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 昨年の10月9日、米カリフォルニア州では、大手小売業者に対し、玩具や育児用品に関し、性別を区別しない売り場を設けることを義務付ける法律が成立しました。2024年1月1日から施行される予定です。従来の「男子向け・女子向け」売り場を禁止してはいないものの、併設して性別にとらわれないエリアを設け、男女の区別がない製品の陳列を求めています。
 2024年初頭までに、カリフォルニア州内で500人以上の従業員を抱える小売業者は、性別を区別しない売り場を設けなければならなくなります。違反した店舗には、1店舗につき最初の違反で最高250ドル、その後の違反には最高500ドルの罰金が科される可能性があります。
 こういった義務付けをするのは、アメリカにおいてカリフォルニア州が初となりますが、すでに一部の小売業者は実施しています。2015年には、ディスカウントストア大手のターゲット(本社:ミネソタ州)が子供用品売り場に性別を示す表示をやめています。

 

玩具メーカーでも商品のジェンダーニュートラル化を推進

レゴ©2022 The LEGO Group

 こういった動きは、小売店側だけではなく、メーカー側にも広がりつつあります。世界最大の玩具メーカーであるレゴ社(本社:デンマーク、ビルン)では製品の「女の子用」「男の子用」という表示を廃止し、自社サイトで性別による検索ができなくなっています。さらに、2021年 10月11日配信の同社のプレスリリースによると、同社が実施した調査において、男児の71%、女児の42%が異性向けの玩具で遊ぶとからかわれるのではないかと心配していると回答しました。また、親の76%が「息子にレゴで遊ぶことを勧める」と回答したのに対し、「娘に勧める」と回答した親は24%にとどまりました。レゴ社では、ジェンダーに関わる偏見やステレオタイプに基づかない製品づくりやそのマーケティングを引き続き行っています。
 レゴ社以外にも複数の玩具メーカーが、製品からジェンダーの偏見を取り除く試みを行っています。「Mr.ポテトヘッド」で知られる米ハズブロ(本社:ロードアイランド州)は、昨年2月にブランド名から「Mr.」を削除し、このプロダクトをジェンダーニュートラルにしました。一方、バービー人形で知られる米マテル(本社:カリフォルニア州)も、2019年にジェンダーフリーの人形のラインを立ち上げています。また、米玩具協会は2017年、性別ごとのベストトイ賞の授与を中止し、「男の子」「女の子」の分類から、「今年のアクションフィギュア」「今年の人形」といった分類に切り替えました(アクションフィギュアは従来男の子向けとされてきました)。同協会は「市場の現状と両親のショッピング行動、実世界の現実を反映した措置」と説明しています。こういった動きは日本でも見られ、日本玩具協会の「日本おもちゃ大賞」では、2021年から従来の「ボーイズトイ/ガールズトイ部門」が廃止され、新たに「キャラクター・トイ部門」として統一されました。

 

日本企業に求められるものは?

 おもちゃ業界に限らず、企業は生活者の多様化するニーズに合わせ、商品の製造、販売、マーケティングなど、あらゆる段階において、ジェンダーバイアスを生むようなアプローチを避けなければなりません。ジェンダーにとらわれることなく、生活者が欲しいと思ったものを心理的抵抗なく、選びやすい場所で買えるようにすることが重要となります。PR活動においても、特定の商品を女性向け、男性向けと限定せず、ニュートラルな情報発信が求められます。商品のパッケージデザイン、広告、報道資料、オンラインショッピングサイトなど、起用しているモデルや表現、色使いまで、ますます注意が必要となるでしょう。
 こういったことは企業ごとの努力としても必要ですが、業界団体、そして時にはアメリカの例のように、自治体としても推進していくことが求められます。

電通PRコンサルティング 藤井京子