企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、本年 6 月末、全国 1 万 500 人を対象とした 『 2020 年度 ESG ※1 /SDGs ※2 に関する意識調査 』 を実施しました。
ESGや SDGs に対する企業の取り組みに対し、年々生活者の注目は高まっています。昨今の気候変動や自然災害など、生活者の不安感が増大している状況に加え、今年度は新型コロナウイルスにより生活環境が大きく変化しました。
こうした環境下での生活者の ESG/SDGs の認知状況や、関心が高い取り組み、企業に期待する事柄の昨年からの変化などを、調査・分析いたしました。

結果概要ポイント

1. 投資をする際に企業の「ESGに対する取り組みを考慮する」が8割弱 (投資を検討している、もしくは投資に興味のある人ベース)

投資意識(興味)のある人が投資をする際に、企業のESGに対する取り組みを「とても考慮する」(22.0%)、「少し考慮する」(55.6%)、「考慮する」合計(77.6% )

2. 生活者のESG/SDGsの認知は大きく伸長

ESGの認知率(「詳しく知っている」「聞いたことはある」計、以下同)は、昨年比5.4ポイントの伸び(2019年18.3%→2020年23.7%)となり、SDGsの認知率(同)は、昨年比15.6ポイントの伸び(2019年24.2%→2020年39.8%)

3.生活者が関心を持つ社会課題に対する取り組みや企業に期待する  取り組み、「食品ロス削減」「子ども食堂への支援」が大きく伸長

・SDGsの達成目標である17項目のうち、企業に取り組んでほしい項目1位は「すべての人に健康と福祉を」(22.4%)、2位「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」(21.9%)で昨年と同様の傾向

・生活者の関心1位は身近に問題を感じることのできる「食品ロス削減」(35.5%)。「子ども食堂への支援」(27.7%)は昨年より8.0ポイントと大幅伸長

4. 企業のSDGsに関する取り組み認知、メディア経由は昨年から横ばいの一方、リアルが3.4ポイント伸長

SDGsに関する取り組みの認知経路、メディア経由(2019年59.1%→2020年59.1%)、リアル経由(2019年45.1%→2020年48.5%)

5. SDGsの取り組みが認知されると、生活者の7割が行動を起こす

企業のSDGsの取り組みを認知すると、生活者の約7割(71.1%)はウェブサイトの閲覧や商品・サービスの購入など、その企業に対し何かしらの行動を起こす。昨年より3.2ポイント上昇

 


※1 「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。
※2 「SDGs」とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標。 持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成される。

 

 

主な調査結果

. 投資をする際に企業の「ESGに対する取り組みを考慮する」が8割弱

投資意識(興味)のある生活者が投資をする際に、企業のESGに対する取り組みを  「考慮する」(77.6% )

投資意識(興味)のある8,619人に、投資の際に企業の「ESG」の取り組みを考慮するか聞きました。その結果、「とても考慮する」 (22.0%)、「少し考慮する」 (55.6%)、の合計で、約4人に3人(77.6%)が“考慮する”と回答しました[図表1]。

新型コロナウイルスや気象災害など、生活を取り巻く状況に不安が高まる中、経営者がESGの視点を持つ重要性は、日増しに高まっているのかもしれません。

▶魅力を感じるESGの項目1位は昨年に引き続き「働き方」。年代別で特徴に違い

ESGを項目ごとに分類し、それぞれの魅力度の推移を昨年比較で確認しました。その結果、「気候変動への対応」が7.5ポイント (2019年21.7%→2020年29.2%)増加しています[図表2]。

「エネルギー効率化」や「働きやすい職場環境づくり」も引き続き高い割合を維持しており、投資家にとって、今後も企業の社会的影響や投資の持続可能性を測る重要な指標となっていきそうです。

 

 

また、年代別に魅力を感じる項目を確認すると、20代~40代の1位は「働きやすい職場環境づくり」ですが、50代と60代では「エネルギー効率化」、さらに「気候変動への対応」といった環境を重視した項目が上位に挙がっています[図表3]。

 

. 生活者のESG/SDGsの認知は大きく伸長

ESGの認知率は5.4ポイント上昇、SDGsの認知率は15.6ptと大幅な伸長

生活者の投資検討時に影響を及ぼす「ESG」「SDGs」ですが、それぞれの認知状況を確認すると、 「ESG」の認知率は「知っている」(「詳しく知っている」「聞いたことはある」の合計)が23.7%、「SDGs」の認知率は39.8%でした[図表4-1][図表4-2]。両項目とも年々伸長していますが、特に「SDGs」については15.6ポイントの大幅な伸長となっています。報道番組やニュース番組でも取り上げられることが増え、認知につながっている可能性があります。また各企業のPR活動においても「SDGs」に関連した取り組みが増加しており、生活者への浸透を後押ししているようです。

 

20代男性のSDGs認知率は6割超/ESGも含め、男女とも年齢が若いほど認知率は高い結果に

「ESG」「SDGs」それぞれの認知率を性年代別で見ると、いずれも男女共通で若年層の認知率が高いことが分かりました。特に男性20代の認知率は非常に高く、「SDGs」は6割超(61.7%) となっています。女性20代(41.3%)も他の年代と比較すると高くなっていますが、就職活動時の企業研究などで触れることが多いのかもしれません[図表5-2]。

また「ESG」の認知率については、男性20代(41.6%)、男性50代(32.0%)が高い傾向でした。「投資」視点で企業を見る機会が他年代よりも比較的多いのかもしれません[図表5-1]。

3.生活者が関心を持つ社会課題に対する取り組みや企業に期待する  取り組み、「食品ロス削減」「子ども食堂への支援」が大きく伸長

SDGsの達成目標である17項目のうち、企業に取り組んでほしい項目は昨年と同じ傾向も、自然災害の影響を感じる結果も

続いて、「SDGs」の達成目標について、企業の取り組みを期待する項目を聴取し、昨年からの 推移を確認しました[図表6-1]。最も上昇率の高かった項目は「気候変動に具体的な対策を」で2019年7.4%→2020年10.1%と2.7ポイントアップ、「すべての人に健康と福祉を」が、同20.9%→22.4%と1.5ポイントアップしています。

日本だけでなく、世界からも聞こえてくる近年の  異常気象や、自然災害の影響を感じさせる結果となっています。

また、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」(21.9%)や「働きがいも経済成長も」(16.4%)は引き続き高いスコアとなっています。働く人にとって、身近な環境の整備を期待するだけでなく、地球環境といった視点で未来への持続可能な世界を担う意識を企業に求めていることが分かります。

昨今の地球環境への不安に対し、真摯(しんし)に取り組む姿勢が、生活者からの評価につながることをうかがわせる結果となりました。

 

20代と60代では企業に取り組んでほしいSDGs達成目標に差が生じる結果に

企業に求める達成目標は、20代と60代で差が生じています。1位と2位は順位こそ入れ替わっているものの共通していますが、20代は3位に「働きがいも経済成長も」(18.5%)、4位「貧困をなくそう」(13.0%)と経済面に関する回答が上位に入りました。一方60代は、4位に「気候変動に具体的な対策を」(15.5%)が入り、年代による意識の差が表れる結果となりました[図表6-2]。

生活者の関心1位は身近に問題を感じることのできる「食品ロス削減」。「子ども食堂への支援」は昨年より8.0ポイント増と大幅伸長

SDGsに関連する取り組みで生活者がどのような内容に関心を持っているか聴取しました。その結果、1位は「食品ロス削減」(35.5%)、2位「太陽光発電などの再生可能エネルギー技術の開発、利用」(35.2%)と、日々の生活の中で生活者が身近に問題を感じられる項目が上位となりました。

また4位に「フードバンク」、5位「子ども食堂への支援」と、衣食住の「食」にまつわる項目が関心上位に挙げられています。昨年との比較でも食に関する項目はスコアの上昇が目立っており、特に「子ども食堂への支援」は2019年19.7%→2020年27.7%と大幅な伸長を見せています。

一方「SDGs推進に関する投資」(7.8%)などはまだまだスコアが低い状況です[図表7-1] 。
まず企業は、生活者が身近に感じられる分かりやすい取り組みを率先することで、レピュテーション向上に役立つのかもしれません。

SDGsの認知は低くとも、具体的取り組みに関心が高いのは女性

SDGsに関連する取り組みで生活者が関心を持つ上位3項目について性年代別に確認しました。その結果、男性より女性の方が関心が高い人が多いという結果となりました。SDGsの認知率が高いのは男性や若年層でしたが、実際に具体的な取り組みに関心を持つ層は女性や40代以上の人でした。

4.企業のSDGsに関する取り組み認知、メディア経由は昨年から横ばいの一方、リアルが3.4ポイント伸長

SDGsに関する取り組みの認知経路は、コロナ禍でも「リアル」が伸長

SDGsに関わる具体的な企業の取り組みを想起できた人(n=4,944)に対し、何を通じてその情報を入手したかを聴取しました。その結果、コロナ禍でもリアルな経験を通じて情報を得ている割合が軒並み昨年を上回る結果となっています。一方メディアから得ている割合は、いずれもスコアが横ばい(もしくは低下)という結果でした。

新型コロナウイルスにより、生活者と企業の接点に変化が生じていることも考えられますが、メディア系でも「インターネット上での口コミや評判」は1.4ポイント増となっています。しかし、リアル系の伸長が目立つ結果となり、メディアやネットから取得する情報よりも、商品やサービスの直接の体験や店員、店頭からの情報でSDGsへの取り組みを認知する機会が増えてきていることがうかがえる結果となっています。

それでも認知経路の1位は「番組や記事」(28.7%)で、生活者との接点として非常に重要であることに変わりは無さそうです[図表8-1]。

 

魅力認知後のアクションを性年代別で見てみると、「ウェブサイトを閲覧」は、男性の20代(36.4%)、30代(35.4%)が高くなりました【図表7-2】。また、「評判を検索した」(全体4位 15.7%)も同じく男性の20代(25.3%)、30代(22.5%)で2割を超え、高くなりました【図表7-3】。一方、3位「家族や友人に話した」は女性の60代(26.7%)、40代(25.7%)が高く、4人に1人は周囲に話していることが分かりました【図表7-4】。

男性のミレニアル世代はウェブメディアを中心にサーチし、女性の団塊ジュニア世代以上は、口コミで話題をシェアしていく傾向が強いようです。

 

SDGsに対する取り組みの認知経路、若年層は「リアル」、ミドル層以上は「メディア」

続いて企業のSDGsに関する取り組みの認知経路を年代別に確認すると、20代~30代の若年層はリアル系をきっかけに認知することが多いようです。一方シニア層は「番組や記事」「企業が直接発信する情報」「広告」といったメディア系を通して認知することが多いようです[図表8-2]。メディア系計、リアル系計を年代別に比較しても、シニア層と若年層で、経路の違いが見て取れます[図表8-3]。自社の取り組みについては、ターゲットに応じた発信がより重要になっていることがうかがえます。

 

 

5.SDGsの取り組みが認知されると、生活者の7割が行動を起こす

SDGsの取り組みが生活者に届くと、行動変容が生じる

企業のSDGsの取り組みを生活者が認知すると、どのような変化が生じるのでしょうか。
企業のSDGsに対する取り組みを想起できた4,944人に認知後の行動変化を聞くと、71.1%もの人が、なにかしらの行動を起こしたと回答しています[図表9-1]。
このスコアは昨年の67.9%から3.2ポイント伸長しています。SDGs自体の認知度が向上している昨今、SDGsの取り組みは、ダイレクトに生活者からの反応につながることが多くなっているようです。

企業のSDGsへの取り組みを知った生活者の4人に1人はWebを閲覧し、5人に1人は商品を購入したり、サービスを利用している

それでは具体的にどういった行動を生活者は取っているのでしょうか。引き続き企業のSDGsに対する取り組みを想起できた4,944人に行動内容を聞いてみると、1位「その企業や、商品・サービスのウェブサイトを閲覧するようになった」(28.2%)、2位「その企業の商品やサービスを購入または利用した」(21.5%)、3位「その企業や、商品・サービスの評判を検索するようになった」(18.5%)と興味関心を抱かせるだけでなく、行動を伴う変化を生じさせることができています[図表9-2]。

また、1位である 「その企業や、商品・サービスのウェブサイトを閲覧するようになった」については、昨年2019年の調査結果(25.2%)より3ポイントスコアが伸長しています。

ちなみに、生活者発信の拡散については「家族や友人に話をした」(14.8%)、「ソーシャルメディアに投稿・シェアした」(5.5%)となっており、わずかながら昨年よりも伸長しています。SDGsへ向き合う企業の姿勢を発信することは、今後も自社の社会的価値を高める大切なポイントとなりそうです。

■調査概要

調査対象:全国の20~69歳の男女 計10,500人
調査方法、期間:インターネット調査:2020年6月24日~6月30日
設問内容:ESG/SDGsの認知の有無、企業に期待するSDGsの取り組み、投資に対するESGを考慮する度合いなど

調査対象

<お願い>
本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。