2025年に大阪・関西万博が開催されます。東京五輪が閉幕し、今後は国内の興味・関心が徐々に「万博」に向いていくことが予想されます。
そんな中、昨年10月から今年3月まで開催されていた「2020年ドバイ国際博覧会(以下、ドバイ万博)」では、ウクライナ館の展示に大きなインパクトがありました。メディアとしてのパビリオンの力を世界に示したとの声も聞かれます。

ロシアによる軍事侵攻以前のウクライナ館の展示は、国の資源である小麦をはじめ国内産業を紹介する内容中心でしたが、軍事侵攻が始まった途端、速やかに展示内容は変更されウクライナ館そのものが“支援を求めるメディア”へと変わり、その早さは他のパビリオンからみても「一体いつ準備したのか?」と驚くほどのスピード感だったと他館関係者は言います。
「Stand with Ukraine」とのメッセージとともにゼレンスキー大統領のボードが立ち、来館者が自由に画像をシェアできるコーナーが設置され、多くの来場者が書き寄せたウクライナへのメッセージが壁一面に所狭しと貼り付けられた様子は、メディア報道を通じ世界中の人々が目にしたのではないでしょうか。

今回のドバイ万博では192カ国が出展、コロナ禍でも前回(2015年ミラノ国際博覧会2100万人)を超える2300万人が来場しました。

ウクライナのパビリオンでどれだけの支援が得られたのか、具体的な数字は分かりませんが、ロシアの侵攻直後から世界中でこのウクライナ館の展示内容が紹介されたことを考えても、その影響力、情報発信力はかなり大きかった、といえます。

海外での広報活動を行う上で、ターゲットが細分化されセグメントが難しい昨今、海外での情報発信は大変複雑化しており、一つのコンテンツで同一の印象を複数の人々に与えることは大変難しいといわれています。

世界中から押し寄せる多国籍の来場者に対してダイレクトに訴えられる万博、パビリオンの持つ可能性を改めて再認識させたドバイでのウクライナ館。その取り組みは、大阪・関西万博を控える日本においても、大きなヒントを与えてくれたといえるのではないでしょうか。

※画像:「ゼレンスキー大統領」パネル