「オープンカーが走っている所は、平和で安全な場所なのです。だってそうでしょう? 銃弾が飛び交う中で屋根なんて開けていられないし、信号待ちで強盗が迫ってくるような場面でも同じことです。だからこそ、この平和都市でオープンカーを造り続ける意味があるのです」
 この話を聞けただけでも、ここに来たかいがあるというものです。こことは、マツダミュージアム。この平和都市とは、広島県広島市のことです。
 敷地面積にして、マツダ スタジアム数十個分という、信じられないような広大な私有地の中にある、これまた私有の巨大な橋を渡って、ミュージアムに案内していただきました。
 黒を基調とした館内には、マツダの歴史を彩る色鮮やかなクルマが勢ぞろい。往年の名車コスモスポーツや、ル・マン24時間を制覇したレースカー等々。クルマ好きでなくても、心躍る空間になっています。
 個人的にも、子供の頃に実家にあった初代RX-7を発見し、思わず帰り際にミニカーを購入してしまったぐらいです。(後に、父親にプレゼントしました)
 見学動線の一部には、工場の生産ラインを上からじかに見られるところもあり、複数の車種が整然と完成に向かう姿に関心を奪われます。
 また、企業マツダの歴史についても、詳しく知ることができる展示内容になっています。恥ずかしながら、初めて知ることの方が多く、大変勉強になりました。中でも、原爆投下直後からの復興の歴史には驚かされました。3日後に運転再開した市電の有名なエピソードにも比肩する、不屈の精神の象徴だと思います。
 折しも、世は例年と同じように8月を迎えています。ここ日本においては特に、平和について最も深く考え直す時季に当たります。しかし、残念ながら、われわれ人類があまり何も学ばない生き物であるというのは否定できません。いつになっても、対立や紛争や暴力や簒奪(さんだつ)は後を絶ちません。
 でも、だからといって絶望するばかりではいけません。理不尽が本来的に根絶できないものだとしても、それにあらがい、少しでも減らしていこうと力を尽くすのが、われわれ人類の美徳の一つなのではないでしょうか。
 世界中のあらゆる道で、オープンカーを心置きなく走らせることができる時が来ると信じ願いつつ。

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