各国の政治・経済動向が相互に影響を与えるグローバル社会において、諸外国の政策を早期に把握する必要性が高まっています。こうした背景を受け、当社は米国最大のアジア研究を専門としたシンクタンク「全米アジア研究所」(The National Bureau of Asian Research、以下NBR)と米国の対日経済政策の分析、対応・体制強化に関する協力関係を構築し、『ワシントン政策分析レポート』 を作成しております。

本レポートは、米国のアジア外交専門家と、当社のパブリックアフェアーズ専門家において11月にオンライン開催された経済政策ラウンドテーブル(円卓会議)に基づいております。
『米国の対日・対中政策展望~貿易、テクノロジー、環境』と題した今回のレポートでは、バイデン政権における通商政策の見通しを始め、米国におけるビックテック企業規制、サイバーセキュリティ、気候変動対策の最新動向についてまとめております。

 

■エグゼクティブサマリー

1. 米国の通商政策は停滞
貿易政策に関するバイデン政権の動きは、当初の予測通り、全体的に緩慢である。USTR(米通商代表部)のトップにキャサリン・タイが就任し、彼女は通商問題の専門家として期待されたが、今のところは評価に値する活躍はない。米中貿易・米日貿易において何を目指すのかは、いまだ不透明である。

2. 中国の社会・政治環境は“不確実”
中国の現在を表す言葉は“不確実”であり、不確実には三つの領域がある。一つ目は事業環境であり、二つ目はより幅広い経済における不確実性である。三つ目は、アメリカやその他の近隣諸国との緊張関係である。中国企業とビジネスを行っている日本、アメリカ、韓国などの企業は、難しい時期に直面しており、これらの不確実に対する予測と対応が難しい。

3. ランサムウェアの脅威を社会が認識
米国では、市民生活に直接影響を及ぼすサイバー攻撃への関心が高まっている。2021年5月、米東海岸のインフラを担う最大規模のガスパイプラインが、ランサムウェア攻撃によって運転停止に追い込まれ、生活に大きな影響を与えた。米国のインフラやライフラインの85%は民間企業が扱っており、今後、セキュリティの強化やインフラの建て替え、強靱化が大きな課題となっている。