和田誠展に行ってきました。言わずと知れた、日本を代表するイラストレーター/グラフィックデザイナーです。普通に暮らしていれば、誰もが必ず一度以上は目にしている作品を手掛けた巨匠中の巨匠です。
 作風としては、柔らかい線と温かみのある色調で、およそ「巨匠」という言葉から想起される、厳格で他を寄せ付けないイメージとは真逆のものです(このイメージ自体、とらえ方が間違っている可能性大ですが…)。
 似顔絵で言えば、国の内外を問わずさまざまな著名人をモチーフにしながら、その特徴を見事に抽出した上で、どんな人物も和田誠ワールドの住人になってしまう不思議さほほ笑ましさ。広告やポスターを手掛けても、その本来の目的を満たした上で、和田作品としての魅力あふれるものに仕上げてしまう巧みさ。本の装丁では、文字のみの仕事であっても、和田フォントを開発してみせる。果ては、自身で本を著したり、映画を撮ってみたり。才能があふれるとは、こういうことなのでしょう。
 結局、2時間近く会場にいました。
 中でも、週刊文春の歴代全表紙を壁展示したコーナーは圧巻です。1977年以来、他界された現在も再掲載が続くライフワークを一望できるのです。動物、植物、小物、風景、あらゆる対象に向けられる愛情が、一枚一枚に込められています。
 こうして作品に一気通貫で触れて一番感じるのは、絵を描くのが楽しくて仕方がない、というご本人の心持ち。好きなことを仕事にできた幸運、そしてそれを楽しみ尽くすことができたという幸福。もちろん仕事ですから、良いことばかりではないでしょう。しかし、それを圧倒するに余りある創作への喜び。作品からにじみ出てくる優しさの源泉は、そんなところにあるのかもしれません。
 見ているこちらも幸せにしてくれるような、良い展覧会でした。

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