昨年に続いて、PR Awards Asiaの審査員を務めました。結果は6月12日に発表されています。
https://prawardsasia.com/winners/2024/

PR Awards Asiaの賞としての特徴や審査方法については昨年のブログで紹介していますのでそちらをぜひご参照ください。審査方法については昨年から特に大きな変更はありません。
https://www.dentsuprc.co.jp/blog/blog-kunita/20230801.html

 

PR Awards Asia 2024の審査

今回私が審査したのは3部門(全48部門中)の44エントリーでした。
昨年以上にケースフィルム(事例紹介動画)を提出しているエントリーが少数で、テキスト資料からの読み取りが必要だったため、エントリーシートの分かりやすさ(英語のレベルうんぬんより論旨の明確さ)が採点に大きく影響したと感じています。中身が薄いキャンペーンほど形容詞等で飾り立てるので、何のために何をやったのかが見えにくくなります。
昨年同様、1次審査の平均点上位からショートリストが作成され、2次審査のオンライン会議で各部門のゴールド、シルバー、ブロンズを決め、3部門のゴールドから最も上位のエントリーをキャンペーンオブザイヤー候補として選出しました。今回はこの2次審査で意見が分かれるケースが多く、ある部門では私が1次であまり高く評価していなかったキャンペーンがシルバーやブロンズに選ばれることになりました。中身が悪いということではなかったのですが、審査員によって価値基準が全然違うということを痛感しました。
一方でキャンペーンオブザイヤー候補は全体の中で一番高く評価していたエントリー(後述)が選出されたので、やはり本当に良いものは誰が見ても良いのだ、ということも強く感じました。残念ながら、最終的にキャンペーンオブザイヤーには選ばれませんでしたが。

 

2024年受賞キャンペーンの紹介

応募エントリーの傾向として、コロナ禍の影響をほとんど感じられなくなったことがあります。コロナ流行期に増加した、人々が孤立したり、医療従事者が大変な思いをしたりという課題への対応はほぼ見られませんでした。一方で担当した審査部門「環境(Environmental)」を中心に、プラスチック削減、CO2削減、リサイクル促進、動物保護などのサステナビリティ分野は活性化している印象で、参考になりそうな取り組みがいろいろとありました。この部門では受賞した4エントリーが全て香港からの応募でした。
私のグループでトップに選ばれたのは、香港マクドナルドの「McDonald’s Professional Diploma in Management Development (QF Level 5) Congregation」でした。コロナ禍以降、香港の飲食業界は人材の深刻な不足という課題に直面しており、経営開発プロフェッショナル ディプロマ (QF レベル 5) という研修プログラムを通じて、従業員のレベルアップを図り、さらには飲食業界全体の人材レベル向上を目指す、という内容です。自社だけではなく業界全体を視野に入れた人材育成というテーマは今後注目領域になるかもしれません。

 

キャンペーンオブザイヤー
「Winnie-the-Pooh: The Deforested Edition」

各審査員チームが選んだ候補から全審査員の投票で選ばれるグランプリ(キャンペーンオブザイヤー)には、オーストラリアのトイレットペーパーメーカーWho Gives A Crap社の「Winnie-the-Pooh: The Deforested Edition(くまのプーさん:森林破壊版)」が輝きました。
(社名のWho Gives A Crapは、いったい誰が気にかけてるんだ(環境問題に)? You should!の意)

 

(写真提供:Who Gives A Crap Inc)

 

Who Gives A Crap社は、もともと社会貢献のために設立された団体で、再生紙や竹から作られたトイレットペーパーを販売し、その利益の50%を不衛生なトイレ環境に悩む国々で清潔な水とトイレへのアクセスを提供する団体へ寄付しているといいます。同社は、通常の紙パルプからトイレットペーパーを作るために、世界では毎日100万本以上の木が伐採されているという事実を、より多くの人に知ってもらうため新しい版の「くまのプーさん」を発行。新版では、文章はオリジナルのままですが、おなじみのプーさんのイラストでは森の木が伐採されており、その絵柄は読者に衝撃を与えるものとなっています。世界的な童話のイラストを変えるという、単純かつ費用は(おそらく)あまりかからないけれどインパクト絶大な施策であり、これを考えついた人はすごいと思いました。多くの審査員もそう思ったのでは。
https://au.whogivesacrap.org/

 

書籍販売後、わずか2週間でWho Gives A Crap Incの販売するトイレットペーパーの新規顧客が3000人増加。(写真提供:Who Gives A Crap Inc)