2016年2月24日、日本取引所自主規制法人から、「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」が発表されました。これは、近年多発する上場企業の不祥事において、その企業の対応が不十分であるケースが目立つため、日本取引所グループが対応や行動の原則を策定したものです。具体的な行動原則としては以下の4つが挙げられています。

① 不祥事の根本的な原因の解明

② 第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保

③ 実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行

④ 迅速かつ的確な情報開示

日本取引所自主規制法人「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」

このプリンシプルの策定においては、パブリック・コメントが募集されました。私の所属する「企業広報戦略研究所(C.S.I. )」でも、以下の意見を提出しました。


 

「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」(案)につきましては、大変有用な取り組みと拝察いたしており、特に「④ 迅速かつ的確な情報開示」については、私共の知見や研究成果が、より実効的な原案の一助になればと考えております。具体的な意見は以下の通りです。

1、情報開示の方法について

特にメディア側からの記者会見要求がある場合には、企業は速やかに対応すべきと考えます。企業側の一方的な情報開示で記者からの質問や追及を避ける姿勢は、適切な情報開示とはいえません。

2、記者会見の設定について

企業が不祥事を起こし、記者から会見要求があった場合、決算会見まで引き延ばす企業が見受けられます。企業は決算会見においては決算情報の説明に専念できるよう、不祥事に関しては別途速やかに会見を設定すべきと考えます。

3、会見の対象メディアについて

記者会見においては、近年のメディア環境の変化に鑑み、新聞社、通信社、テレビ局はもちろんネット系メディアや海外メディアにも門戸を開き、オープンな会見とすべきと考えます。また深夜などの非常識な時間帯は避け、時間を区切ることなく、最後の質問が終わるまでしっかりと回答することが、透明性を確保することと考えます。

4、会見の説明者について

会見の説明者は、常務以上の役員、できれば代表取締役社長が望ましいと考えます。企業としての原因解明、謝罪と責任表明、再発防止策の策定などは、社を代表する立場で行わなければ実効性が伴わず、社会的責任を果たしているとはいえません。社を代表する立場で不祥事の最前線に立つことが望まれます。

5、第三者委員会の専門性について

第三者委員会を設置する場合には、企業の情報開示の在り方に加え、第三者委員会による情報開示の在り方も重要となるため、委員会の中に広報・PRの専門家を加えるべきと考えます。第三者委員会の中立性を高め、ひいては企業の不祥事対応をより透明で実効性の高いものとすることにより、企業の信頼回復と企業価値の再生に資することができると思料いたします。(一部省略)


取引所がこのような社会的な課題に対して、ステークホルダーとの対話を行いながら解決の方向性を提示していくパブリック・コメントの仕組みは、まさにパブリックリレーションズ活動といえます。多くの知見を活用しながら社会的合意を形成していくことがこの活動のポイントです。

不祥事における情報開示や説明責任の履行が進むとともに、社会の隅々までパブリックリレーションズが浸透していくことを願ってやみません。

パブリック・コメントへの回答がこちらにまとめられています。

http://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d10/nlsgeu0000012u81-att/kaitou3.pdf

 

 


img_kuroda黒田 明彦 

コーポレートコミュニケーション戦略室 リスク・マネジメント部
企業広報戦略研究所 主席研究員
日本PR協会認定PRプランナー

経営課題(経営計画、事業再編、研究開発、危機管理、政策課題、等)に関する広報戦略の立案、実施に携わる。