情報収集やプレスリリースの構成検討、企画のアイデア出しに生成AIを活用する人が増えています。
一方で、生成AIを利用してみて「企画がどれも似ている」「自社ならではのニュースの切り口が見つからない」と感じることはないでしょうか。
生成AIをPR戦略の立案に生かすには、指示文の工夫だけでは不十分です。自社独自の情報と、適切な方法で把握した報道や競合動向を組み合わせ、社会やメディアの関心との接点を探り、その分析結果を基に人が戦略と実行を判断することが欠かせません。
本記事では、広報における生成AI活用の現状と、アウトプットの質を高める3つのステップを解説します。さらに、生成AIの回答で自社の情報が適切に理解・紹介されることを目指すGEO(Generative Engine Optimization:生成AI最適化)を踏まえ、企業の情報発信を考えます。
日本経済新聞社情報サービスユニットが広報業務に携わる200人を対象に実施した「NIKKEI KAI 広報AI調査」(2026年9月、以下「広報AI調査」)によると、広報業務でAIを「ほぼ毎日」使う人は32.5%、「週に数回」は29.5%。合わせて62.0%が週に数回以上AIを活用しています。

図1 広報担当者のAI利用頻度
出典:日本経済新聞社情報サービスユニット「NIKKEI KAI 広報AI調査」(2026年9月)、N=200
同調査では、情報収集や原稿作成をはじめ、幅広い広報業務でAIの活用経験が確認されています。主な用途は次の通りです(回答者192人、複数回答)。
• 情報収集・分析:情報収集・ニュース/業界動向の把握(62.5%)、競合・市場・世論の分析(32.3%)、報道分析(23.4%)
• 原稿作成・校正:プレスリリースや原稿の表現チェック・校正(34.9%)、プレスリリースの下書き作成(31.3%)
• 記録・発信の補助:会議・取材・説明会の文字起こし・要約(22.9%)、SNS投稿文・オウンドメディア記事の作成補助(18.2%)
• 効果測定:広報効果測定・レポート作成(14.1%)
※本調査は、生成AIを含むAIツールの活用状況を尋ねたものです。
前述の通り、3割程度の広報担当者が、プレスリリースの下書きの作成に生成AIを利用しています。この3割の方はもちろん、そこに含まれない方の中にも、プレスリリースの切り口案を生成AIに相談したことがある人はいるでしょう。しかし、出力内容の平均点は高いのに自社だからこその切り口の提案ではないため、なんとなく使いづらいという経験をしている人も多いのではないでしょうか。
実際に、「広報AI調査」では、企画・戦略へのAI活用にメリットを感じる73人のうち38.4%が「出力内容が一般論・ありがちな内容になりやすい」と回答しました。
生成AIは、学習した情報や入力された情報を基に回答を生成します。自社の開発背景や現場の声を参照できなければ、他社にも当てはまるような提案になりやすくなります。自社だからこそ発信できる切り口を得るには、プロンプトの工夫に加え、参照情報を充実させることが重要です。

図2 企画・戦略活用層が感じるAI活用の課題
出典:日本経済新聞社情報サービスユニット「NIKKEI KAI 広報AI調査」(2026年9月)。企画・戦略活用層 n=73、それ以外 n=119
広報の企画では、「自社が伝えたいこと」だけでなく、「なぜ今、社会やメディアがその情報を知るべきなのか」という視点が必要です。電通PRコンサルティングでは、コミュニケーションプランを検討する際に、世の中の関心・問題と、企業やブランドの特徴・強みが重なる接点を捉えることを重視しています。
例えば、新サービスの発表に、業界の課題や利用者の実態を示す独自調査を組み合わせれば、機能紹介にとどまらず社会的な意義や独自性を伝えやすくなります。この接点を探るために、自社の一次情報に加え、報道・業界動向の分析や、SNS上の声の分析、現場での観察・取材を通じて、生活者の関心や変化を捉えていきます。

図3 社会・メディアの関心と自社の強みが重なる接点
出典:電通PRコンサルティング「エクリプスモデル」
それでは、実際にどのようにこの重なる部分を見つけていけばいいのでしょうか。
ここでは自社の一次情報を整理し、報道・競合分析の示唆と組み合わせ、発信の切り口やアウトプットへ落とし込む3つのステップを活用して、生成AIを広報戦略の立案に生かす方法を解説します。

図4 自社の一次情報と報道・競合分析を発信企画につなげる
まず、独自調査の結果、商品・サービスの開発背景、担当者へのインタビュー、顧客の声、過去のプレスリリースなど、自社にしかない情報を整理します。
これらの情報を生成AIに参照させ、「ターゲットの課題」「特徴的な事実」「自社ならではの強み」「広報活動への示唆」を整理させると、企画の土台となる「自社の伝えるべきこと」が見えてきます。
例えば、次のようなプロンプトで指示します。
プロンプト例
「添付した自社独自の調査結果や関連資料を基に、ターゲットの課題、特徴的な調査結果、自社ならではの強み、広報活動への示唆を抽出・整理してください。各項目の根拠となる資料も示してください」
根拠や独自性が不足する場合は、追加の調査や情報収集で一次情報を補います。こうした情報を、生成AIが参照できる形式の資料としてまとめます。
なお、社内情報の入力に当たっては、機密情報の取り扱いや利用環境を必ず確認するようにしてください。
次に、世の中で何が注目され、自社や競合がどのような文脈で報じられているかを分析します。報道分析は、担当者自身が記事を確認する方法のほか、必要な権利処理がなされた専門の生成AIサービスを活用する方法があります。
例えば、日本経済新聞社の法人向け生成AIサービス「NIKKEI KAI」では、権利処理済みの収録記事を基に、企業・業界の報道傾向や競合との違いを分析できます。
報道分析で得られた示唆は、「どのテーマが、どのような文脈で報じられているか」が分かるレポートにまとめます。生成AIの参照情報として使う際は、元の記事や分析結果の利用条件を確認します。
最後に、STEP1で整理した自社の一次情報と、STEP2で得た報道・競合分析の示唆を、利用が認められた範囲で生成AIに参照させます。自社の強みと社会・メディアの関心が重なるテーマを検討し、発信の切り口を具体化します。
資料の添付など、利用環境に応じた方法で参照情報を与え、発信テーマの提案やプレスリリースの下書きの作成を指示します。自社の事実と報道の文脈を判断材料として渡すことで、自社ならではの提案を得やすくなります。
発信テーマが決まったら、利用権限のある過去のリリースや企画書も参照させ、自社らしい表現に整えます。プレスリリースなら、見出し構成・文体・必須項目をプロンプトで明示する方法も有効です。生成された内容は人が事実関係やニュース価値を確認し、採用する案を判断します。
生成AIに関するトピックスとして、もう一つ広報担当者が忘れてはならないのが、生活者が得る情報の入手経路の変化です。
GEOでは、公式サイトに加え、ニュース記事や第三者の解説記事など、生成AIが参照する情報への目配りが必要です。そのため、企業が社会やメディアからどう語られるかを考えるPR活動とも深く関わります。ここでは、引用元の分析から情報発信、効果検証までの流れを紹介します。
生成AIで検索した際に自社や商品、サービスがどのように語られているのか、何番目に表示されるのかなどの現状把握をするためには、どのような質問や文脈で生成AIに紹介されることが望ましいのかを定め、調査するプロンプトを設計します。複数の生成AIに同じ質問を入力し、自社・競合への言及や引用元を比較します。
一つの質問への回答だけで判断せず、PRの見地から複数の質問や切り口を設計し、専門ツールなどで体系的に調査するのがおすすめです。報道の量・内容・文脈とも照らし合わせ、発信の課題や機会を捉えます。

図5 GEOの初期分析で確認する4つの工程
出典:電通PRコンサルティング
回答内容や引用元の分析から得た示唆を基に、次のような施策を検討します。
• 特定の媒体が引用元として多く見られる場合は、その媒体の関心に合う情報提供やプロモートを強化する。
• 公式サイトやオウンドメディアが引用される傾向がある場合は、自社発信で補うべきテーマや情報を整理する。
• 競合のコンテンツが引用される場合は、掲載情報や構成を比較し、自社の強みを伝える内容の充実を図る。
プレスリリースも、生成AIが参照する公開情報の一つです。実際に引用されているリリースのデータや根拠、構成を分析し、自社のリリース制作に生かすことも重要です。
ただし、引用元は質問内容や時期、利用する生成AIによって変化します。プレスリリースの公開やメディア掲載が、必ず回答への引用につながるわけではありません。
メディアに届く発信と、生成AIに適切に参照される情報の整備を一体的に進め、発信後はメディア露出と生成AIでの言及・引用状況を評価します。分析で得た示唆をレポートにまとめ、利用条件に従って社内の生成AIの参照情報にも加えることで、次の企画やコンテンツ制作に生かせます。
図6 分析から情報発信・効果検証までをつなぐGEO時代のPR活動
出典:電通PRコンサルティング
生成AI時代の広報には、生成AIを使い業務の効率を向上させることはもちろん、企画の質を高めることと、生成AIに適切に参照される情報を継続して発信することの両方が求められます。独自の一次情報を整え、報道・GEO分析の示唆を企画と発信に反映し、その結果をきちんとレビューして、次の施策につなげることが重要です。
電通PRコンサルティングでは、企業の課題や活用段階に応じて、下記のような支援を組み合わせ企業の生成AI×広報活動を支援しています。
• 生成AI×PR活用コンサル: 業務の棚卸しから、研修、導入・定着まで支援
• GEO分析・戦略設計: 生成AIでの言及・引用元と報道を横断して分析し、発信戦略を策定する
• 一次情報・コンテンツ制作: 一次情報が足りない場合の独自調査の企画・実施から、リリースやオウンドメディアの記事制作、社内の生成AIの参照情報の整備までを支援
• メディアプロモート: 媒体の関心に応じた切り口設計、記者への情報提供、取材誘致、露出の効果検証を実施
「社内での活用が進まない」「何を発信すべきか分からない」といった課題から、PRと生成AIの双方に知見を持つコンサルタントが、戦略設計から実行・改善まで伴走します。ぜひお気軽にご相談ください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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