弱った時に頼るもの

 50代男性が「鬼滅の刃」を観て涙する(しかも今更)のは、いかがなものかとは思いますが、まあ、「鬼滅の刃」の話です。遅ればせながら。
 この大ヒット・コンテンツは、ヒットの定石をうまく踏まえたストーリー構成になっていて、そういった意味では特に目新しさは無いのですが、舞台設定やキャラクターの創り込み、道具立て等に工夫が凝らされていて、大いに興味をそそられます。
 「スター・ウォーズ」や「ハリー・ポッター」、はたまた「X-MEN」や「スパイダーマン」等々をほうふつとさせる場面場面はありますが、これらの作品も、「ロード・オブ・ザ・リング」や古くはギリシャ神話まで、数々の王道コンテンツのエッセンスを抽出し加工してできた物語です。
 そうです。人間は長い歴史の中で、同じような物語にその時々のアレンジを加えて、楽しみ続けているのです。専門用語で言うところの、神話構造ですね。
 それはさておき、「鬼滅の刃」独自の魅力を挙げていきましょう。
 まずは、ギャップ。残忍と陰惨ずくめの場面の直後にコミカルなやり取りが平気で出てくるところ等。例えて言えば、甘辛の味覚が分からなくなるような振り回され具合。この振れ幅が癖になります。
 次は、せりふの多さ。それも、独白の多さ。キャラクターの中で起きている心理変容を全て言葉に出す。冗長気味の説明的なものも、ベタで言語化する。紙面で漫画を読んでいる感じです。
 それに関連するものとして、ちょっと大時代的な文言。「けがして以来ずーっと痛かったけど、俺は我慢してきたんだ。長男だから」とか。えっ、今この時代に長男とか何とか関係ありますか? とは思うものの、何だか押し切られてしまう感覚。
 それから、ストレート過ぎるテーマ。家族の絆とか兄弟愛とか友情とか。それらが全て、前述の長めのセリフでしっかりと登場人物によって語られます。かなり面はゆくなるようなものばかりですけど、遠慮無くビシビシ迫ってきます。
 総じて特徴的だと思ったのは、登場人物たちがそれぞれに、自分自身を鼓舞するせりふが多いということ。危機にさらされた時に、長めの独白で自分を励まし、全力を尽くして苦難を乗り越えていく。この辺りが、弱り目の今の時代にマッチしたのかもしれません。
 それにしても、あの残虐シーンの数々。中長期的な子供たちへの影響だけが気掛かりです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。