PRとは

PRの定義

PRはパブリックリレーションズ(Public Relations)の略語です。時代や地域、人によって、さまざまな定義がされています。
ここでは、以下の2団体が発表した、現代におけるPRの定義をご紹介します。

1.国際PR協会(IPRA:International Public Relations Association)によるPRの定義

Public relations is a decision-making management practice tasked with building relationships and interests
between organisations and their publics based on the delivery of information
through trusted and ethical communication methods.(IPRA,Oct. 2019)

<和訳>
パブリックリレーションズは、信頼のおける、倫理的なコミュニケーション手法を通し、
組織と組織をとりまくパブリックとの間に、関係と利益を築くため、意思決定の管理を実践することである


2.アメリカPR協会(PRSA:Public Relations Society of America)によるPRの定義


Public relations is a strategic communication process that builds mutually
beneficial relationships between organizations and their publics.(PRSA,2012)

<和訳>
パブリックリレーションズとは、組織と組織をとりまくパブリックの間の、相互に利益のある関係を築く戦略的コミュニケーションのプロセスである。

<注釈>
(1)従来から存在するいくつかの定義にはPRを“経営機能”とするものもありますが、ここではあえて“プロセス”とされています。“経営機能”という言葉は“トップダウン”を示唆するため、PRSAはあえて使わないということに決定しました。
(2)PRSAが考えるPRのターゲットは“パブリック”です。今でも多くのPR会社やPRの実務家が使用する“ステークホルダー(利害保持者)”という言葉は、PRの定義の中で、あえて使われていません。ステークホルダーという言葉を使うことによって、上場企業に限定されたイメージを生み出してしまうこともあるとPRSAのウェブサイトでは書かれています。

また英国のPR業界団体CIPR(Chartered Institute of Public Relations)では、パブリックリレーションズの「パブリック」の定義を以下のように規定しています。

Publics are audiences that are important to the organisation. They include
existing and potential customers, employees and management, investors,
media, government, suppliers, opinion-formers.

<和訳>
パブリックとは、組織にとって重要なオーディエンスであり、既存・潜在的顧客、従業員、経営者、投資家、メディア、政府、サプライヤー、オピニオン形成者を含む。PRのターゲットはかならずしもステークホルダーだけではないということです。

広報とPRの違いは?

一般的に、PRの同義語として「広報」という言葉を使うことがあります。「広報」を文字どおり解釈すると、広く=社会に対して、報ずる=知らせる、という意味になります。言い換えると、企業や団体が社会に向けて“情報発信する”ことが「広報」であることになります。

これに対し、パブリックリレーションズは、「戦略的コミュニケーションのプロセス」であり、終着点のある一方的な情報発信活動ではないということです。一方的な情報発信である「広報」に対し、双方向のコミュニケーションを「PR」と定義する人もいますが、ソーシャルメディアが普及した現代においては、「双方向」だけではすまされない時代になってきました。コミュニケーションが「マルチディメンショナル」となった今日においては、より複雑化した情報流通において、オーディエンスの声に耳を傾け、必要に応じて計画の軌道修正も行い、スモールPDCAを行う必要があります。そして、組織が一方的にストーリーを伝えていくのではなく、ターゲット層のひとびとが自らナラティブを紡ぎ、情報伝達していく仕組みづくりも必要となってきているのです。

PRの仕事とは?

企業や団体には、組織運営上、それぞれ様々な課題、機会があります。そういった課題や機会を正確に、客観的に把握し、組織内外との良好な関係を築きながら目標とする成果を実現するのがPRの仕事です。理想的には以下の手順で行います。ここでご紹介する手順は、国際的なPRアワードの審査のポイントにもなっています(以下の手順が踏まれているかが審査されます。)

状況分析

どのようなPR活動においても、組織や製品・サービスが置かれている状況を把握せず、やみくもに情報を発信すると効果的な成果が期待できません。PR活動を始める前に調査を行い、課題・機会を把握・分析し、誰に向けてコミュニケーション活動を行うのか、またそのターゲットオーディエンスはどのようなプロフィールをもつグループなのかを分析をする必要があります。

目標設定

測定可能な成果目標をたてます。

戦略立案

課題・機会を明確にし、ターゲット設定・分析を行ったら、次は目標達成のための戦略を立案します。ターゲットにどのようなメッセージを、どのようなチャネルを使って届ければよいのかを考えるのです。

戦術

具体的に戦略を実行にうつすためのプランを立てます。情報が溢れかえる時代ですから、ターゲット層に確実にメッセージやストーリーを届け、それに注意をもってもらい、さらには、彼らの理解・同意を得、感情的コネクションを構築し、態度変容をもたらすような戦術を考えます。

成果の分析

PRキャンペーン・プロジェクトはやりっぱなしでは未来につながりません。成果をまとめ、それを分析し、次の活動につなげていくことが、長期的でサステナブルな組織の活動にとって重要となります。PR活動の効果測定を行い、PDCAをまわしていくことは、健全な組織の運営・発展に欠かせない活動です。

ここでいう成果とは、ビジネス上のアウトカム、つまり、ターゲット層の意識変化、態度変容、売上・寄付金の上昇、投票率のアップなどであり、パブリシティの件数やインプレッション(発行部数や視聴者の総数)などのアウトプット、ましてや広告換算などでもありません。また、手段が目的化してしまっているケースもよく見かけますが、イベントの実施やオウンド・メディアの制作自体が目的となってはならず、それはあくまでも手段であるということを認識すべきです。

PR業界では2010年に「効果測定に関するバルセロナ原則」と呼ばれるPRの効果測定に関するスタンダードがまとめられました。国際的なPRの業界アワードでも、審査過程でこの「バルセロナ原則」をベースにして成果を評価します。この原則は、2015年9月に「バルセロナ原則2.0」として更新され、さらに2020年7月に「バルセロナ原則3.0 」が発表されました。

バルセロナ原則3.0に
まとめられた7つの原則

Seven Principles

1. Setting goals is an absolute prerequisite to communications planning, measurement, and evaluation.
2. Measurement and evaluation should identify outputs, outcomes, and potential impact.
3. Outcomes and impact should be identified for stakeholders, society, and the organization.
4. Communication measurement and evaluation should include both qualitative and quantitative analysis.
5. AVEs are not the value of communication.
6. Holistic communication measurement and evaluation includes all relevant online and offline channels.
7. Communication measurement and evaluation are rooted in integrity and transparency to drive learning and insight

<和訳>
1. ゴールの設定は、コミュニケーションのプランニング、測定、評価に絶対的に必要なものである。
2. 測定と評価はアウトプット(施策の成果)、アウトカム(目標に対する成果)に加え、潜在的なインパクトを明らかにすべきである。
3. ステークホルダー、社会、そして組織のために、アウトカムとインパクトを明らかにすべきである。
4. コミュニケーションの測定と評価は、質と量の両方を含む必要がある。
5. 広告換算はコミュニケーションの価値を測定するものではない。
6. ホリスティックなコミュニケーションの測定と評価には、オンラインとオフラインの両チャネルを含む。
7. コミュニケーションの測定と評価は、学びとインサイトを導くため、誠実さと透明性に基づくべきである。

この「バルセロナ原則」は
PRSA (Public Relations Society of America)
CIPR (Chartered Institute of Public Relations)
Institute of Public Relations
PR Academy
PRCA(Public Relations Consultants Association)
ICCO(International Communications Consultancy Organization)

など、世界の主要なPRの業界団体によって採用されています。