2019年9月27日に授賞式が行われた「Spikes Asia(スパイクスアジア)2019」のPR部門審査員を務めました。今回は、審査の進め方について紹介していきます。

 

Spikes Asiaは、カンヌライオンズの主催者が、カンヌのアジア地域版として、毎年9月にシンガポールで開催しているアジア地域最大級の広告コミュニケーションのイベントです。

 

アジアを中心に世界中から集まるプロフェッショナルの交流の場であるとともに、さまざまなセミナーやワークショップが行われる勉強の場としても関心を集めている(「Spikes Asiaホームページ」より)同イベントですが、なんといっても期間中に審査が行われ、最終日の夜に発表されるアワードが最大の目玉です。今年のアワードはPRを含めて全部で22部門あり、複数の部門で受賞する作品も少なくありません。

 

PR部門の延べエントリー数は約300(同じ作品が複数のカテゴリーにエントリーされるケースも多い)。最初はオンライン審査で、各国にいる7名の審査員が専用サイトでプレゼンボードやケースフィルムを見て、各作品に1から9(9が最高点)までの点数をつけます。その点数を基に、約120(延べ数、以下同)の作品がロングリストとしてリストアップされます。

 

2日間(9月24、25日)にわたって行われる現地の審査会は、このロングリストを約半数に絞り込み、ショートリストを作ることからスタートします。事前審査で見たケースフィルムを再度全員で視聴し、その場で改めて採点していきます。事前審査の得点は影響せず、仕切り直しです。ここでつけられた点数を基に機械的にショートリスト候補が絞られます。今度はこのリストから、ショートリストにふさわしくないものを落としたり、リスト外から復活させたりする議論を行います。

この議論によって、64あった候補を52まで絞りました。ここで1日目が終わります。

 

2日目は、ショートリストから受賞作品を決めていきます。まずブロンズを選び、そこからシルバー、ゴールド、と絞り込んでいって最後にゴールドの中からグランプリ1作品を決定します。受賞数はだいたいの目安が決められていますが、今年はブロンズ以上が27作品でしたので、ショートリストの約半数が受賞する、といった割合になります。最終的にはゴールドが6作品、シルバーが8作品、ブロンズが12作品となりました。

 

今年の特徴の一つとしては、バングラディシュ、スリランカ、パキスタンといったPRにおいて新興の国々の、社会課題に挑んだ作品がいずれもゴールドを受賞したことで、本年のスパイクスのテーマである「Asia Rising」を感じさせる傾向だと思いました。これらの国々は今後ますます力をつけてくると思います。

 

議論においては、英語力不足の問題もありましたが、中国系やインド系審査員の、人が話していても容赦なくかぶせてくるアグレッシブな話力に、たじたじとなりました。審査員長を務めた韓国人女性(私よりずっと英語が堪能)も同じことを言っていて、こっそり二人で慰め合いました。一方で要所では「モトコはどう思う?」と聞いてくれる配慮もあり、言うべきことは言えた、はずです。

 

次回は受賞作品の解説をしますので、お楽しみに。

審査員のメンバーと