昨年11月3日に行われた2005年IPRA「ゴールデン・ワールド・アワード」授賞式のため、初冬のロンドンを訪れた。この季節のわりには比較的暖かく、雨模様のロンドンというイメージを払拭するかのように、滞在中は天候にも恵まれた。クリスマスシーズン直前の時期であったためか、街全体が活気にあふれ、やたら人通りの多さが目に付いた。その賑わいはまさしく東京の繁華街以上の様相であり、日本とは対照的にイギリス経済の好調を物語っているかのように思えた。

さて、今年のIPRA授賞式は、One Whitehall Placeという場所で開催されたが、ロンドンの官庁街の一角にあり、国会議員会館の図書室のようなところを貸切って行われた。重厚かつおごそかな雰囲気につつまれた会場であったが、すでに3年連続授賞の花上プロデューサーには余裕すら感じられ、その場の雰囲気にのまれることなく自然になじめたように思えた。会場受付ではIPRA事務局の方から「日本からの電通PRさんですね」との満面の笑み。入場するやいなやIPRA会長や審査委員とおぼしき各国の代表からの友好的な挨拶。この暖かな対応が授賞式ではごく普通のことかと思っていたが、この歓待こそまさしくその日一番の“サプライズ”の伏線であったことが後でわかることになる。

授賞式ディナーのテーブルには、全23部門の最優秀賞を獲得した各国参加者が各テーブルに振り分けられ、私たちはトルコから参加したメンバーと同席となった。このPR会社は、トルコ国内で日本企業の扱いを持っているとのことで、片言の英語を使いながら異文化コミュニケーションを図ることができた。
ディナーをとりながら、全23部門の授賞式は粛々と進められ、私たちは21番目「Health Organizations」部門の最優秀賞を授与された。そして、すべての中からグランプリ授賞の発表が行われることになっていたが、当然ながら私たちには関係のないことと思い、まさしく最後のデザートのアイスをほおばっていた。その瞬間、「From Japan, “Dementia Debunked”・・・」一瞬何が起こったのかもわからず、ただ唖然としながら祝福の歓声がこだまする中をメインステージに再度登壇することになった。まさに喜びよりも驚きが勝った場合には、言葉にならないということを肌で体感した。

審査委員長のシーラ・オサリバン氏(オーストラリア)のコメント

「審査会では40名の審査委員が満場一致で当プロジェクトを推薦した。当プロジェクトは全世界のPRパーソンが参考にすべき取り組みであり、特に調査プロジェクトがエクセレント、素晴らしい。」

授賞した花上プロデューサーのコメント

「PRとはパブリックリレーションズの略で、広報のことです。企業や団体が社会とのよりよい関係を作っていくときに欠かせない活動で、双方向のコミュニケーション、つまり情報発信だけでなく、相手の声を聴くことがとても重要です。今回の授賞事例はステークホルダーとなる人々の意識や実態を探った「調査研究」で、まさに広報の基礎的な活動といえます。私自身、調査部門を長く経験してきたこともあって、世界一の評価をいただいたことをとても光栄に思っています。我々は日頃から企業や団体の広報活動を支援していますが、日本における広報の認識は欧米に比べてかなり低く、今回の授賞を機に、「PRのPR」を積極的に行うことで、更に広報の重要性やニーズが高まればと期待しています。」