毎年6月は日本を含む世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動・イベントが実施されるプライド月間です。当社でも、電通グループ6社(セプテーニグループ・電通デジタル・電通PRコンサルティング・電通北海道、電通東日本、CARTA HOLDINGS)の共同主催で、電通グループ社員向けオンラインイベント「Online PRIDE 2025」を開催しました。「Online PRIDE」開催4回目となる今年は、昨年に引き続いて「企業は、LGBTQ+に関する課題に、どう向き合い対応していくのか」をテーマとして、6月9日(月)、26日(木)の2日間に行われました。

 

 

 

 

「Online PRIDE 2025」DAY1 知る・共有する「アライになろう」

9日のDAY1では、ジェンダーやセクシュアリティ、性教育などについてマンガで伝えるWebメディア「Palettalk(パレットーク)」の合田文編集長をモデレーターとして、「結婚の自由をすべての人に」訴訟東京弁護団共同代表であり、公益社団法人「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」代表理事をつとめる弁護士の寺原 真希子氏、LGBTQの方々の子育てを支援する一般社団法人「こどまっぷ」代表理事の長村さと子氏とそのパートナーである茂田まみこ氏をゲストとしてお招きして、婚姻をテーマに現状と課題について紹介していただきました。
寺原氏からは、世論の71%が同性婚に賛成しており、全国各地の訴訟で「同性婚が認められないのは違憲である」という判決が出されながら、未だに法制化が進まない現状について報告がありました。
2026年に最高裁の判決で違憲が支持されれば、国会で法改正が進む可能性が高く、これを後押しするには世論の可視化が必要であり、特に企業の賛同の動きを可視化していくことは重要である、といった話がありました。
直近の2025年11月末、東京高裁は、東京2次訴訟において「法律上同性の者同士の家族に関する法制度が存在しないことは、憲法に違反しない(合憲)」と判断しました。この判決は、これまで多数の高裁で違憲とされた判決と異なる結論です。

長村氏、茂田氏からは、公的に婚姻関係が認められることで得られる安心感の重要性、関係性の証明書があることで、公的機関においてカミングアウトのハードルが下がるメリットについて、実体験に基づいた具体的なお話がありました。3歳のお子さんを子育て中の立場から、子供のためにも何かあったときに後ろ盾になる証明書は一つでも多い方が良い、という切実な思いが伝わってきました。
ゲストの皆さんからは「LGBTQ+のための特別な法律が必要なのではない。ほかの人と同じように婚姻で得られる当たり前のメリットを得たいだけ」という思いが繰り返し語られました。転職の度に一から説明が求められる、カミングアウトし続けなければならない現状を知ることができました。このような現状を変えていくために企業やアライができることとして、思いや行動を可視化すること、「多様な性のあり方について、きちんと理解していきたいという姿勢を伝える」とよい、というアドバイスをいただきました。

 

「Online PRIDE 2025」DAY2 学ぶ・考える「行動につなげていこう」

26日のDAY2では、政策や法制度を中心とした性的マイノリティに関する情報発信等を行う一般社団法人fairの代表理事である松岡宗嗣氏と電通コーポレートワン コンプライアンスオフィスの安藤勉人権啓発部長、当社の井口理エグゼクティブフェローが登壇しました。松岡氏からはDEIの歴史的経緯やトランプ政権発足後の米国でのLGBTQ+を取り巻く状況や欧州、日本の動きが紹介され、井口は、6月に開催されたカンヌライオンズのエントリー作を含めた、企業によるLGBTQ+支援キャンペーンの事例解説を行いました。

LGBTQ+についてはここ数年間複数の国で逆風が目立ってきましたが、特に第二次トランプ政権においては、DEIやLGBTQ+支援の推進活動への弾圧が進み、政府内だけではなく民間企業へも大きな影響を与えています。DEIという用語の禁止や、T(トランスジェンダー)への圧力を強めて、すでに法的保護があるLGBと分断させようとする動きがあるとのことです。一方で、米国でもコストコ、アップルやマッキンゼーのように多様性を擁護する立場を表明する企業があること、欧州では一部の国を除いてDEIを積極的に進めようとし
ていること、日本においても米国における逆風に追随せず、DEIを進めていこうとする企業が多いことなども紹介されました。松岡氏は、「多様性の尊重において歴史的に揺り戻しは何度も発生しているが、大きな流れは進んでいる。長期的視点が必要。できることはたくさんある」と語りました。
井口からは、DEIに関するエントリー数は減ってきている、としながらも、2025年カンヌライオンズのPR部門でブロンズを受賞した台湾の事例「Unfreeze My Rights」が紹介されました。本キャンペーンは、凍結した卵子を実際に妊娠に利用できる女性は、異性婚をした既婚者で配偶者の了解がある場合に限定されており、その結果利用者は8%にとどまっているという課題への取り組みでした。同性婚が法制化されている台湾においてもこのような制限があり、同性婚者や独身者は差別を受けていたのですが、このキャンペーンによって独身女性と同性婚者が凍結卵子を利用できるようにする法改正に進むという結果が生まれました。
この事例を受けて松岡氏から、日本でも同様の法律が制定されようという動きもあるが、対象者が法律婚をした男女に限られている、という残念な話が紹介されました。

 

 

「Online PRIDE 2025」からの学び

昨年に続いて「企業(およびそこで働く社員)はどう対応すべきか」は私たちの日々の課題に直結するテーマです。DAY1では人権と密接に結びつく「婚姻」を巡って当事者の視点からの学びがありました。DAY2では、DEIへの逆風が米国を中心に進むなかで、長期的な視点をもつ重要性と他国の事例から自分たちにも取り組むべき課題がまだまだあるということを改めて考える機会になりました。