企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、企業と社員のエンゲージメントを深めるにはどのような要素が重要かを測定することを目的に、従業員100人以上の企業に勤めるビジネスパーソン1,000人を対象とした『第2回インターナルブランディング®調査』を、本年5月に実施しました。

 

   「第2回インターナルブランディング®調査」 結果ポイント  

1 6割超が自社に「貢献したい」一方、自社への「信頼」「愛着」「誇り」は約半数が欠如

 

●「自社に貢献したい」は“そう思う計”が61.1%で6割超。

●一方、自身の勤める会社に対して「信頼している」は“そう思う計”(48.4%)、「愛着がある」(同50.1%)、「誇りを感じている」(同51.1%)といずれも半数程

 

2 高エンゲージメント層は自身と自社のパーパスの合致によってモチベーションを維持

 

●勤務先の「制度や職場」、「業務に対するモチベーション」、「社内コミュニケーション」全項目において、自社とのエンゲージメントが高い層と低い層で50pt以上の大きな差。

●特に、「求められる社員像が自身の目指す姿に合っている」、「同僚や部下を思いやる風土がある」などを中心に、モチベーションやリレーションズに関する項目で大きなギャップ。

 

3 低エンゲージメント層の過半数が、退職・転職を検討

 

●コロナ禍での自社に対する意識の変化について、エンゲージメントが高い層と低い層では「会社や職場のことについての関心が薄くなった」、「退職や転職を考えた」等の項目で、高い層に比べて低い層が20pt以上高い。

 

4 コロナ禍でトップからのメッセージは低評価傾向。伝え方に工夫が必要

 

コロナ禍でトップからのメッセージは「好印象」27.9%。「なくてもよかった」「わずらわしかった」計52.9%

 

5 高エンゲージメント層が勤める企業は、6割以上でSDGsへの取り組みあり

自社のSDGsへの取り組み状況は、エンゲージメントの高い層の6割以上(62.6%)が自社で“取り組んでいる(積極的+まあ 計)”と回答。一方、エンゲージメントの低い層では、高い層の半数以下(25.6%)。

インターナルブランディング®モデル

 

「第2回インターナルブランディング®調査」は、左記のインターナルブランディング®モデルに基づいて設計されています。

「インターナルブランディング®」は、株式会社電通PRコンサルティングの登録商標です。

※詳細は下記に記載

 

 


 

調査結果

本調査では、自身の勤める会社に対して、「信頼している」、「愛着を感じている」、「誇りを感じている」、「貢献したい」の全ての項目において、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した人を、会社との「高エンゲージメント層」と設定し、全て「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と回答した人を、会社との「低エンゲージメント層」と設定し、分析を行いました。【図表1】

 

 

1.6割超が自社に「貢献したい」一方、自社への「信頼」「愛着」「誇り」は約半数が欠如

ビジネスパーソン1,000人が自身の勤める会社に対して「信頼しているか」を尋ねたところ「とてもそう思う」(7.8%)と「まあそう思う」(40.6%)で計48.4%と半数を切る結果となりました。

さらに、「愛着を感じているか」(同50.1%)と「誇りを感じているか」(同51.1%)も半数程度で、信頼、愛着、誇りを感じている人とそうでない人は半々であることが分かりました。

一方、「自社に貢献したい」は「そう思う」と「まあそう思う」計が61.1%で、6割超の人が自社に貢献したいと考えていることが分かりました。さらに、「今後も自社で働き続けたい」についても、“そう思う・計”(59.6%)が6割となっています。 【図表2】

2.高エンゲージメント層は自身と自社のパーパスの合致によってモチベーションを維持

勤務先の「制度や職場に関する要素」、「業務に対するモチベーションに関する要素」、「社内コミュニケーションに関する要素」についてそれぞれ聞いたところ、全項目においてエンゲージメントが高い層と低い層で大幅な差がみられました。

高い層と低い層で最も差が大きく出た項目は、業務に対するモチベーションに関する要素の「求められる社員像が自身の目指す姿に合っている」で、エンゲージメントが高い層で「そう思う・計」が77.2%だったのに対し、低い層では6.5%にとどまりました。エンゲージメントの高い層は、仕事と自分の理想像が合致していることがうかがえます。

次いで差が大きくなったのは、「同僚や部下を思いやる風土がある」(70.4pt差)、 「仕事を通して達成感や自己成長が感じられる」(69.5pt差)、 「仕事を通じてやりたいことや好きなことができている」(65.7pt差)など、モチベーションやリレーションズに関する要素が続きました。そのほかの項目も、ほとんど全ての項目で50pt以上の差があり、エンゲージメントを強化するには、社員の仕事に対するモチベーションを高く維持し、社内のリレーションを良好に保つ風土の醸成が重要といえます。【図表3】

特に、自社への信頼や愛着を醸成し、エンゲージメントを高めるには、自身と会社のパーパス合致によりモチベーションを向上させることが重要であるといえそうです。

 

 

 

 

3.低エンゲージメント層の過半数が、退職・転職を検討

新型コロナウイルス感染拡大に伴い働き方が大きく変わった人も多い現在、コロナ禍における自社への意識の変化について聴取しました。その結果、エンゲージメントの低い層は、高い層に比べて、自社に対する信頼が大きく揺らいでいることが判明しました。

エンゲージメントが高い層と低い層で、最も大きな差があったのは「会社や職場のことについての関心が薄くなった」(25.8pt差)です。続く「退職や転職を考えた」(24.8pt差)は、エンゲージメントが低い層は半数(50.3%)が“あてはまる”と回答している一方、エンゲージメントが高い層はおよそその半分の割合(25.5%)にとどまりました。そのほか、「従業員に対するサポートが不十分だった」(21.1pt差)、「会社の成長性や将来性に不安を感じるようになった」(15.5pt差)など、いずれもエンゲージメントが高い層と低い層とで大きな差が見られました。 【図表4】

自身と会社とが強いエンゲージメントで結ばれていると、コロナ禍のような非常事態下でも、自社に対する信頼が揺らがないことが分かりました。

 

4.コロナ禍でトップからのメッセージは低評価傾向。伝え方に工夫が必要

続いて、コロナ禍における自社のサポートや対応について聞きました。
評価の高かった順に見ると、 「あって、好印象を受けた」で最も高かったのは「働き方の再構築(リモート化、出社制限など)」(32.5%)で、以下、「上司からの声かけや気遣い」(28.7%)、「業務の効率化」(28.5%)、「トップからの社内に向けたメッセージ」(27.9%)と続きます。
一方、実施率1位の「トップからの社内に向けたメッセージ」は、「あったが、なくてもよかった」(39.5%)、「あったが、逆にわずらわしかった」(13.4%)計で過半数(52.9%)となっています。 【図表5】

トップから従業員に向けたメッセージは、一定の評価を受ける一方で、伝え方や伝える内容によっては不要なものと捉えられる傾向が見て取れます。自社への誇りや愛着が強いエンゲージメントの高い従業員を増やすためには、緊急事態においても、信頼を高めるメッセージを発信することが重要といえそうです。

 

5.高エンゲージメント層が勤める企業は、6割以上でSDGsへの取り組みあり

コロナ禍によって、働き方や自社への価値観が大きく変わる中で、企業の価値も変わっていることが予想されます。

そこで、自社のSDGsへの取り組み状況について聞いたところ、エンゲージメントの高い層では、6割以上(62.6%)の企業で“取り組んでいる(積極的+まあ 計)”と回答しました。一方、エンゲージメントの低い層では、高い層の半分以下の割合(25.6%)にとどまっています。 【図表6】

このことから、企業が社会課題への解決に取り組むことは、自社に勤める従業員へもエンゲージメントを高め、自社の社会的な価値も高めることがうかがえます。さらに、自社の社会的な価値を従業員に伝えることで、従業員の自社へのエンゲージメントを高めることも期待できます。

 

インターナルブランディング®モデル

インターナルブランディング®は、2003年に電通PRコンサルティングが商標登録をしています。「組織内部で課題を共有化し、一つのビジョン(目標)に向かって、同じ意識で一体となって行動していくことにより、人々をひきつけるパワーを生み出し、組織の価値を高めること」でブランディングする、という考え方です。

この考え方とこれまでの実績、さらに「インターナルブランディング®調査」の結果をベースにして、新たに「インターナルブランディング®モデル」を開発しました。このモデルは、エンゲージメント※を強化するキードライバーが「理念」であり、それを下支えする要素として、「Working Condition」「Motivation」「Relations」の三つがある、という考え方に基づいています。

※本リリースでの「エンゲージメント」とは、企業と社員の絆を表し、本調査では、「信頼」「愛着」「誇り」「貢献」で定義しています。(【図表1】参照)

調査概要

調査対象:従業員100人以上の企業に勤める全国の20~69歳のビジネスパーソン        男女それぞれ500人ずつ 計1,000人

調査方法/期間:インターネット調査/2021年5月21日~25日

調査内容:自分の勤める会社に対する意識と理念に対する状態を調査

  • 勤める会社への意識と企業理念の浸透度との関係
  • それらに有効な取り組み要素
  • 理念浸透に効果的な広報ツール
  • コロナ禍での自社のサポートや対応
  • 自社のSDGsへの取り組み など

※掲載している図表データは小数点以下第2位を四捨五入しています。数値の差分を計算した場合などは、記載している数値とズレが生じる場合があります。

 企業広報戦略研究所とは  (Corporate communication Strategic studies Institute : 略称C.S.I.)

企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究を行う、(株)電通PRコンサルティング内の研究組織です。

2013年12月設立。所長:阪井完二

企業広報戦略研究所サイト https://www.dentsuprc.co.jp/csi/


お願い

本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。

インターナルブランディング®調査メンバープロフィール

 

大川 陽子(おおかわ ようこ) 

企業広報戦略研究所 上席研究員

戸上 摩貴子(とがみ まきこ) 

企業広報戦略研究所 上席研究員

 

陳妃史(ちん ひふみ) 

企業広報戦略研究所 上席研究員

 

生井 達也(いくい たつや)

企業広報戦略研究所 主任研究員

 

 

【本件に関するお問い合わせ先】

株式会社電通PRコンサルティング 経営推進局 広報総務部

Email:info@dentsuprc.co.jp  TEL:03-6263-9000

株式会社電通PRコンサルティングでは、新型コロナウイルス対策の一環として、現在リモートワークを実施しておりますので、同期間のお問い合わせは、Eメールにてお願いいたします。