毎年6月は日本を含む世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動・イベントが実施されるプライド月間です。本年は、電通グループ4社(セプテーニグループ、電通デジタル、電通PRコンサルティング、電通北海道)の共同主催、電通東日本の協力で、グループ社員向けイベント「Online PRIDE 2024」を開催しました。「Online PRIDE」開催3回目となる今年は、「企業は、LGBTQ+に関する課題に、どう向き合い対応していくのか」をテーマとし、LGBTQ+当事者やメディア編集長を招いて6月27日(木)、28日(金)の2日間、リアルとオンラインのハイブリッド形式で行われました。
今回はDAY2の内容を紹介していきます。

DAY1の内容はこちらから

 

「Online PRIDE 2024」DAY2 学ぶ・考える「行動につなげていこう」

28日のDAY2では、NewsPicks Studios Senior Editorと、女性のキャリア構築を支援するNewsPicks for WE編集長を兼任し、女性の働き方やヘルスケアに関するコンテンツを発信している川口あい氏をファシリテーターとして、電通コーポレートワン コンプライアンスオフィスの​安藤勉人権啓発部長、カンヌライオンズ2024に現地参加した当社の井口理執行役員が登壇、LGBTQ+を取り巻く世界の状況や、6月に開催されたカンヌライオンズ2024の受賞作を含めた、LGBTQ+支援キャンペーンの事例紹介を行いました。

 

写真左より、川口氏、執行役員井口、安藤氏

パート1では、川口氏から、LGBTQ+を巡る最近1年の世界と日本の動きが紹介されました。2023年から2024年にかけ、複数の国でLGBTQ+の活動を制限する法律が制定されるなど逆風が目立ってきた一方で、タイでは東南アジアで初めて同性婚を認める法案が成立するなど前進する動きも見られました。日本では、最高裁が性別変更に生殖能力をなくす手術を必要とする法律の要件について違憲・無効と判断したことや、多くの女子大でトランスジェンダー女性を受け入れる動きが進んでいるといった前向きな動きがありました。逆風と前進、両方向の動きをどう見たらよいのかについて、安藤氏は「ニュースのヘッドラインに惑わされないで、自分で情報を集めて何が起きているのか全体のストーリーを理解することが必要。できれば当事者の生の声も聞いてほしい」とコメントしました。

パート2では、LGBTQ+に関する国内外の広告やPRの事例を紹介しながら、登壇者が語り合いました。最初にバドライトやナイキといった、これまでトランスジェンダーのインフルエンサーを起用するなどLGBTQ+支援のキャンペーン活動を展開してきたブランドが、保守派による反発や不買運動を受けて米国ではかなりトーンダウンしている現実が紹介されました。井口は「昨年この場でわれわれがお手本としたいと言っていたキャンペーンが、無視できないレベルの反発を受け、企業の腰が引けてしまっていることが心配」と語りました。
そういったバックラッシュがありつつも、LGBTQ+を支援する活動は着実に行われ評価されています。カンヌライオンズ2024のPR部門でトランスジェンダーへの理解と尊重を促す米国のキャンペーン「In Transit」がゴールドを受賞しました。またLGBTQ+に関するコンテンツへの未成年者のアクセスを極端に制限する法律への反発を、大手書店がスマートに行ったハンガリーの「Unsealed Books」、当事者の意見を取り入れながら2年かけてトランスジェンダー女性専用のボディローションを開発したタイの「Transition Body Lotion」がそれぞれブロンズを受賞しました。このほか、デザイン部門のブロンズ受賞キャンペーン「Rainbow washing Detector」は、メキシコのコンサルティング会社がLGBTQ+支援を標榜する各社の実態を調査、データベース化し、「LGBTQウォッシュ」がないかをアプリで誰でもチェックできるようにした事例で、企業の取り組みにはファクトづくりが重要であることを示しました。

その後、日本の事例(カンヌ受賞作ではない)が紹介されました。結婚情報誌ゼクシィが同性カップルや事実婚カップルのポスターを渋谷で掲示した30周年キャンペーンは、称賛と批判の両方がありソーシャルメディアで議論を巻き起こしました。また、NPO法人プライドハウス東京とパナソニックコネクト株式会社の共同企画で、6月のプライド月間に合わせて発表した「Pride Action30」は、LGBTQ+当事者に対する理解を深め、支援を示す「入り口」としての活動30を新聞広告やWebで紹介したコンテンツです。本企画では、18社の協力を得ており、1社や1団体ではやりにくいことであっても仲間をつくって一歩踏み出すことの価値を示した活動となりました。
これらの事例を紹介しながら、安藤氏は「企業が覚悟を持って取り組むことの価値と重要さ」を、井口は「理解して共感し、活動の輪を広げてくれる仲間づくりの大切さ」を語りました。最後に川口氏が「月間で終わらせずに続けていくことが重要」と締めくくり、2日間にわたって開催された「Online PRIDE 2024」は終了しました。

 

 

「Online PRIDE 2024」からの学び

今回の2日間は「企業(およびそこで働く社員)はどう対応すべきか」、という私たちの日々の課題に直結するテーマであり、肉親を含んだ当事者の視点と社会や世界の動きの両方からいろいろな学びがありました。例えば当事者にカミングアウトをしてもらうことは目的ではありませんが、本人がしたいと思ったときに抵抗なくできるような環境をつくっていくことが重要だと改めて認識しました。

さらにコミュニケーションの企業として、クライアントの対外発信や仲間づくりといった面で当社がこれからできることはありそうだと実感、チャレンジしていきたいと思います。