京都・嵐山の近くにある松尾大社(まつのおたいしゃ)は、京都最古の神社の一つで、松尾山の神霊を祭って守護神としたことが起源とされています。近世では、醸造祖神として、全国のお酒の醸造・製造に関わる方や、販売業の方々から格別な尊崇を受けています。境内には、延命長寿の神泉「亀の井」という湧き水があり、この水を加えて酒を造ると腐ることがないという伝説があります。11月には醸造祈願の上卯祭(じょううさい)、4月には醸造の感謝のための中酉祭(ちゅうゆうさい)が催されています。
 酒との関わりの深い神社は、全国に多数あるそうですが、奈良の大神神社(おおみわじんじゃ)、同じ京都の梅宮大社と併せて、日本三大酒神神社と呼ばれています。確かに神事におけるお神酒は欠かせないもので、お酒にまつわる言葉もたくさんあります。結婚式の三三九度もその一つで、大中小の重ねた酒器に3回ずつお神酒を注ぎ、合計9回の杯を交わします。3と9などの奇数が縁起が良いという昔からの言い伝えです。

 さて、西洋で酒の神と聞けば“バッカス”という名を皆さまもよく耳にされると思います。ギリシャ神話では、ディオニュソスと呼ばれ、豊穣と酒と狂乱の神として描かれています。特にバッカスはワインの神として有名で、ブドウ栽培からワイン醸造まで世界に広く伝えたとされています。夜の繁華街でバーやスナックに“バッカス”の名を冠した店名が多いのはうなずけますね。

 コロナ禍で、厳しい環境に置かれた飲食業界ですが、長きにわたって酒については提供自粛や時短対応などを強いられてきました。緊急事態宣言解除後は、少しずつ飲食業界に明るい兆しも現れてきました。店側も客側も引き続き感染拡大防止を意識しながらも、年末年始の需要期に向けて、コロナ前のムードに戻れるように元気になることを祈念しています。古今東西の酒の神々が、きっと優しく見守ってくれることでしょう。