『経済広報』(2016年9月号)に企業広報戦略研究所の北見上席研究員の寄稿記事が掲載されました。

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企業広報戦略研究所では、日本企業の広報活動の実態と課題を把握するため、2014年の「第1回企業広報力調査」に続き、2016年2~4月にかけて、「第2回企業広報力調査」を実施した。日本の上場企業3664社を対象に実施し、前回を上回る533社からの回答を得た(有効回答率:14.5%)。広報責任者の皆さまの大きな関心をいただいた。そもそも広報力調査は、広報責任者の現場の悩みを解決しようという試みから始まっている。「自社の広報活動が現状で十分なのか?」「業界・競合相手と比べて自社の広報は遅れていないか?」などの悩みに対して、日本企業の広報力を比較し、分析することに役立てていただこうと始めたものである。
広報活動を「情報収集力」「情報分析力」「戦略構築力」「情報創造力」「情報発信力」「関係構築力」「危機管理力」「広報組織力」という8つの軸で分類した「広報活動オクトパスモデル」で分析し、スコア化することで、広報活動を見える化することができる。

 

 

スコアを上げた「運輸・倉庫」、 スコアを下げた「電気機器」

図1実際に、スコア化して広報力を見える化し、業種別に分類したものが右上の表である。「電力・ガス」「食料品」「金融・証券・保険」は、前回(2014年実施)に引き続きベスト3に入っている。

これら3業種に加え、「運輸・倉庫」が大きく躍進したのが特徴的である。特に「情報発信力」が前回から10ポイント以上強化された。「運輸・倉庫」の業種では、外国人観光客の急増により航空、鉄道などの運輸業では、情報発信の機会が多くなっている。また、倉庫・物流業においてもインターネットでの電子商取引が活発化しており、情報発信の機会が増えるとともに、情報漏えい対策など安全・安心に配慮する広報活動も必要になってきている。「危機管理力」のスコアも高い水準にある。
また、反対に前回から大きく順位を下げたのが、「電気機器」。特に「戦略構築力」は前回と比較して10ポイント以上得点を下げている。日本企業勢の不振が聞こえてきているが、このようなときこそ戦略的な広報が経営をサポートできるはずである。広報戦略は「広報目標達成に向けたシナリオ」である。広報目標=ありたき姿に向かってどのように進んでいくかの道筋を持って広報を行うことが重要である。

 

(企業広報戦略研究所((株)電通パブリックリレーションズ内)上席研究員 北見幸一)