企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)は2022年2月15日に、「ESG経営×企業価値セミナー ~『ESGレピュテーション調査』から読み解く企業の『価値づくり』とは~」を開催しました。当日は企業の役員、社外取締役、経営企画、サステナビリティ、グローバルコミュニケーション、広報、マーケティングなど多様な部門の方々にオンラインでご参加いただきました。

講演を行った
一橋大・伊藤名誉教授(左)と企業広報戦略研究所・阪井(右)

本セミナーでは、一橋大学CFO教育研究センター長を務められている同大名誉教授の伊藤邦雄先生にご登壇いただき、企業価値を評価する視点として近年急速に定着してきたESGをテーマに、企業経営におけるESGの現在位置と展望、そして企業が今後ESGをいかに実践、活用していくべきかについて、大変示唆に富んだお話を講演いただきました。特に、ROEとESGの相互浸透効果や、人的資本情報開示の重要性、さらに今後のESGや非財務情報・無形資産のコミュニケーションとしては「表現方法の競争が重要になる」というご指摘も頂きました。

伊藤先生には「価値づくり」広報の重要性に共感いただき、研究所の近著『新・戦略思考の広報マネジメント』においても、「統合思考」や「インパクト・コンシクエンス(帰結)」の思想が広報部門には必要であることなどを解説いただいたご縁もあり、今回のご登壇が実現しました。

続いて、企業広報戦略研究所所長の阪井完二より、2021年に開発した「ESGレピュテーション」モデルに基づく20業種200社の調査結果を基に、企業のESGへの取り組みと課題を実例を挙げながら解説し、企業の「価値づくり」につながるESGコミュニケーションの目指すべき方向性について、説明を行いました。

阪井の講演のポイントは以下のとおりです。
・ESGは情報開示(ディスクローズ)から、評判獲得(レピュテーション)の時代になった。
・株主第一主義の時代から、ステークホルダー経営の時代に変化してきたことも影響。
・企業広報戦略研究所が2021年に新たに開発した「ESGレピュテーション」モデル。
・E、S、Gそれぞれ8項目、計24項目について1万人に調査。個人投資家を含む多様なステークホルダーによる評判(レピュテーション)を把握。
・経済的価値、社会的価値との相関ではガバナンス(G)項目を多く含む「インテグリティ因子」が重要。
・今後のESGコミュニケーションの三大ポイント。①インテリジェンス(情報) ②プロアクティブ(能動的) ③コンシクエンス(帰結) 。
・これらを切れ目なく回す「価値創造サイクル」が重要になる。

 

 

当日は、著名な伊藤先生に直接コミュニケーションできるまたとない機会でもあり、レクチャー後の質疑応答では「ESGレピュテーション調査」の結果についての感想や、「コンシクエンスとは?」などの熱心な質問が寄せられ、時間の許す限り丁寧にご回答いただきました。

企業の価値を測るには従来の「財務情報」に加え「非財務情報」が重要であることへの認識が一般化してきた中、企業価値の向上を目指す企業にとってESGの役割は極めて重要であること、そして価値向上の実現に向けESGコミュニケーションの必要性とその在り方について、理解を深める場となりました。

参考データ:『2021年度 ESG/SDGsに関する意識調査』 
企業広報戦略研究所 https://www.dentsuprc.co.jp/releasestopics/news_releases/20210928.html