策定について、消費者被害の実態を十分反映するため、あらかじめ消費者庁が、当該基準を策定する大臣から協議を受ける。
・消安法の重大事故報告制度は、消費者庁が所管。製造企業等から消費者庁が報告を受け、迅速に事故情報を公表。
その他関係
消費者基本法/製造物責任法/消費者契約法/電子契約法/公益通報者保護法/個人情報保護法など
・内閣府本府から消費者庁に移管。
・消費者庁が改廃等の企画立案を担う。

また、かつては事前指導など密着した協調体制によって、予定調和を保ってきた官庁と民間の関係も、規制緩和とともに、緊張関係をはらむものと変わってきた。金融庁や経済産業省など官庁による民間企業への行政処分をめぐるニュースも途絶えることがない。

図2:消費者庁及び消費者委員会組織図(案)


企業は何を備えるべきか?

消費者庁設置によって、企業が順守すべき法律に大きい変化はありません。
しかし、個人情報保護法導入時などと同様に、新庁誕生にともない関連報道が活発に行われ、一般生活者の「消費者権利」に対する意識の変化、世論の変化が予測されます。
企業は、自社製品・サービスに対するお客様の評判(レピュテーション)などを把握する「社外情報察知力」の強化にくわえ、お客様目線の企業風土を強化する「インターナルコミュニケーション」の実施、さらには有事の際の「危機対応能力」などを早急に改善する必要性が高いと考えられます。

消費者庁対応プログラムの概要をご用意しています。こちらをご覧ください。