『経済広報』(2017年2月号)に企業広報戦略研究所の長濱主任研究員の寄稿記事が掲載されました。

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スコアを上げた「情報収集力」「情報発信力」「情報創造力」 (2014年/2016年)

第6回は、日本企業の広報力の変化について解説する。
企業広報戦略研究所では、2014年と2016年に「企業広報力調査」を実施した。調査時には、広報活動の取り組みに関する80問の設問を基に、
「情報収集力」「情報分析力」「戦略構築力」「情報創造力」「情報発信力」「関係構築力」「危機管理力」「広報組織力」の8軸で評価する
「広報オクトパスモデル」を用いて、企業の広報力の診断を行っている。上記の8つの中から、この2年間でスコアを伸ばした広報力を紹介したい。

図1は、2014年と2016年の「企業広報力調査」のスコアの変化を図示したものである。スコアを伸ばした広報力は、上位から「情報収集力(+6.4)」「情報発信力(+5.4)」「情報創造力(+4.7)」であることが分かる。なお8つのスコアを平均した「総合評価」は、2014年の29.6から2016年の32.6へと+3.0伸びているため、上記の3つの力は、この2年間で平均以上にスコアを伸ばしているといえる。

 

図2

 

回答率が上昇した企業の取り組み (2014年/2016年)

それでは、各広報力のスコアを引き上げたのは、どのような広報活動だろうか。

図2は、「情報収集力」「情報発信力」「情報創造力」の評価軸に含まれる広報活動の中から、2年間で回答率が5ポイント以上伸びた項目の抜粋である。
この2年間で対メディアの取り組みだけでなく、法規制や行政に関する情報収集(情報収集力)や、事業活動・CSR(企業の社会的責任)活動の企画実施(情報創造力)など、広報活動の領域が拡張しつつあることが分かる。
また、自社Webメディア、ソーシャルメディア、ワイヤーサービス(情報発信力)や、デジタルの特性に合わせた広報素材・情報づくり、バイラルムービー・動画(情報創造力)など、デジタル対応の活動の充実が重点的に図られている。PRメッセージ作成の体制や、広報戦略に沿ったメッセージ策定(情報創造力)のスコアも伸びている。
自社の広報力の強化を図る際には、メディア対応のみならず、より幅広いステークホルダーを対象とした活動や、デジタル対応も含めた広報力を強化していく必要があるだろう。また、戦略的なメッセージ策定の重要性も踏まえる必要がある。

図1

筆者

 

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長濱 憲(ながはま けん)

電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略部シニア・コンサルタント兼
企業広報戦略研究所主任研究員。1998年学習院大学経済学部卒業。同年電通パブリックリレーションズ入社。
2013年から東京大学大学院学際情報学府に在学。